重なり始める現実と
「僕はいつだって、ユーリの傍に居たじゃない」
優しい、その笑顔は。
いつも通りな筈なのに、あまりにも優し過ぎてどこか、悲しい……
「それは分かってる。そうじゃなくて…」
答えてくれ、スマ。
そして何時ものように言ってほしい。
―――僕は、ユーリの事ずっと離さないからネ★…これからも一緒だヨ――――
普段なら照れ隠しでそうか。などと一言であしらっていた言葉も、今聞いたなら、きっと素直に返せる気がした…………………のに。
何故、俯いたままの貴方は、思い詰めた様な表情をしているのだろう…?
「これからも、」
紡ごうとした私の言葉は、口唇に触れたスマの指によって遮られた。
「ううん、ユーリ…それは、できないヨ」
「…………何故?…やっぱり私が、不死だからとでも…?」
スマのあまりにも予想外の発言に面食らった。
彼の表情に、どこか微かな翳りが見えた気がして。
「そう、だね、うん。それもある。でももっと違うコト。もっとどうにもできない事があったんだ」
「それは………?」
少し、躊躇しながら話し始める彼。
「思い出したんだ。こんな事、ずっと思い出さなきゃよかったのに…」
その、スマの哀しげに光る瞳を見た瞬間に、私は先程からの嫌な予感の理由。
その全てを悟ってしまったのだ。
耳を、塞ぎたくなった。
聞きたく、なかった……………………
「僕、もう死んでいたんだった……」
「…ッ…………!!!」
それはズシリと、心の底に重たいものが落とされた感覚
「出来れば、思い出さずに居たかったよ……消えてしまう事なんて」
「そんな、そんなの……嘘だ!!!」
いつもの様に…「 」と。
そう、言ってほしかったのに……
「嘘だったらよかったのに…ゴメンネ…僕、さっきまで生きてたのに。数時間前まで生きてたのに、帰ってくる頃はもう、寒かったんだ。」
「おまえはッ…!!死んでなどいないっ、消えたりしない!!さっきだって…触れる事ができた、のに………」
そう、思わず叫ぶように捲くし立てる。
認めたくないから。
これは、嘘。
お願いだから嘘だと、言ってほしい…
手を伸ばしたスマイルの顔は、ちゃんとそこにある。
触れる事だってできるのに…どうして、こんなにも冷たいのだろう…?
まるで、もう血が通っていないかのように冷えた彼の頬をなぞる。
ブレ始めた視界に映る輪郭を、確かめるように。
いつまでもこうして居られたなら…
このまま、彼に触れていたかった。
彼を、閉じ込められたらどんなに……
ひやりとした感触をそっと包み込むように、温めるように…抱き締めた筈の彼の身体。
でも
それはすぐに叶わぬ夢となる。
残酷にも私達を引き離す、死という概念から逃れる術は無かった。
縋るように伸ばしていた私の腕は、彼の身体を擦り抜けた。
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