005
S極とN極
(なかよくしようよ、喧嘩友達!)
いつもより少しだけ早く目が覚めた獄寺は敬愛する10代目の家を訪れた。インターホンを押せば僅かながら聞こえる足音。ガチャとドアが開く瞬間に頭を下げた。
「おはようございます、10代目!」
「…あ、昨日の人」
「…ってめー!」
出てきたのは待ちわびた人物とは程遠かった。並中の制服を着て歯ブラシを銜えた少女は昨日のホームレス、もとい転入生。獄寺は思わず数歩後ずさった。
「わあ!君…」
「ちっ、近ぇんだよ!!」
「すごくキレイな目」
「っ!?」
かっと赤くなるのが自分で分かった。珍しい翡翠の瞳を罵られることはあっても誉められることなど今までなかったのだ。
「ねえ、名前はなんていうの?」
「…うっせえ!離れやがれ!」
「名前、どうし…あ、獄寺くん!」
「10代目!おはようございます!」
騒ぎが聞こえたのか慌てて出てきたツナ。今日も寝坊したに違いない、かろうじて着替えてはいるものの髪はボサボサで明らかに寝起きである。
「ねえ、綱吉。彼は何ていうの?」
「てめっ、10代目を馴れ馴れしく呼ぶんじゃねえ!」
「ま、まあまあ!獄寺隼人くんだよ」
「そう!よろしくね、隼人」
「馴れ馴れしいっつってんだろ!!」
馴れ合いを避ける獄寺と人懐っこい名前は逆さ同士の磁石のように相容れない組み合わせなのかもしれない。ツナは小さくため息をつく。また悩みの種が増えてしまった。
「あ、隼人!」
「あ!?」
「まつげ、ついてる」
「っ!」
名前の指が獄寺の目元に触れるとまた顔は一瞬で赤く染まる。やけに絵になる2人にツナは笑うしかない。
「ははは…」
もしかしたら、さすがの彼も彼女にはお手上げなのかもしれない。
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