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断片的な意識




※ラスネール(我が家の緑スマ)が出てきます。
故にまずは2Pキャラ設定の方を見ていただけると少しは分かりやすいかと。←駄目じゃん
そしてなんかラス×スマっぽい要素なんかもありますがそれでもよろしい方はGO!!←









―――――――どうやら、この雨は当分止む気配も無い。

しばしの間、雨宿りをして足止めを喰らっていたけど、一向に弱まる気配のない天候に溜め息をひとつつき。

いつまでも待っていても仕方ない、これはもう濡れて帰るしか無いね。
心の中で呟き、もう一度空を見上げる。

…きっと彼が待ち惚けな頃だろうし。
城で自分の帰りを待っているであろう、彼のことを思い浮かべて思わず微笑んでしまう。

びしょ濡れで帰ったらきっと怒られるだろうなぁ…

そう思いながらまた彼のことをいつでも考えてしまう自分は相当な重症レベルだなと、改めて思いながら歩を進めて、降り注ぐ雨の中へと飛び出した。



どうせ走ったところでこの雨の降りようじゃあ意味も無いだろうと、歩き続けていた僕の視界の端に何かを捉えた。

ふと立ち止まり何の気も無しに水溜まりに目をやった瞬間、映った自分の姿にどこか違和感を感じる。


「…?」

気のせいか。

周りを見渡しても別段変わった所は見られない。

知らない間に疲れているのだろうかと、その場から目線を逸らした。

…さっさと帰ろう。
雨も止む気配が無いし、むしろ降り方が強くなってきたような気さえする。



…昔から雨は好きじゃない。

嫌いというわけではないのだけれど……
複雑な気持ち。

部屋の中に居て窓から眺める雨なら割と好きだったりするのだけど、こうして外に居る時に雨に降られたりすると少し憂鬱な気分になってしまうものだ。

それはきっと昔………「なに、ぼんやりしてるの」


「え?」


雨音だけが響く中で、突然の声に顔を上げれば。


そこに居たのは僕と同じ顔。

同じくらいの背格好。

でも明らかに、決定的に違うのは














緑色をした髪に、包帯の巻かれていない、曝された金の左目。



「……!?」

「ひどく、驚いてるみたいだねぇ…」

自分と同じ顔をしたソイツはどこか楽しそうに、笑みを作りこちらを見遣る。

「まさか、ボクのこと忘れた訳じゃ無いよね?」

僕よりも少しだけ細い声をしたソイツは、にんまりと笑って言った。

同じ顔の筈なのに、作り出す表情は何故だか違って見える。
それは決して僕の思い込みなどでは無いだろう。

「…嫌でも、覚えてるに決まってるじゃない。……ラスネール」



目の前のソイツは、より一層笑みを深くした。


「…忘れないで居てくれて、アリガトウ」


じいっと、眺め回すように見てくる瞳は自分と同じ筈なのにやけに冷たく感じて、嫌な汗が額を伝った。

実際の所、雨に打たれていた僕には水滴か汗なのかさえも分からなかったのだけれど。

「今更僕に何の用だい?」

「ヘェ、随分と冷たい事言うねぇ…せっかく、わざわざ出向いて来たっていうのにさ」

「別に頼んでもないよ。」

そう言えば、ラスネールはひどくつまらなそうな顔になる。

「もうちょっと歓迎してくれたっていいじゃない…」

が、またすぐにふざけたような笑みに顔を戻す。

やっぱり同じようでいても別物、いくら顔が同じでもまるで僕じゃない。


「真似るならさ、もっと上手くやりなヨ。だってお前の笑い方は僕のとはちょっと違うもの」

「…別に、真似してるつもりなんて無いけど?」

それに、と付け加えるラスネール

「君はスマイルで、ボクもスマイルでしょう?」

ニヤッと口元を歪めて弧を描く表情に、やけに寒気が走った。

「お前は僕じゃないヨ」

「元は同じじゃない。だってボクは君から生まれたんだもの。あの日の出来事がきっかけで、ね……」

思い出したくも無い、過去の記憶。
最近では考えることもほとんど無かった筈なのに、今でもあの日の情景が脳裏に鮮明に蘇ってくる。

「でもお前はラスネールだ。スマイルじゃない。スマイルは僕一人だけだヨ…」

「そうだね、じゃあさ仮にボクをラスネールとしよう。でもラスネールは君自身の心が生み出した存在であって、君とボクとは紙一重なんだ。違う?」

「…随分と、執着するねぇ」

僕にとっては、あの日の出来事は思い出したくないこと。
それなのに、目の前のコイツのせいでわざわざ記憶の奥底から掘り起こされて腹立たしい。

「生憎、僕は急いでいるんだ。また、今度にしてくれない?」

この場に居たくない、雨のせいだけではなくこの嫌な感じ…
早くユーリの元へ帰ろう。

でも、立ち去ろうとした僕の袖をラスネールが引っ張る。


「待ってよ。…どうせ、僕から訪ねなかったら会いにも来るつもりなんて無い癖に」

一瞬だけ哀しげな表情を見せたソイツは、それでも見られたくなかったのか、すぐにまた感情を悟らせないかのような作り笑顔に戻る。
なんとも、憎たらしいことこの上無い。

「…」

「どうして、そんなに避けようとするの?」

「ナニが?」

意味がわからなくて、聞き返す。

「幼い頃はさ、君を守ってあげたじゃない。君にとって僕は何?」

「それは…そうかもしれないけど、でも同時に君は僕のことを壊そうとしたのに」

「壊そうとなんてしてないよ。ボクなりの愛情表現でしょう?」


「それはとんだ悪趣味だネ…」

姿形、瓜二つの僕らが対峙している様子はさながら鏡に映っている実像と虚像。

否…、この場合どちらも実像であり虚像に過ぎないのかもしれない。

透明人間という、存在は。




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