これからは
「ユーリちゃん髪伸びたネ〜?」
一体いつぶりだろう、久々に再会した君は雰囲気が違ってみえた。
「ん…まぁ、そうだな」
腰の辺りでさらりと揺れた、まっすぐなユーリの髪。
幼い頃に見ていた記憶の中の君は、大体いつも細い顎のラインで切り揃えられていた髪型をしていたから…ちょっと珍しいかも。
「伸ばしてるんだ?」
「いや、そろそろ切ろうかとは思うのだが」
「ふ〜ん」
なんだ、ちょっぴり残念。
「でもサ、長いのも似合ってるヨ☆」
単純に、そう思ったから。
十数年前と変わらない、綺麗な顔立ちの君を見てその時は自然にそんな言葉が出てきた、ただ、それだけ。
「そうか…?私はあまり好きではないのだが…」
ふいに複雑そうな表情をする、ユーリ。
オヤオヤ、眉間にシワなんて寄せちゃ美人が台無しだヨ?
「えー、そうなの?どうしてー?」
「だって、…長いと色々面倒だ」
彼は自分の事に関して多くを語らない。
多分、何となくだけれど他にも理由はあるんだろうなと思った。
深くは追求しないケド。
「そっかぁ、」
君はおもむろに少し大きめの鋏を引き出しから取り出す。
鏡のようにはっきりと映し出すわけではないけれど…銀色の鋭利な刃に反射する赤い君の瞳は、宝石みたい。
いつだったかもう忘れたけど、前にもユーリの事を“まるで作り物みたいに綺麗だ”と思ったような気がする。
だから時々、君は僕と同じ妖怪なんだっていうことを忘れそうになるんだ。
「アレ?でもユーリ今までも自分で切ってたの?」
だって、君は意外に不器用さんだから自分で自分の髪を切るだなんて、相当苦労するに違いない。
ふと浮かんだ疑問を口に出せば、鋏を入れようとしていた手(それも危なっかしかった)を止めてぽそりと呟くユーリ。
「あぁ、それはだな…いつも、兄に切ってもらっていたんだ」
何処か振り返るように、思い出に浸るように話す口調。
目を俯せ気味にした君に、『あ、睫毛長いな』なんてどこか心の片隅で思ったのは言わなくてもいいこと。
「まぁ、今は訳あって何処か遠くに行ってしまったから…それからは髪を、伸ばしたままだ。…懐かしいな」
穏やかな瞳で、ほんの少し照れながら話し出す君の様子が、何故だかあまり面白くなかった。
「ん、じゃあサ」
心がもやもやするんだよ、ネ。
でもこの意味に気付くのはもっと、後の話。
「これからは僕が髪切ってあげようか?」
これでも手先は結構器用なんだヨ。
思えばそれはただの気まぐれだったのかもしれない…でもその時の僕の言葉に少し、驚きながらも微笑み返してくれた君の表情を。
今でもちゃんと覚えているんだ。
「では、頼もうか」
「ウン、まかせて♪」
その日から、ユーリの髪を切るのは僕の役目になった。
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200年以上前の、まだ恋人未満な二人の話。
たまには殺伐した感じをと、目指したら沈没したorz
うちのスマ視点じゃ無理\(^o^)/
数百年前なのに鋏があるのかとか不明。
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(09'7/5)
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