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I'm home1(※微裏)
大人になるって大変なことなのな…―

I'm home


この2ヶ月間、自分で言うのもなんだけど俺はよく働いたと思う。

アメリカから始まって、メキシコ、日本、中国、とんぼ返りしてイギリス、ドイツと子供の頃は地球儀の上のものでしかなかった国々を渡り歩いた。勿論、観光ではなく仕事だ。

普通、こんなに海外での仕事が立て続けに入ることはあまりないけど、今回は偶然にもタイミングが重なって。

少しだけ、ボス兼親友を恨めしく思いながら執務室のドアを叩いた。


「おかえり、山本。大変だったね。」

「ツナが回したんだろ?ほい、報告書。」

「ごめん…つい山本を頼りにしちゃって…。」

「ま、そんだけ信用されてるってのは嬉しいけどなー。今日は何かやることあっか?」

「そんな!今日はもちろんオフだよ!何かちょっと痩せたし早く休んで!」

「ん、わりーけどそうさせてもらうなー…。」


大あくびと共に執務室を後にした。

マフィアなんて物騒な仕事についてしまったものだから、微かな物音でさえ感じとって目が覚めてしまう。
安心して熟睡できるのはボンゴレ本部と、自分の家だけ。この2ヶ月間は地獄のような夜が続いた。


自宅を思い浮かべてから、ふと思う。

もう2ヶ月も、触れていない。

*

とにもかくにも早く睡眠欲を満たしたくて、寝室のドアを開けるやいなや、真っ白で清潔なシーツの敷かれたベッドにうつ伏せでダイブした。

やっぱり安心するなぁ…。自分の居場所だという実感。

帰ってきた安心感からやっと俺は深い眠りに堕ちることが―





できなかった。

なんで。
なんでだ。
こんなに眠たいのに眠れない。


何かが、足りない。

脳が眠れと警報を鳴らす中、目は悲しいほど冴えていて俺は無理矢理、枕に顔を押し付け目を閉じた。



本当はわかってる。
何が足りないのか。

だけど、それが満たされれば逆に眠るなんてことは許されなくなるだろう。
俺も我慢できそうにないし、あっちもあっちでこれだけお預けを喰らっているのだから。

10分でいい、獄寺に会う前に休息を。



もう一度きつく目を閉じた瞬間、その願いはあっさり砕かれ、寝室のドアが開く音がやけに大きく耳に響いた。

「山本。」



愛しい人に呼ばれる自分の名前。
電話越しでない、その声に幸福感が込み上げる。

今すぐにでも引き寄せてきつく抱きしめたい衝動を必死に抑え、頭の中で眠れ眠れと自分に暗示をかける。


すると突然、枕が引っこ抜かれて無理矢理、獄寺の方に顔を向かされた。
ちょっと乱暴。


「寝てんのか。」


骨っぽくて冷たい手がくしゃくしゃと俺の髪を弄り、頬をぺたぺたと叩く。
しばらくされるままにされてみた。

やっぱりダメだ。
欲に負けて薄目を開けると獄寺の姿はもうなかった。


あれー…ごくでらなんでいないのー
もしかして、きぃつかってくれてるのかな
ねてもいいってことかな





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