モノクロの(ｽﾏ)
茨の中で眠り続ける君
どれ程の月日が経ったのだろう
もう待ちくたびれたよ
こうして旅に出て、知らなかった世界を見て
随分と…それはもう人間じゃ考えられないくらいに長い時が過ぎ去り
自分が誰かさえも分からなくなりそう
幾ら待ったところでもしかしたら君は目覚めないんじゃないかなんて…
もちろん、吸血鬼である君に限ってそんな事は有り得ないのだけれど
でも…
まるで死んでいるかのように目を閉じたまま動かないその姿は、作り物みたいに綺麗
本当は人形だったんじゃないか、なんて錯覚してしまうくらいに
もう自分の名前さえ忘れてしまいそうなのに、君の声だけは今でも脳に焼きついて離れないんだ
目まぐるしく動き続ける世界の中でただ一人、君だけが永遠に不変で
変わらないもの
だって君は不老不死の吸血鬼だからね
あぁ、君だけじゃなかった
僕にも変わらないものがあるんだ
それはね……
君を想う気持ち
嘘なんかじゃないよ？
“ずっと”だとか“永遠”だなんて、ありもしないと僕自身思ってた
それなのに
君への気持ちだけは、この先もずっと変わらない…うぅん、きっと変えようと思ったって忘れられないんだ
君を忘れる事が、できないんだよ
だって、もう200年も経ったんだよ？
僕もさ、本当に…呆れるくらい諦めが悪いよねぇ
もし君が起きて、僕の事見つけたら信じられないという顔をするだろうか
幾らなんでも、そんなに長い時間待っているだなんて普通は考えないもんね
君が眠ってる間、世界は大きく変わっていったよ
色んな国をこの目で見てきた
未開拓の地なんかにも行った
色んな人種や妖怪や天使や妖精なんかにも会った
それでもまだまだこの広い世界全てを知り尽くしたわけじゃあない
でもね、気付いたんだ
…物足りなさに
決して楽しくなかったわけじゃないけれど
僕は隣に居た筈の君と一緒に、見たかったんだ
景色を、まだ見ぬ世界を
…あーあ
僕待ちくたびれちゃったな
ねぇ、早く起きてよ
このまんまじゃ僕はもしかしたら本当に透明になってしまうかもしれないよ？
君が居なきゃ、世界は色を失くすんだ
モノクロに映る視界はいい加減、飽きたよ
知ってる？
ウサギは寂しいと死んじゃうんだって
本当かなぁ〜？
もしそうなら、僕はきっとウサギだね
だって君の事想うだけでこんなにも胸が焦がれるようで…寂しさで押し潰されてしまいそう
「ユーリ…」
ルビー色した君の綺麗な瞳を見せて…？
僕は君の薄桃色の口唇にそっと、触れるだけのキスをした。
ふわりと感じる薔薇の香りの懐かしさに、涙が零れそうになった。
ねぇ、見間違えじゃない？
たった今、君の長い睫毛がほんの微かに動いたのも
君の瞼が、ゆっくりと開かれるのも
「遅いようッ、ユーリ…」
200年振りに、僕はやっと本当の“スマイル”に戻った。
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パンドラハーツのED聴いてたら書きたくなりました←
悲劇の連載終わったら過去話をちょくちょく書きたいですー★
にしても最終的に甘っっ←←
しかもなんかユリスマにも見えそう^^;
(09'6/9)
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