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転入生来る!


(はじまりはこの日だった)




新学期、進級、クラス替え。一大イベントが三つも揃う春の日。担任が来ないのをいいことに、教室は未だにざわついていた。
ガタン。2年生、心機一転もむなしく、遅刻ギリギリ滑り込みセーフで自分の席についたのはダメツナこと沢田綱吉。間に合ったことに小さくため息をつく。想い人である笹川京子の姿を確認することも忘れずに。

「席につけー!」

やはり間一髪だったらしい。ツナは再度、安堵のため息をついた。
慌てたように教室に入ってきた担任はわざとらしく咳払いをする。この教師は癖なのかいつもこうだ。大事な話、言いにくい話がある時は決まって咳払いを挟む。まあ頼りはなくとも、いい教師なのだが。

「先生ー!転入生がいるって噂聞いたんですけどー」

痺れを切らしたように後ろの方に座る男子生徒が手を挙げた。ツナは彼の方を一瞬見たが知らない顔だった。きっと離れたクラスだったに違いない。

「…なんだ、もう噂になってるのか」
「え!じゃあマジで転入生!?」
「苗字、入っていいぞー」

ガラガラガラ。ドアに集中した熱視線。教室にいるほとんど全員が息を飲むのが分かった。不思議な程に静まり返った中に足音だけが響いた。

「初めまして、苗字名前です」

ふわりと浮かべた笑顔にノックアウト。彼女に靡かない人などいるのだろうか。何処か一般人離れした容姿に全員が見惚れた。京子と同じクラスだとつい先ほどまで喜んでいたツナでさえも彼女から視線を外せなかった。

「質問したいヤツはいないかー?」

担任の声に返事は一つもない。もはや耳に入ってもいないのだろう。その理由が分かっているのか担任は苦笑いを浮かべてから頬を掻いた。

「…スマンな、苗字。あの空席に座ってくれ」
「はあい」

名前が席に着くと同時に丁度よくベルが鳴る。それを合図にスイッチが入ったのをハッキリと感じた。ああ嵐がやって来る。

「じゃあ、仲良くするんだぞ」

今年も騒がしくなりそうだ。担任は深く溜め息をついてから一気に騒がしくなった教室を後にした。





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