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離れていても




―――――――鬼の面を被った、老婆……

脱兎の如く物凄いスピードで走ってくる巨大なそれに妖怪である私達ですら太刀打ちできる術は無く、引き倒される。

2人まとめて。


「くっ…」

「…おやおや、あっけないものじゃあのう…どれ、一人ずつじわじわと消していってくれるわ…」

面を外し、恐ろしい形相で見下ろしてくる老婆の、大妖怪…

「ふん、こっちの羽根の生えた吸血鬼の方からにするか、ねっ…!!?」

「…ッ!!?」

駄目だ、避けられない…!!

そう思った瞬間、目に飛び込んできたのは振り下ろされる刀と、蒼い糸と、紅い…鮮血。

グシャァッ


な、に…この、嫌な音は……?

「ぅあぁッ!!…ユーリ…ゲホッ…逃げてッ…」

なんで、私を…庇って

「…い、嫌だ、スマイルッ!!」

こんなところで、死なないで…

力無く瞳を閉じ、床に沈んだスマイルの身体。


「安心しな、お前もとっとと一緒の場所に送ってやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「………ッ…!!!!!」


ばさっ、と体からシーツの落ちる音。

「はぁ、はぁ…はッ……」


乱れている呼吸を何とか落ち着けようと、周りを見渡す。


なんていう、


「…嫌な夢、だったな…」

こんな怖い悪夢なんて久しぶりに見た。
疲れているのだろうか?

落ち着け、メルヘン王国は今平和を取り戻したというのに……

こんな夢を見てしまっては、どうにも再び寝付くことはなかなか困難だ。
こんなものただの夢、根拠など何も無いただの幻想に過ぎない。

それなのにひどく心配になってしまう。
スマイルに、何かあったのではないかと…

そんなことあるわけが無いと自分の心に言い聞かせても、奥底から押し寄せてくる不安の波は治まろうとしなかった。



…スマイルは起きているだろうか。

チラと、ベッドサイドに置いてある時計の針を見やる。

現在の時刻は深夜の3時過ぎ。

ソロの方で仕事が入り彼はここ数日城に居ない。
明日も早いと言っていたから、きっとこんな時間まで起きていないだろう。

疲れている時になんて、尚更…今の時間に連絡なんかしたらきっと迷惑だろう……

そう思って電話を掛けるのは躊躇ったのだけれど。

どうしても不安が拭い去れなくてその思いばかりが脳を駆け巡っていた。

携帯電話の通話ボタンに指を掛けたまま固まってしまう。

「……」

仮に起きていたとしよう。
だがしかし面倒だと思われたりなんかしたら…
用事があって掛けるのならまだマシなのだが、単に嫌な夢を見たからという理由だけでこんな…

でも、もし何か悪い知らせの予兆だったりしたら…

いつもならさらっと流して忘れてしまえる様な事も今は、少し弱気になってしまう。

ひとりの夜というものはどうしても…


あぁ、そうか。

いつもならスマイルが隣に居てくれて、それで…

私よりも少し温かな体温をした彼の心地良い熱で、包み込んでいてくれるから。

だからここ最近は怖い夢も見なかったのに。


きゅうっと、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。
声が、聞きたい。

どうしようもなく恋しくなる。


あぁ、どうして傍に居る時には素直になれず突っ撥ねてしまうのに…こうも距離が離れてしまった時ばかり寂しい、だなんて。

女々しい自分の思考に少々嫌気が差す。

だが……


安否を確認するだけだ。
理由をこじつけて。

そもそも枕元に置かずに少し離れた机の上に置いてある携帯をわざわざ取りに行ったのだから。
もう仕方ない。

rrrrrr...

3コール目が鳴り始める。

(やはり、寝てしまったよな…?)


諦めて明日にでも掛け直そうと、終話ボタンを押そうとした…ら。

ガチャ

「ユーリ?どしたの〜?」

紛れも無く受話器から聞こえてきたのはいつものスマイルの声。

「…ん、いや…夜遅くにすまないな」

「んーん!ユーリから電話してくれる事なんてあんま無いからむしろ嬉しいヨ〜☆」


あぁ…声を聴くだけでひどく安心してしまうだなんて。
 
「そーそー、さっきテレビでやってたんだケドねぇ、」


少し、スマイルと他愛ない話をした。

「ほう?それはつまり…」

「ウン、面白そうだよネ♪アッシュくんにも今度教えてあげよう〜」

電話口の向こう側で聞こえる彼の楽しそうな笑い声。
よかった、迷惑だとか思われてなくて…
そんな事を考えていたらふいにスマイルが話題を変えてきた。


「ねぇ、そういえばユーリ電話してくる前になにかあったの〜?」

ドキン…

スマイルに何事もなかったと確認できた今、なんだか本当のことを言うのが恥かしくなってきた。

「いや、まぁ…大した事では無い、気にするな」

実際大したことではないのは確かだ。
私がたかが夢の事で不安になって連絡しただけなのだから。


「そう?別に何も無いならイイんだけど…」

「あぁ、大丈夫だ」

なるべく明るい声を取り繕って答えた。
鋭い彼の事だ、もし目の前に居たなら気付かれていたかもしれない。

けれど電話口から表情までは分からないだろう?


