[携帯モード] [URL送信]
何故かは分からないけれど





ピピピピピピピ……


朝。

携帯電話のアラームで起こされる。

「……んー…」

久々に、日付が変わる前に寝た気がする。
普段は何だかんだやってる内につい夜更かしになってしまうのだけれど…

ドタバタと始まった新学期のせいで、知らず疲れていたのかぐっすり眠っていた。

早寝早起きが健康にいいだとか言うのは、本当なのかもしれない。


「よく寝たぁ〜…!」


何しろこんなにスッキリとした寝起きは結構久々で、気持ちいいものだから。


今日の予定に特別面白い内容がある訳では無いのに、どこか少しだけワクワクしながら支度を始めた。

まぁ、単に陽気なこの気温のせいなんだろうケド……ネ☆








「おっ、スマイルじゃん!!おはよー」

いつも通りの通学路で声を掛けてきたのは。


「オハヨ、サイバー」

サイバーは近所に住んでいる、ギャンZが大好きな仲間なんだ♪

会う度によくギャンZの話で盛り上がったりするワケ。
ギャンZの良さが分かるとか、将来大物になるに違いない。


「新しいクラスどうだった?」

「またアッスくんと同じクラスだったヨ〜。やれやれ、わんこの世話も大変だよネー」

アッシュが聞いていたら間違いなく「世話してんのどっちだと思ってるんスか」と言われそうだ。

「あははっ!まーバンド仲間どうし良かったじゃん」

「そだネ〜」

そう、実は僕とアッシュは軽音楽部に所属する、一応同じバンドメンバー。
ただ、ボーカルは今募集中なんだよネェ…
1年の時から何人か務めてくれた人は居たんだケド、ピンと来る人材には未だ出会った事がない。

「でー?ボーカル見つかりそう?」

「う〜ん、新入生の中に居ればイイんだけど」

「そっか〜、まぁ頑張れよ☆オレもパルと一緒に正義と平和の為に頑張るぜ!!」

「あぁ、そっかサイバーも大変だもんね〜」

本当はサイバーは今年からごく普通の高校生…の予定だったんだけれど、正義の味方である宇宙人に「いいひと光線銃」を託されて町の悪を日々撲滅する活動に励む事になったんだって。

学校では普通科に通っているからパッと見は本当に極平凡な高校生だけれど……


案外、正義の味方というものは身近な所にうじゃうじゃ居たりするのかもしれない(忍者なんかも普通に居るような世の中だからネェ…)



サイバーと別れ、普通科と魔術科で分けてある棟へそれぞれ入る。

今日もギリギリ登校〜

って言っても、この時間が大体僕の登校時間なワケだけど。

めんどい授業の時はサボりとかあるしネ。
ま、ちゃんと計算してるから日数足りなくて留年とかは無いんだケド☆


ガラガラッ

「あ、スマ今日はちゃんと朝から登校ッスね」

教室に入るなりアッシュの第一声がこれだった。

「もう、それじゃ僕がちゃんと学校来てないみたいじゃないか」

「や、ちゃんと来る事の方が珍しいじゃないッスか」

えー、そうカナ。

「ま、イイじゃない♪堅いコト言わない言わない☆」

「そんな事ばっかり言って…みっともないから留年しないで下さいよ?」

「僕がそんなヘマすると思う〜?」

にっこりと。半分呆れ顔のアッシュに対して笑顔で言ってやる。

「そッスね…スマだし…てゆうかスマってあんまし補習とかも無いッスよね?赤点取ってるの見た事無いし」

「えー?赤点なんて取るワケないじゃん」

それどころか大体の教科はトップから数えた方が早いくらい。

「…スマって授業サボってる割には結構出来るッスよね。いつ勉強してるんですか?」

「えー、別に特に勉強なんてしてないケド?…あ、でも魔法薬は趣味でよく作るヨ★」

だから得意〜☆なんて言えば

「…怪しげな薬作んないでくださいよ」

ん?僕はそんなに怪しげな行動に走りそうに見えるのかい?

…そんな感じに答えた時、苦笑いのアッシュの向こう側にふと見えた銀色の細糸。


人だかりに囲まれててあまり見えはしなかったけれど、わいわいと賑やかなあたり周りの生徒が口々に話し掛けているのは分かった。
どこの学校でも、初めの内は転校生は質問責めにあうもの。

珍しい光景でもなかった。
ましてや彼は相当な美形だ。
周りがほっとく訳もない。

ふと、そんな事を思っていたら先生がやって来た。

「おはよう。それじゃみんな席について」


朝のHR開始のチャイムをBGMに、それぞれの席へと散らばる生徒達。

……そう言えば、転校生の子。

さっき笑顔だったな、普通に。
まぁ遠目だったから作り笑顔かどうかも分かんなかったけれど…

僕と初めて喋った時はすっごい不機嫌だったのにネ。
う〜ん…なんだかよく分かんない子。

ま、イイや。

どうせ深く関わる事は無いだろうし…ネ。


「じゃあ、1時間目は2年次のカリキュラムの大まかな流れと選択教科について説明するからちゃんと聞くように」

話を聞き流しつつ少しだけ頭をチラつくあの、紅い瞳。

どうにも何かが引っ掛かってる。

昨日から。






「2年生からはそれぞれの選択教科に分かれてその分野についてより掘り下げた内容の授業を行う事になるから、くれぐれも気を抜かないように」


なんでカナ〜

他人の事なんて干渉しないし、滅多な事でも無ければ興味をあまり持たないのに、ネ。

「特に、上級魔法の実習も始まる訳で、下手をすれば大怪我に繋がる事態になりかねない…」

何にせよ、来る者拒まず、去る者追わずなスタンスである僕。


アッシュとか…魔女であるロキだとか…は、勿論ある程度信頼してる。

まぁロキは昔からの知り合いっていうのもあるからかもしれないけどねぇ…


「各自時間割りはしっかり把握しておくように。以上!」

チャイムと同時に1時間目のLHR(ロングホームルーム)が終わった。

ただ何とはなしに窓の外を見遣っていた僕はほとんど内容を聞いていなかったわけだけど…まぁ、新学期にはお決まりの内容だったっぽいし、大丈夫だろう。

授業の終わりの挨拶をし、ガタガタと席を立ち始める生徒やお喋りを始める生徒達。

んー…そう言えば時間割りまだ確認してなかったな。
今学期最初の授業なんだろ。

面倒そうなのだったら屋上でサボろうカナ〜

などと考えていたらアッシュと、同じクラスの睦月くんに話し掛けられた。

「スマイルくん、次の授業魔法史だよー」

「え、あー…そうだっけ?」

魔法史ね〜…あれ必修科目なんだケドつまらないんだよね。

先生の話最強に退屈で眠いし、去年も出席日数結構ギリギリ位まで出なかった気がする。

「…まさかサボろうとしてたんスか」

「ヒヒッ、まぁネ〜」

図星の問いに苦笑いで返したが、でも初っ端から欠席するとまた先生達が煩いしアレなので仕方なく出る事にした。

カバンを持ちみんな教室を出始める。

2年生になると移動教室も結構増えるのだ。


あ、そう言えば…


転校して来た子、次の教室の場所知らないよね。
なんせこの学校広いし厄介な事に迷路みたいな造りだし。

ツカツカとその子の前まで歩いていく。


「ねぇ、次の教室の場所分かんないデショ?ほら、一緒に行こう?」







あれ?




関わらないようにしようって思ってたばかりなのに、どうして僕は声掛けたんだろう…?





吸血鬼の君は、細めていた目を少し見開いて瞬きさせた。





[*前へ]

8/8ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!