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気付きたくない予想




「まぁ、その話はもういい。とにかく風邪で寝込まれたりなんかしては面倒だ。髪を乾かしたらどうだ」

そう言い、困惑しているであろう自分の心理を悟られぬよう、できる限りさりげなく。
話題を逸らす私。

「面倒だとか言いながら、ユーリったら僕のこと心配してくれてるんだネ★」

「…ドライヤーを、投げてもいいのだが」

手に持ったドライヤーを、投げの構えに変える。


「わー、分かった分かった!危ないからそれはダメ〜!」

慌てて身振り手振りするスマの様子に、いつもと何ら変わった所は無いのに……

どこか距離を感じるのは私がおかしい?
それとも……



そういえば、スマが忘れているもの……なんなのだ………


考える内に私は、ある推測をしてしまった。

これ程までに予想がはずれてほしいと、思った事はない。
何故、こんなにも……恐怖しているのだろう…?

ただただ、何かに怯えるかのようにじっと動けないでいた。


すぐ近くにある鏡の前で、スマが温風で髪を乾かす、その音だけを聞き続けていた……――――――――――




「ふぅ、完了、完了ー★」
いつもの調子で戻ってきた彼。


でも私は、未だに胸に引っ掛かるトゲのような…すっきりとしない気持ちを隠せずに。

でもスマにその話をする事はできない、してはいけない。
“その予想”を話してしまったら、何かが終わってしまうと思った。


もどかしい…


こんな時、スマだったら逆にどうするのだろう。
そう考えた。

スマ、だったら…………

「……どうしようもなく不安を抱えているのに、それを相手に話してはいけない事なのだと悟った時、どうする?」


「………え?」

「スマなら…どうする?」

聞いてはいけない筈なのに、押し寄せる恐怖の波。
それが言葉を零れ出させた。

「んー、そう、だねぇ…………その時によるんじゃナイ?」

「…………」

「相手は、きっと自分が話すのを待ってくれているんだろうな。って、そう思ったら話すヨ。それは隠したりできない位重要な事だろうから」

「ふふっ…おまえらしいな……」

何故だか、目頭が熱くなって。


「スマイル…どうか…消えないでくれ…」

今、確かに目の前に居る筈なのにどこか…遠くへ行ってしまいそうな彼へ。


「嫌な予感がするのだ。スマを、失いたくない…」

誰にも、渡さない。
渡したくない。


さっきから想像の中で介間見える、悪夢。
ただの考え過ぎだと、嫌な予感なんてその時の思い違いに過ぎないのだと。

そう、安心させて、ほしかったのかもしれない。
お調子者でひょうきんで優しい…スマの笑顔で。



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