「ヒヒッ…なーんて、こんな時間にユーリが電話してくるのに何も無いワケ無いデショ?」

「ぇ…」


少し驚いて、言葉に詰まってしまう。
どうしてだろう、電話越しでも私の不安はスマにはお見通しだったというのだろうか?


「迷惑だなんて思わないから、ちゃんと話して?」

電話越しでも、ちゃんと私のことを思いやっていてくれる彼の優しさが伝わってきて…

ああ、だから駄目だと言うのだ。
そんな彼の温かさに私はいつも甘えてしまうのだから…


「本当に…大したことは無い。ただ、夢を見ただけだ」

「ユメ?」

「あぁ、ひどく後味の悪い夢だった」

深く追及せずに黙って聞いていてくれるスマの心遣いに、思わず涙腺が緩みそうになる。


「それで、おまえが殺されるんだ。その直後に私も…殺されかけたところで目が覚めた」

「う〜ん、確かにヤな夢だったねぇ」


「おまえを、失ってしまうかと思って…怖かった」


「へ?」

間の抜けたようなスマの声に、自分でも迂闊に漏らしてしまった一言に気恥ずかしくなってしまい言葉を濁す。


「いや、いい。聞かなかったことにしてくれ」

「エ!?ちょっと待ってヨ!!ユーリっ」

焦った声が受話口から聞こえてきて、笑いそうになる。

けれど…


「ユーリ…もしかして僕のコト心配になって電話してきてくれたの?」

「…なっ!!!それ…はっ…!」


…図星過ぎて、冗談じゃなく顔から火が出そうな位、熱かった。

「やーもう!ユーリ大好き〜vV」

「馬鹿っ!調子に乗るな///」

見えもしないのに、思わず顔を横へ逸らしてしまう。
いつもの癖。


「心配などした私がバカだった!」

わざとキツイ口調で言う。

危ない危ない。
スマが近くに居たら絶対にもっとからかわれていた所だから。


「ヒヒヒッ★でもスッゴク嬉しいヨ?…だってユーリ普段はあんまりそういうの、言ってくれないからさ…」

「…!」

「だからね、たまに不安になっちゃうケド…ユーリがそんなに僕のコト想ってくれてるのが改めて伝わったから嬉しいんだよ」


電話の向こう側で彼が優しく笑ったのが、分かった。

「ふん、馬鹿者が。…不安になる事など何にも無いだろう」

だってこんなに私はおまえを…愛しているのだから。

その言葉は声に出さずに、心の内に留めるけれど。


「じゃあさ、ユーリも安心してよネ?…僕は君を残して居なくなったりしないから」

「……っ//」

「僕はちゃんと此処に居るよ。今だって距離は離れているけど心はいつもユーリの事ばっかりだもの☆」

「色ボケが……」

「ヒドーイ!!でもそんなツンデレな所も含めてぜーんぶ、好きだヨ?」

「なら、せいぜい嘘つきにならないようにするんだな…」


その姿が私の前から消えないように。

こっそり、でも強く、そう祈りを込めた。


「じゃ、お互いに“約束”…ね?」

「あぁ」


でもそれは“約束”なんてものじゃなくて。

私達はきっと…離れるなんてもう出来ないくらいに、お互いの存在が大きすぎる。

それが確かな事実。


「安心したら眠くなっちゃった〜」

「ふふ、私もだ…」

「じゃあね、ユーリ。明日の夜には帰れるから♪そしたらいっぱいぎゅーってしてあげるvV」

「いらん世話だな。だが…一人ではこの部屋は少し寒い」

やっぱり声だけでは、物足りないから。
会いたくなってしまうから。


「早く帰って来い」

「ん、分かった」


彼の笑顔を思い浮かべたら、心地よく眠りに就けそうな気がした。







おやすみ。














**************

あまーーーーーーーーーーい/(^o^)\
何か切なくて苦しい2人書いたら甘々ラブラブな2人が書きたくなって…←

もうあんたらバカップル過ぎ!!!!!笑

書いてるこっちが恥ずかしいです○rz
でも幸せな2人が好きなんですよぉぉぉぉぉぉぉいつ結婚するんですかねあなた達は^^^

てゆか最初の方の文なんかパロと見紛いそうですね(;´∀`)


(09'5/29)

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あきゅろす。
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