少しの不安
ちょっと、買い物〜!すぐに戻るからネ☆
そう言って、城を出たスマイルが帰ってこない。
かれこれ3時間。
いや、別に帰ってこないから心配しているとかではなくて。
まさかそんな笑ってしまう程にお子様な年ではないのだし、お互いに……
この際、苦笑気味なその話題は置いておくとしよう。
そうではないのだ。
何やら、雲行きが怪しくなってきた。
これからいかにも雨の降り出しそうな天候である。
どうにも、雨の日というのは気分を憂欝にさせるものだ。
雨の苦手な私とスマイル。
彼は、傘を持たずに出て行ったから。
ただ、それだけの事だ。
―――――……それから30分程経っただろうか。
窓の外を見遣ればやはり、ザァザァと響き渡る音と共に。
雨の降る景色。
あぁ、やはりか
と、私は心の中で天に向かって毒付く。
こんな雨の日に、ひとりで居るのはとても退屈で、なんだか気が滅入ってしまう。
何故かは分からないが、やはり雨というものは好きにはなれないな。
静かな空間に、ただ降り続く水滴の音だけしか聞こえていないと、今、この世界には自分ひとりしか居ないのではないだろうか。
そんな馬鹿げたことはある筈が無いのに、後ろ向きな思想が脳裏を過ぎってしまうのだ。
雨に対する、トラウマ。
孤独感が押し寄せてきて、どうにも居たたまれない気分になる。
無性に、あの透明人間が早く帰ってこないかな…なんて思った。
迎えにでもいこうか、しかしこれだけの雨ではもう既にずぶ濡れかもしれないし……
それに、「ユーリちゃん迎えに来てくれたの?僕って愛されてるなぁ〜☆」等と言いかねないスマイルの顔を思い浮かべてしまったら、なんとなく恥ずかしいというか、悔しいというか。
彼に本当は早く会いたいし、そういったいかにも彼が言いそうな台詞を聞くのも嬉しいのだけど…
そんな事を考えて、大人しく待つことにした。
焦らなくとも、もうじき帰ってくる頃だろう。
そう思い直してまた椅子に座った。
いつもとは違う、何故だか分からない嫌な予感がした事は深く考えないようにして。
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