出会いは突然にして必然…
急いで、裏門の方角へと向かったスミレを追い掛ける。
“ヤツ”とは…裏門を守る番人(人かどうかは今だに定かではない)みたいなものだ。
何しろ、ポップン学園は此処らでも一段と有名な、一応名門校なわけ。
音楽的に優れた才能を持っていて、『神』こと学園長に許可された者でなければ入学できないという裏話もあったり…これは秘密なんだけれど。
その上これだけ大規模な敷地内にある校舎と、神が隠し持っている財宝だの何だのの噂によって真偽を確かめようと、侵入を試みる不粋な命知らずもたくさん居る。
それら全てを多忙(多分…)な神が相手にする訳にもいかないし、学園内の平和を確保するためにも敷地全体に様々な防衛魔術が施されている。
裏門なんかは人目にあまり付かないし特に狙われやすいから、そうやって番人を置いて護らせているというわけ。
ただその番人なんだけど…少々難あり、って感じなんだよね…
だから来たばっかりの子なんかには特に……
「スマ!やっぱりスミレさんは裏門の方に居るみたいッスよー;」
人狼である彼は非常に鼻が利く。
まず間違いはないだろう。
「もう…本当早くもトラブルメーカー的なコトしてくれちゃって」
はぁ、と溜め息をつけば、
「まぁまぁ、笑った俺達も悪かったんスよ…怪我でもしてなきゃいいんですけど…」
「イヤ〜、いくら“アレ”でも生徒に怪我させるような真似しないと思うんだケド…」
「でもスミレさんは今日転入してきたばっかりで、顔を覚えられていないわけですし…」
「う〜ん、どっちかと言うと精神的ダメージの方が心配カナ…」
僕達も初めて見た時はかな〜り嫌な汗流れたからね…
「!…多分この棟の角曲がった所にスミレさんが居るッス!」
そこは裏門と、無駄に広い校庭(というかもはや草原?)を繋ぐ小道。
「オッケー……ぅわッ!」
「………っ…!?」
ドンッと。
走って行こうとした瞬間、と校舎の扉から出てきた誰かとぶつかった。
「…っタ〜、」
幸い、そんなに勢いがあったわけではなかったが、お互いにバランスを崩して転んでしまった。
「ゴメンゴメン。君、大丈夫?」
立ち上がり手を差し伸べる。
それと同時に、初めて見たその姿。
……銀色に輝く髪、まるで雪のような白く透き通った肌、スッと通った鼻筋…小柄で、折れそうな程細い身体。
その背中には紅い、蝙蝠のような羽根………ヴァンパイア?
俯かせていた顔を上げたその人。
その瞳もまた紅く、深い色を放ちルビーのようで。
それが今はびっくりしたせいか、もしくは痛かったせいかほんの少しだけ潤んでいて……
ぶつかる視線に、そのままの姿勢で動く事が出来ず数秒ほど硬直してしまった。
やがて開かれるその桃色の口唇から発せられたのは…
「…ば、」
…ば?
「馬鹿者!勢いよく走ってくるな!!」
…えー!?
「…貴様の手なんか借りなくとも、立てる」
まるで作り物のような、この世のものとは思えない程の美人はいきなりハードな罵声を浴びせてきた。
そして僕の手をパシッと振り払い、立ち上がる。
立っていても僕よりも背が低くて、やっぱりかなり華奢。
「…何を、ジロジロ見ている」
「わわっ、すみませんッス!スマっ急がないとスミレさんが…!!」
間に入ってきたアッシュにそう言われ、ハッと現状を思い出す。
「そうそう!急がなきゃッ!」
再び走り出す。
チラと後ろを振り返れば、僕達とは逆方向へと歩いている吸血鬼の背中…
なぜだか、僕はさっきの姿が目に焼き付いて離れずにいた。
ほんの、一瞬の出来事だったというのに。
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ヒロインやっと登場ですね←
スマ一瞬の間に色々見過ぎですね、はい。←
校舎は、何棟かに分かれていて、裏門は校舎を出て小道を通り過ぎた所にあります。
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