Eenie,meenie,miney,mo;
ヒャッホイと小躍りをしたくなった先週の自分。
ダミだこりゃと諦めの境地な今週の自分。
トキメキを返せ!とは言わないけどさ。
Eenie meenie miney mo
先週、転校生がやって来た。正確には先々週の土曜の放課後にはいたが、授業に出始めたのは月曜なので、取りあえず先週。
その前に、まずは不要だとは思うがやっぱりこの学園の説明から。
山の奥深くに隔離されるように存在するこの学園は、所謂王道学園。
ブルジョワ、セレブ。この国を支えるトップ達のご子息御用達の学園。何かと危険な目に会いやすい彼らを守るため、辺鄙な山奥にある。
そんなここは、勿論全寮制の男子校。
思春期の男どもを一ヶ所に集め隔離なんぞしたらどうなることか。結果は火を見るよりも明らかだろう。
同性愛。
男だけの空間で、いつの間にか恋愛感情が同性に向かう者。性欲発散させるために同性に走る者。そして、それ目当てに入学してくる生粋の者等々。
異性愛者もいるにはいるのだが。外の世界とは逆で、え?お前、そうなの?とむしろ奇異の目で見られるそんな世界。
そして、男だろうが女だろうがもてはやされるのは顔が良かったり、能力があったり、はたまた家名のある者だったり。
学園を代表する生徒会はその中でもずば抜けて人気のある者たちで構成されている。選出方法は言うまでもなく抱きたい抱かれたいランキング。
トップ入りした者が即生徒会。というわけでもないのだが、大体はランキング通りのメンバー構成
人気者、ということはすなわち、素敵!格好いい!お近づきになりたい!と憧れているファンのような者たちがいるということで。ファンクラブ、改め親衛隊と呼ばれる集まりが存在する。
活動内容はファンの集い、通称お茶会での情報交換や萌語り。交代での差し入れや、生徒会業務の忙しい時には手伝いなど。
入隊動機としてはごくごく普通に憧れる。お慕いしている。他には軽く部活動的なノリなり、稀に純粋に仕事の手伝いがしたいという者も。
制裁などという物騒なものは、ついこの前までは存在していなかった。
そう、この前までは。
話は一旦戻るが、転校生がやって来た。
土曜日にやって来たその転校生は、よしよくやったと言いたくなる怒濤の展開を見せた。
案内に来た副会長を落とし、同室の一匹狼不良と親しくなり、いつの間にか校内でも有名な爽やか君とも接触していた。
月曜に初授業に出た際は、隣の席の目立たない平凡君を友達認定。その昼にあの有名な食堂イベント。
月曜の昼にずれ込んだのは、どうやらそれまで部屋で自炊をしていたらしい。弁当作ってこなくてよかったね。
食堂では当然、副会長が引き連れてきた生徒会メンバーと接触。全員に興味を持たれるという偉業を成し遂げた。
まぁ、ね。展開としては微妙に違ったけど。
会長、キスしてないし。チャラいっつかユルい会計はセフレなんかいないっぽいし。それでも、フラグはしっかり立てたからO.K.
授業にはきちんと出ているけれど、それ以外の時間はほぼ一緒に過ごしている。そんな姿を目にした親衛隊に戸惑いと動揺が走り、お呼び出しが始まるのにたいして時間はかからなかった。
とは言え、転校生君自身が呼び出されたのは最初の数回のみ。後は友達認定された平凡君が代理扱いで呼び出されている。
今はまだ忠告だけですんでいるけれど、中には殺気だった所もあったので、暴力行為に発展するのも時間の問題だろう。
暴力はいかん。
いじめもいかん。
けれど話の流れとしては必需品で。実際に身近で王道展開を見れるのはよっしゃっ!といったとこなのだけど。どうしてもそこがネックになる。
でもね、テンションはだだ上がり。
だって、だって。
「その巻き込まれ平凡ポジが自分だから、all O.K.」
―――んなわけあるかボケ
親指グッと立てて満面の笑みを浮かべれば、携帯の向こうからドスのきいた声が聞こえる。
「えー何で?だって、他人様が辛い目にあってるの端で見てて楽しんでりゃそりゃ確かに非道徳的だしさ。実際そうなりゃ萎えちゃって全然楽しめないかもだけど。でも、そのポジが自分なんだから別にいーじゃん。全くもって辛くないしー」
―――そういう問題じゃねぇんだよ。親衛隊が暴れりゃ学校が荒れんだよ。現に空気ギスギスしてるっつーの
「あは。オレの心配はなし?」
―――てめえの心配なんぞするわきゃねぇだろダアホ
むしろ良い気味だと鼻をならすのが聞こえた。冷たいなぁ。つれないなぁ。
―――で?今回はどこだ?
「副会長んトコ。そろそろヤバイかもね。かなりキてる。ヤバイね。どうしよう。オレ、ボコられちゃうかも。強姦されちゃうかも」
―――一度、痛い目見とけこの変態。つか、生まれ変わって人生やり直してこいや
「あはは、まさかの死亡フラグ!転生ものはあんま読んでないからなぁ」
壁に寄りかかりどさりと腰を下ろす。ここは人気のない体育館裏。先程までは副会長の親衛隊が何人かいて、あまり穏やかではない話をしていた。
お呼びだしのお手紙には、誰にも言わず一人で来るようにあった。でも、終わってからの口止めはなかったので、毎回こうやってお友達にご報告させてもらっている。
「まーあ、巻き込まれた平凡君が制裁受けてるとこに風紀委員長なり一匹狼なり助けに来るのもおいしいよねー」
―――………今度呼び出されたら、教えろよ
おや?
―――辺り一帯、人払いしといてやんぜ
あれ?幻覚かな?なんかめっさ良い笑顔が見える。
「………愛が痛いよDarling」
「地獄に堕ちろよHoney」
ひとしきり話終えて、携帯を仕舞ってから大きくのびをする。天気も良いしこのまま昼寝したいなー。でも、最近BL観察できてないからなぁ。
萌え補給は足りてんだけど。テンションは高いんだけど。
でもなぁ。
黙って抜けてきたから、きっと今ごろ転校生君はオレを探している。戻った方が良いとは思うけど、気乗りしない。
テンション?もちろん高いよ。てか高くしなきゃやってらんないんだよ。
袖を捲れば手首にうっすらとついたアザ。転校生君が遠慮なしに引っ張るものだから跡が残った。まぁ、初めて見た時は感動したけど。
どうも王道は王道でもアンチっぽいのだ。同室狼くん、うっすらと隈できてたし。
…あぁ、風紀委員長×不良もいい。
別にアンチが嫌なわけではない。それはそれでおいしい。別カプ成立するし。
ただ最初の期待が。裏切られた感が。やる気をなくす。
どうしよっかな。
このままアンチ街道爆走か。非止まりか。更生させて王道に戻すか。
あんまり積極的に動きたくはないんだけど。選択肢はいくつかあるわけで。
どれにしよ。
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