願いを(Deuil)
「たっだいま〜☆」
いつも通り勢い良くリビングのドアを開ける。
「あ、スマおかえりッスー!!…わっ、そんなデカイのどうしたんスか?」
そろそろ梅雨明け。
日も大分長くなってきたこの頃、冬場ならもう夕暮れ時な時刻でもまだ外は昼間並みに明るい。
多忙な日々の中でなかなか季節の移り変わりを感じ取る時間すら無かったが、今日は特別にと仕事を早々に切り上げた僕は、とある物を持ってリビングまで入った。
「これネ、KKに分けてもらったんだ☆六ん家の裏庭に生えてたらしいヨ」
お掃除屋さんて頼まれれば庭の手入れもするんだろうか。
「へぇ〜、なかなか立派なもんスね!でもこれ何に使うんスか?」
「ヒヒッ☆コレはねー、」
カチャ
アッスくんとわいわい盛り上がっていたら、リビングの扉が開く音がした。
「あっ!!ユーリちゃんv」
「スマ、早かったのだ、…なっ?!〜〜ッ」
言葉と共にユーリの元へ駆け寄り、抱き締める。
「ただいまぁ〜☆わーん、ユーリに会えなくて寂しかったヨー!」
「はぁ?…全く、たかが1日ではないか大袈裟な…」
引っ付く僕を引き剥がそうともがくユーリ。
「えー!!だって昨日はユーリが仕事で1日居なくて僕が入れ違いで今日仕事出てたんだもん!2日間は会ってないヨっ」
「…1日も2日も大して変わらないだろう」
はぁ、と呆れ口調で溜め息をつくユーリ。
ちょっ、ヒドくなぁい?
「僕にとって2日間は大問題だもん!ギャンブラーの限定DVDBOXの入荷日が1日遅れた時なんて、24時間がどれ程長かったか…!!!」
あれはホントに泣きそうだったサ…!!
「…私とロボットアニメを一緒にするな」
プイと、不貞腐れたようにそっぽを向くユーリ。
オヤ、今の可愛いじゃない?
「一緒じゃないヨ〜、ギャンブラーは僕の人生にとって大切なものだけどユーリはそれ以上にもっともっと大切っvV」
「…ッ〜〜///いちいち言わなくとも…」
「あの〜、そろそろツッコミ入れてもいいッスか…?」
非常に出るタイミングに戸惑っているかのような声でアッシュが言った。
「もー、アッスくんたら空気読めないんだから〜」
「…貴様もだ、この抱きつき魔が」
「んー、僕は空気読めないんじゃなくて読まないだけv」
エヘッvと子供に向けてするような笑みを向ける。
「余計に質が悪い」
「ヒヒッ☆毒舌ぅ〜」
何やら後ろの方で「…てゆうかこんなリビングの入口でイチャつくなッスー!!」とか言っているわんこが可哀想になってきたからこの辺にしといてあげる。
「…?ところで、この緑の枝は何に使うのだ?」
僕が持ってきたそれに気付いたようで、ユーリが問い掛ける。
「あれ〜?みんな七夕知らないのー?短冊ってゆう紙に願い事を書いて吊るすの♪」
「あぁ、昔何かの書物で読んだような気がするが…」
「へぇ、願い事を笹に吊るすんスか?」
おおっ、興味深々みたい?
そうこなくっちゃネ☆
「そー♪地球の日本じゃなかなかメジャーなイベントらしいヨ」
小学校とかでやってるよネ。
「天の川がどうとか言うやつだな」
「ウン、織姫と彦星が1年に1回だけ会えるのが7月7日の今日ってワケ☆」
「なんかロマンチックッスねぇ〜」
「デショデショー?☆」
ノリノリでどこからともなく色付き画用紙を引っ張り出す僕(これも帰る途中で調達したの)。
「まぁ、願いを紙に書くだけで叶うのなら苦労はしないがな…」
呆れ気味の口調とは裏腹に、
「でもユーリも何気に楽しそうだケド?」
いつもよりちょっと子供っぽく、キラキラと瞳を輝かせる君を見て僕もアッスくんもクスクス笑ってしまう。
「なっ、そんなに笑わずともよいだろう!」
「あははっユーリちゃんかっわいー★」
ムキになって反論してくるユーリがおかしくて、でもどうしようもなく愛しくて。
そんな様子をまるで親のように(まぁ彼のが年下だケド)見守る笑顔で、場を和ませてくれるアッシュくんも。
僕はなんだか急に、この場に居れる事がすごく素敵なことなんだと思った。
普段気付けない位に当たり前のことや何でもないことが、本当は一番大切な事だったりするんだ。
この一秒一秒が、何よりも…
「じゃー、みんな好きな色選んでー☆」
色とりどりの画用紙を並べる。
その様はまるで虹のよう。
今から書き込まれる願い事を運んでくれる、空に架ける橋みたい。
「まぁ、こんなのもたまには…いいだろう」
「イベント事は楽しんだ者勝ちですしね!」
「まぁイベント大好きなコイツが居る限りは毎年騒ぐのだろうな」
「だって楽しいんだもん、イイじゃない〜♪」
それぞれの思いを書き綴った紙をみんなで笹に吊るす。
てゆーかみんなびっしり書き込んであるあたり、願い事1個だけじゃないデショ〜?
まっ、僕もだケドネっ☆
「みんな書き過ぎッスよー」
「そういうアッシュくんだって〜!!てか涼しい顔してるけど、ユーリもー」
綺麗な、細かい字で紙一面に書かれたユーリの文字を見る。
「まぁ、長く生きている分煩悩が多いのも仕方なかろう」
「なになに?…身長が伸びますように?あちゃー、これはもう厳しいネ」
「ぶっ…!!」
「か、勝手に読むな!!アッシュも、吹き出すな!!」
焦って短冊を引ったくるユーリ。
「ユーリちゃんはそのままで十分可愛いんだから気にしなーい♪」
そう言いながらさり気なくもう1個書いておいた短冊を手の届く一番高いところに吊るす。
ただし、こっちに書いてあるお願いは1個だけ。
「あっ!スマズルいッスー!オレももう1個の方っ」
「短冊を吊るしていいのは1人1個とは決まっていないよな?ならば私もだっ!」
そう言って二人とも2個目の短冊を笹に吊るした。
「願い事、叶うといいッスね」
「ネっ☆まぁ一番重要な願いが叶えばそれでイイんだケド〜」
「あ、オレもッス!」
「ふふ、奇遇だな。私もだ…」
この時3人とも同じ事書いてただなんて知ったのは、この行事が毎年恒例になって何回目かの七夕の日。
“来年も、また3人で七夕の日を過ごせますように”
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Deuil愛してるぞぉぉぉぉぉ\(^o^\)≡3
七夕にギリギリ間に合いました…
ありがち過ぎるというかありふれたネタおーあるぜっと
来年は即席じゃなくてもっとちゃんとしたの書きたいです。
(09'7/7)
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