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街並みと不意打ち




「わーあのお店もスゴイー!!」

本当に何百年も生きているのだろうか?だなんて思わず疑ってしまうようなはしゃぎっぷり。
毎年、スマイルはこの時期になるとそうだった。











クシャ...

ポイッ

「ふー…」

駄目だ、どうにもしっくり来る言葉が見つからない…

私はリビングで唸りを上げた。
新曲での作詞活動をしていた訳だが、書き始めはスラスラと出てきた文字達が今は書いては消し、また書いては消しの繰り返しを続けている。
あともう少し、という所で行き詰まってしまう。

アッシュに淹れてもらった紅茶も、もうすっかり冷めてしまった。
ふと、この陶器の冷たさはまるで外に吹きつける風のようだと思った。
夏場の熱風の名残などもう皆無になった秋空はまるで、湯気の立つ温かい紅茶が冷えきってしまったかのように…どこか寂しいような、そんな気分になる。

不思議なものだ。
夏は夏で暑くて日射しが強いから嫌いだなどと言っていたのに。

ぐっと、背伸びをした後、背凭れに首を預けて人差し指で目頭を押さえる。
長い時間ペンを走らせ、紙を凝視していた所為で酷く疲れが溜まっているようだ。


「お疲れみたいだネェ〜」

声と共に視界にひょっこりと現れたスマの顔。
椅子の背を挟んで腕が回される。

「…スマ、」

「あんまり無理しても体に良くないヨ?」

「まぁ…程々にするさ」

お前は曲の方はどうだ?
問えば返ってきた答えは

「ん〜まぁまぁ、カナぁ…」

こちらは特に難航中という訳でも無さそうだった、が。

「でも僕飽きちゃったカラちょっと気晴らしに外でも行こうかと思ってたんだよネ。ユーリも一緒にどう?」

「うーん…しかし…」

なかなかに次の一手が思い浮かばない事に対する焦りもあった。

「てゆーか一人で行ってもあんまし面白くないから一緒に行こ★」

「え…?ちょっ」

言葉と共に手を引かれリビングから連れ出された。

長年の経験から行くと、多分この様子じゃスマイルは単に作業に飽きたのでは無かろう…まぁ勿論それもあるのかもしれないが。
本当の目的は私に気分転換させるつもりで外に行こう、なんて言い出したんだろう。

そんな然り気無い気遣いがこいつらしくて全く敵わない…けれどとても嬉しかった。
素直には言ってやらない、いや…性格上言えないけれど。





森を抜け、街まで出てきた自分達。
もうすっかり秋の訪れを感じさせる赤や黄の色を付けた街路樹をくぐり抜けた先には、それぞれ個性溢れる様々な飾り付けをされた店の数々が立ち並ぶ。

「どこも凝ってるネェ〜」

「あぁ、今年もまた凄いな」

街ではほとんどの店や家屋にハロウィンの装飾がされていて、いつも以上に賑わっているように見えた。

「今度はあっちのお店入ろうヨー★」

イベント好きなスマイルは割と街の情報やら流行なんかにも詳しい。
結構期間限定のキャンペーンなんかを行っている店も多くて見ていて飽きなかった。

次に入ったのは、ちょっとしたインテリアや雑貨、観葉植物等が取り揃えられている小洒落た店。

ふと目についたアロマオイルを手に取ってみる。
ふんわりと、柔らかな香りが微かに漂った。
最近のものはあまり使ったことが無かったので少し気になっていた。
悪くはなさそうだ。


