ゼロに
…届かない
どれだけ手を伸ばしても。
あともう少しだと言うのに…否、私とコイツとの間には絶対的な距離があるのだ。
届きそうなのに、触れる事ができそうなのに…
やはり諦めるべきか…いや、それだけはしたくない。
他の者に取られるなどあってほしくない。
私にとっては大きな問題。
まるで立ち塞がる大きな壁のように…
本棚の一番上の書物と、私との孤独な戦いは。
ガチャ
扉を開けたその先には、なんとも危なっかしい光景が広がっていた。
「え、ユー…リ?」
ナニ、してんの?と思わず問う。
いや、何してるのかは大体察したけどさぁ。
でも…!!
椅子の上にアンバランスに本を何冊か積み重ね、更にその上に乗っかり目いっぱい背伸びをしてるユーリ。
必死で手を伸ばして何かを…多分、本棚の一番上の本を取ろうとしているようだけどわずかに後数cm程足りていない。
何しろ、流石にここはお城なだけあって一つ一つの部屋の天井が高めに造られている。
だから本棚や食器棚の類いも普通より長さがあり、今ユーリが悪戦苦闘している本棚も僕ですら一番上の棚は椅子を使わないと届かない位。
どー考えても、ユーリの身長じゃ無理。
「危ないから僕が取ってあげるヨ?;」
今にもバランスを崩してしまいそうなんだもの!
ユーリがケガしちゃ、大変!!
「…いい、自分で取る」
こっちの心配をよそに、頑なに手を伸ばし続ける君。
てゆうか悔しいからって涙目になってるって、ちょっとちょっと可愛いスギじゃないユーリちゃん?!
「私だって…!!手を借りなくともこれくらい…ッ…?!」
ムキになって限界まで背伸びをした瞬間にグラッと、重ねていた本が大きく揺らいで体制を崩すユーリ。
…ッ!後ろに倒れちゃ…!!
「…っユーリッ!!」
ドサッ
「…っ……」
「ッたた、ユーリ大丈夫…?」
「私は…平気だ」
間一髪のところで何とかユーリを受け止めた僕はそのままの勢いで下敷きになるった。
危ない危ない、あのまんまじゃユーリ頭ぶつける所だったヨ…
「もう、冷や冷やさせないでよネ」
取り敢えず無事でよかったと安堵して、にっこり微笑む。
と、
「…」
フィッと顔を逸らされた。
え、何?!
僕なんか嫌われるような事した?!!
「…大丈夫だから、離せ…//」
そう言われてまだユーリの下敷きになっていた僕は、ユーリの腰に腕を回したままだった事に気付く。
て、ゆーか…冷静になって考えてみるとこの距離はかーなーり近スギなんですが。
僕の肩辺りの位置にユーリの真っ白い綺麗な顔があって、長くて繊細な睫毛の1本1本まで見える程に密着している訳で…
てゆうかてゆうかちょっと!
そっぽ向いたままの君の横顔、心なしかいつもより赤いような気がするんだケド…
「ネ、もしかしてユーリ照れてる〜?」
「…ッ、なっ、違っ…!もういいからさっさと離せッ///」
図星だったらしく更に顔を紅くさせたユーリがどうしようもなく、愛しく思えて。
「ユーリぃ〜vV」
「わっ、ちょっ…スマ?!」
ぎゅっと、抱き締めた。
「なんでいちいち可愛いかな、ユーリは」
「〜〜ッ//」
離せと言うのが、聞こえないのか。
と、蚊が鳴くように小さく発せられた声も説得力無いヨ…?
だってゼロになった距離で伝わる、君の胸の鼓動はこんなにも速いんだもの。
僕のとおんなじ。
ドキドキが、共鳴してるように聞こえるんだ。
「…暑苦しい。抱きつくな。そしてさっさと上の本を取ってくれ」
「ハイハイ。でもあと少しだけユーリを感じていたいから…もうちょっとこのままで居させて?」
笑顔で問いかければ、仕方ないと言った表情のユーリ。
「…勝手にしろ」
「ウン、ありがと」
そっと引き寄せてユーリの額に、ちゅっと小さく口づけた。
「…」
その頃、部屋の前では。
(なんかすごい音がしたから心配になって来てみたら…入りづらい雰囲気ッス〜!!;)
立ち尽くすわんこが1名。
アッシュは付き合いきれないといった様子でため息をつき、放置して家事に戻ろうと引き返した。
「まぁ二人ともケガも無かったみたいだし…喧嘩で物が壊れた音じゃなくてよかったッス」
片付ける方は一苦労だし。
苦笑いを浮かべながらも、変わらない日常を微笑ましく思った。
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アッスの方がまるで保護者な件←
うちのアッスくんはいい子です(笑)
二人を温かく見守るお母さんみたいな(ぇ
とゆうかスマ視点だとシリアス書けないかもしれないという罠/(^o^)\
我が家のスマは暗い過去を持っているけど、根がやっぱ明るい子なので、
オフィシャル寄りな性格にユーリ大好きスパイスを加えた感じなんスよね←
だから何かとハイテンションな文に…(^^ゞ
(09'6/2)
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