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狼少年の法則(ディノビア+XS)
朝、ホテルのラウンジで部下もつけずに一人でエスプレッソをすすっていたら(少し舌を火傷した)、何やら思い詰めた顔の毒サソリがやってきて。

急激に心拍数が上がったのも束の間、押しつけるように小さな包みを渡される。黒い包装紙に赤いリボン。何とも可愛い贈り物だ。
紫の蒸気さえ出ていなければ。

俺はもうリボーンの生徒じゃないと言う間もなく、彼女は足早に去っていった。

未だに殺したいほど嫌われているのだと思うとチクリと胸が痛んだ。


狼少年の法則


「3ヶ月弱の謹慎、ご苦労だったな。」

「どうせケガが治るのに2ヶ月はかかんだ。逆に休めてラッキーだったぜぇ。」

な、マーモンと傍らの赤ん坊に話かけながら旧友はケラケラと笑う。
彼らがリング争奪戦に破れてから度々、日本でのヴァリアーのアジトに訪れてはいるが、何だか回を重ねるごとに雰囲気が柔らかくなっている気がする。きっとまとまった休みが久しぶりなんだろうなと少しだけ同情した。

スクアーロの隣に座った赤ん坊はというと、目が隠れているので表情はわからないが、どうやら眠いらしい。先ほどから首がコクリコクリと不規則に揺れている。確かに昼寝にはもってこいの天気と時間だ。

「マーモン、眠いなら部屋に戻ってもいいんだぜ。心配しなくても依頼の報酬は減らねーよ。」

「む…ボスが跳ね馬とスクアーロを二人きりにしたら殺すっていうからね…所謂、見張りだよ。もうボスから報酬貰っちゃったし。」

ふぁ、とあくびをしてそう答えるのが何だか微笑ましくて笑ってしまった。あのザンザスがそんなことを。
スクアーロをどうこうしようなんて俺には恐ろしくてできないし、しようという気も起こらない。


「だけど、キャバッローネのお前がリング争いの謹慎を解きにくるってのも変な話だよなぁ。」

「まぁ、予定より早く謹慎を解くことになって格好つかなかったんだろ。こういう時は第3者に行かせた方がゴタゴタしなくていい。」

「Aランク以上の暗殺任務がボンゴレだけじゃこなせなくなってきたってわけだ。ざまぁみやがれ。」
「そういうなって。朝一で頼んだチャイニーズマフィアの件はどうなってる?」

「レヴィとルッスーリアが行ってるぜぇ。あの程度なら今日中に終わるだろ。」

なるほど。ボンゴレの秩序を乱したとは言え、この迅速な反応と確実な暗殺能力なしではやはりボンゴレはやっていけないということだ。

「これは今月と来月の分の依頼書だ。それから謹慎が解けたとは言え、まだ監視と定期尋問は続くからな。あんま派手なことすんなよ。」

「わかってる。それより例のアレは。」

「あぁ…来る前に買ってきたぜ。ロマーリオ。」

そう言って扉の向こうに控えていた部下を呼ぶと大量の紙袋 を運び、一礼して出ていった。

「恩にきるぜ、跳ね馬ぁ。」

「なんてことねぇよ。でも、そんな大量にどうするつもりだ?」

紙袋の中身はROYCE'、Godiva、Morozoffといった高級チョコレートと大量の板チョコだった。

「うちのボスさんは顔に似合わず甘党だからなぁ。本当は手作りにしようと思ってたんだが、ルッスもいねぇし、失敗した時のためにいろいろ買ったんだ。」

「健気だなぁ。そういや、今日毒サソリが持ってきたのもチョコレートだったぜ。流行ってんのか?」

紙袋の中身を吟味していたスクアーロの手がぴたりと止まる。

「…毒サソリが、おまえに?」
「あぁ、今朝わざわざホテルにまで来てよ。俺はもうリボーンの生徒じゃないのにな。そうとう嫌われてんだな。」

思い出して、また胸が痛んだ。


「…おまえ今日が何の日か知らねぇ訳じゃねぇだろうなぁ。」

「え、2月14日だろ?」

「バレンティーノだぁ。バレンティーノだよ、ディーノ。」

バレンティーノとチョコレートと何の関係が。

まさか。

「おまえは知らねぇかもなぁ。ジャッポーネじゃバレンティーノっつたらチョコレート片手に告白なんだとよ。」

じゃあ、あのラッピングは、思い詰めた顔は。

自分の顔に昇った熱が次の瞬間、急激に下がっていくのを感じた。

俺は想い人をなんてことに、というか恋の成就の瞬間をなんてことに。



「ススススクアーロ !!俺っ、おぉ…どうしたら…っ!」

「知らねぇよ!そんくらい自分で考えろぉ!!」

あと、うるせぇよマーモンが起きんだろぉ、と口を尖らせるスクアーロにどこのママンだと突っ込んでいる余裕はなかった。 というか、マーモンはいつの間に眠りの国に旅立ったんだ。
あわてふためいていると、部屋の隅に生けられた白いバラが目に入った。

これだ。

「スクアーロ!ここから一番近い花屋は何処だ!!」

「んなもん、知るかぁ!!今日まで謹慎だったんだぜぇ?!」

「じゃあ、あの花は誰が買ってきたんだよ!!」

「あ、あれは今朝ザンザスが…」





「門から真っ直ぐ進んで2つ目の信号を左だ。」

急に聞こえた重低音に目をやるとドアの所にロマーリオとザンザスが立っていた。

「車ならすぐ出せるぜ、ボス。」

「ああ…っありがとな、ザンザス!!急げロマーリオ!」

廊下に飛び出したはいいが、あまりにも急ぎ過ぎてこけた。ロマーリオもいるってのに、これだけ動揺している自分に驚く。

でも、いいんだ。
こんなに気持を左右されるのが恋というもの。


ありがとう、神様!
ありがとう、バレンティーノ!


さぁ、できるだけ早く抱えきれないほどの赤いバラを君のもとへ。

END

Bon san Varentino.








おまけ

「…優しいとこもあるじゃねぇかぁ、ボスさんよぉ。」

「うるせぇ、他ファミリーの人間にうろうろされんのが気に食わなかっただけだ。」

「…バラ、嬉しかったぜぇ。」

「………うるせぇ。」

ニヤニヤと笑いながらスクアーロはザンザスの首に腕を回し深く深くキスをした。それはチョコレートより遥かに甘く熱い。


おまけEND

2008.2.16 麻純

※08'バレンティーノフリー






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