「ユーリ見て見てー!このわんこアッスくんにそっくりじゃナーイ?」

「ん?」

スマが指指す方を見れば、子犬のアップリケがポケットに付いた青のエプロン。

「ぷっ…!確かに!」

流石に目は3の字にはなっていなかったが。

「デショー☆そーいやアッスくんこの前醤油かなんかこぼした〜って言ってたし、新しいの買ってってあげよっか?」

「ふふ…そうだな、あいつも喜ぶだろう」

「絶対似てるー!って言ったら『も〜、犬じゃねぇって言ってるじゃないスか〜!』とか言いつつ次の日から使ってくれそうだよネ」

そんなアッシュが容易に想像できて、なんだかおかしかった。

「じゃーコレ買ってくるネ〜、あとユーリはそれでイイの?」

私が手に持っていた瓶を見る。

「え、あぁこれか?試しにどうかと思ってな」

「んじゃ、これも一緒にお会計してくるから待ってて〜★」

スマイルは手に持っていた瓶をサッと抜き取り、レジまで向かっていった。





「ところで僕お腹空いちゃったー」

店を出て、スマが唐突に言い出した。

「あぁ、そう言えば…」

「アレ食べに行こうヨ、33アイス!」

「アイス?」

この時期にアイスとはまた珍しい。

「そ、今ハロウィン限定のメニュー出てるんだよネ★」

「そうなのか!それは気になるな」

「決まり〜♪」

スマに案内されて33アイスとやらに向かった。



「しかし、お前それ全部食べるのか」

私は甘いものは嫌いでは無いが、すごく好きと言う訳でもないから普通にシングル。
が、スマが頼んだアイスは2段重ねのサンデー。
生クリームやらチョコやらまでトッピングされている。

その細い体型のどこに入っているのか、と毎回思う。
特にカレーの時などな。

「ん?ユーリも食べたい?」

「や、別にそういう意味では…」

と言う間にスマはスプーンで自分のアイスを掬い、こちらへ向ける。

「はい、あーんv」

「は?」

いや、ちょっと待ていくら何でも此処は店先にあるベンチであって、しかも人通りも多いのだぞ?!

「ほらほらー、早くしないと溶けちゃうデショ?」

「何考えてるっ!こんな外でっ…!!?」

やめろ、と訴えようとしたら口にスプーンが押し込まれた。

「っ…〜〜///」

「美味しい?」

笑顔で聞いてくるスマがなんとも憎たらしい。

「別に…不味くはない!」

というか味わってる余裕などない。
それを見越してかスマはいつもの笑みを浮かべつつ更に追い打ちを掛けてくる。

「僕もユーリの食べたいナ★」

「ばっ、なら勝手に食べればいいだろう」

そう言ってカップごと差し出すが、

「え〜、それじゃ意味ナイじゃない!」

「じゃあもう知らん!」

プイッとそっぽを向いて、最後の一口を頬張る。

「あーぁ、ざんね〜ん…」

「…」

さも残念そうな声で言う。
仕方ないな。
さっきの仕返しだ、驚かしてやろう。

「スマ、」

「ん〜?」

呼び掛け、顔を上げたその瞬間にスマの唇に触れるだけのキスをした。

「…///」

「…ゆ、ユーリっ…?!」

私から仕掛けるなんて滅多に無いから、どうやら吃驚しているようだ。

まぁ内心かなり恥ずかしかったが、してやったりな顔を作って笑う。

「アイス、もう全部食べてしまったからな…満足、したか?」

問えば、珍しくぽかんとした表情を浮かべていたスマイルはヒヒッ、と笑うと

「オヤオヤ、今日は積極的だネェ…」

とちょっとだけ悔しそうな、楽しげな口調で言った。

スマイルから一本取ってやった、だなんて私はかなり上機嫌で歩き出す。
まぁ実際の所、スマのお蔭で良い気分転換ができたわけだし…詞の方も、今日中に良いものが仕上がりそうな気がする。
その礼だ、礼!
自分の中でそういう事にする。


「そろそろ帰るぞ!」

「ん、そーだネ」

空になったカップをゴミ箱に放り投げたスマイル。
何か思い付いたようにクスッと笑った。
…嫌な予感。

「それにしてもさ〜ユーリったらあんまり可愛い事するんだもの、」

ぐいっと引き寄せられ耳元で囁かれる。


「最近ご無沙汰だし…夜が楽しみだよ?」

「…ッ〜〜?!///」


何かを企んでいそうな顔でニヤリと、妖しく笑ったスマイルの表情は今だ鮮明に覚えている。



その夜の事?…聞かないでくれ、頼むから。















**************

小ネタにしては長い○≡rzスマせん
私は攻めが甘党というギャップ萌え派…というかオフィでもスマさんは甘いもの好きそうなんでこんな感じの二人なんですがどうでしょう?←

てゆーかユーリさん、あーんしてあげるよりもちゅう☆のがよっぽど恥ずかしいですってば/(^o^)\

(09'10/19)

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あきゅろす。
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