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願望



※自傷有り
※流血表現有り
苦手な方はバックorz

















「なぜ、止める」

「………」


ユーリの言葉が聞こえているのか、いないのか。
ただただスマイルはドクドクと溢れる鮮血を止めようと、傷口の手当てを黙々と続けた。


「…放って、おいてくれればよかったのに」

真っ白だった布にじわじわと染み渡る、赤。

ガーゼでできた白が赤に侵食されてゆく。
それは闇が心を覆うように、年月が身体を蝕むかのように。






スマイルは知っていた。

もう自分の死期が近いことを、そしてその事実をユーリもまた、気付いてしまっていた事に。




「…なぁ、スマイル」

「…なぁに、ユーリ」


それまでずっと、だんまりしていたスマイルは、俯けていた重たい頭を漸く上げる。

「どうして、私は……許されないのだろう」

「…」

何が、と聞き返さなかったのは、何となく彼が言わんとしていた事が分かってしまったからだ。

それは何時も、ユーリ自身が思い詰めていた事。




「私には、どれ程までに傷つけても死に値する事は叶わないのだろうか…」




哀しみに満ちた瞳が、病的な程に白く細い手首に滲んだ幾筋もの赤が、震える小さな小さなその肩が。


痛々しくて…

何よりも愛しい君よ。


スマイルは願った。

どうか、愛しい貴方が哀しまぬようにと。





―――…「どうして、そうやって本当に大切な事は言ってくれないのだ…?」

「そんな、悲しそうな顔をしないで」

「…っ、私は、おまえが言ってくれるのを待っていたのに…っ!」

「言えないよ」

「…!どうし、て…」



『だって君には最期まで…笑顔で居てほしかったんだもの』…―――




床にポタポタと零れた血痕。

その生々しい傷でさえもなにも、意味は成さない。
治癒力の高い彼等の種族にとっては、傷跡を残すこともきっと無い。

まるで始めから何も無かったかのように、

『消えてしまう』


「…ッ!!」

「…ユーリ?」

温かい。

いつもと、何も変わり無いスマイルの体温。
その外見も、剽軽な行動もずっと昔から変わらない。
だから今だって、信じられない。

彼がもう1年も保たない事に…


「…おまえ一人で勝手に逝くな。私はっ…!」

置いていかれるのは、もう懲り懲りなんだ。
私よりも先に行かないで…


その言葉は声にならなかった。
けれど、ユーリの気持ちを察したスマイルは微笑んだ。

穏やかで柔らかな眼差しで。

「うん、大丈夫、大丈夫だから…もう泣かないで…」


「私の前から消えるというのなら、その時は、その時には、…っ」

ツー…と、唇をなぞるスマイルの人差し指にユーリの言葉は遮られた。

触れた部分から伝わる熱は、温かいのにどこか切なくて…




「その時には僕が、君を殺してあげるから」















(分かってる、その言葉が気休めなのも…だって貴方は私を殺してなどくれない)




「優し過ぎるのだ、から………」















++++++++++++++++++++++++++

悲劇シリーズの番外編みたいな感じ。

病みユーリ/(^o^)\


(09'08/15)

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あきゅろす。
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