■Lightning
「Thunderbolt」別視点の話。
あの猫被りがとうとうぶちギレました。
どうしましょう!
場所は昼食時の学食。先月やって来た転校生と、その取り巻き達が昼食をとっている最中。
会長と付き合っているのだと公言して憚らない転校生が、会長にいわゆるあーんをして食べさせる姿は、ここ最近の日常風景になっている。
でも待って。俺様だとか偉そうだとか言われてるけど、たぶん会長サマそんなんじゃないから!きっと転校生に惚れてなんかないよ。よくわからないまま流されてるだけだって、あの人。
そんなことを考えながら、つるつるうどんを啜る。いやぁ、ここのうどんはうまいんだって。まさに天下一品!
うどんのうまさに舌鼓を打ち。注目の的の転校生たちを観察していると、我らが副会長様の登・場!雷がゴロゴロピッシャーンッ!そして始まる口撃、口撃、口撃!聞いてて胸がスカッとするね。うどんの喉ごしはツルッとがいいね。
猫被りが猫がなぐり捨てたから、皆呆気にとられてるよ。こっちが本性なんだけどねぇ。いざこざ巻き込まれるの嫌がって猫被って結果副会長だもん。爆笑もんよ。笑ったらぶん殴られたけど。
にしても、今さらどうしたのかねぇ。目障りだなんだ言ってたけど、直接の害はないから放置の方針だったくせに。全体的に仕事遅れてるっても、奴んとこには皺寄せ来てないし。
害を被ってるのは別の人〜。
って、あーあーその本人が泣き出しちゃったよ。表情変えず、嗚咽も漏らさずただボロボロと。ショックだったんだねぇ。そりゃそたうだよねぇ。頑張ってたんだから。
知ってるよー。会長が一人で他役員(副会長以外)の仕事肩代わりしてたのは。委員会や部活に提出される書類のサインがことごとく会長のになってたもの。あいつは他人に興味ないから気づいてなかったけど。
昼間は転校生に引きずり回され、合間をぬって生徒会の仕事や授業の予習復習。本人自覚ないだろうけど、精神的にかなり参ってたはずだもの。天才型と思われてるけど、努力型よあの人。その努力を徹底的に人目につかないようやってるだけで。
え?何で知ってるかって?それわぁ、企業秘密ぅー。
あ、会長泣き止んだ。
ビックリし過ぎて泣き止んだ。わっかりやすぅー。そんな状況をうどん啜りながらのほほんと眺める。いやだって、他人事だもの。関係ないものー。
って、うわぁ。きしょい。何あれきしょい。何あれ。誰。オレの知らない人?ちょっ、鳥肌たった。鶏肉好きだけど自分がなるのは勘弁よ。
うわぁ。うわぁ。何で会長あんなキラキラしい目で見てんの?えぇ〜?うそ〜ん。会長騙されちゃダメよ。それ、そんな良い奴じゃないんだかんね。
てか本当、お前誰よ。そんなキャラじゃないでしょうに。そんな、照れて視界隠すとか。相手オレだったら容赦なく殴り飛ばすでしょうに。他の奴なら笑顔の裏でせせら笑うでしょうに。
お。役員ども勇者。よくぞあの甘ったるい空気に声をかけてくれた。言ってることは的はずれもいいとこだが、その勇気だけは讃えてしんぜよう。
だって、なぁ?オレは知ってるよ。あんたらが仕事してなかったの。嘘ついてだまくらかして、会長に仕事押しつけてるでしょ?知ってんだから。それでその主張は、厚顔無恥にも程があるよねぇ。まぁ、関係ないけどー。
あは。一睨みで押し黙るとか。やだ皆様チキン?そして会長かわい。裾ひっぱるとか。的確にポイントとるな。あれ、天然なんだぜ。何であれで俺様とか勘違いされてんのかね。
口下手だからですね。知ってます。
会長、騙されてる。それ騙されてるよー。出来上がった書類なんて元々ないって。会長は書類なくしてないよー。
てかあれか?もしかしなくともあれなのか?いきなりぶちギレたのは役員どもが会長に仕事押し付けてるの知ったからなのか?確か今日風紀に用あるって言ってたし、そこで知ったんだろうねぇ。
おーおー。転校生、無謀にも程があるぞ。今のやり取り見てなかったんかね。一睨みで数人黙らせるような奴よ。叶うわけないって。
お。会長が口開いた。
あはは。役員ども気まずそうに顔そらした。そらそうよね。耳に痛いよね。誇りも何もなく押しつけてサボってたんだから。
って、うわっ。やっべ。腹筋よじれる。流されてるだけと思ってたらまさかまさか。会長、転校生が自分のこと恋人だと思ってるの気づいてなかったよ。
うっわ。転校生、赤っ恥。はずかしー。
はぁー。あー笑った笑った。これ以上ないってほど笑った。いーもん見せてもらったわー。
ツルンと最後の一本を吸い込んで、はいごちそうさま。よく見りゃあいつが来たあたりから食堂の中の連中、食事の手が止まってるけど、大丈夫かね。ま、オレには関係ない。関係なーい。
あいつはなんか楽しそうにしてるし、会長は………会長。その体勢はヤバイ。腹に顔押し付けるとか。それ、下半身にクるって。てか、耳まで真っ赤。
あー、ま。いっか。トレイをカウンターに返して、ほい、さよなら。
ルンタルンタと人気のない廊下を進むと、前方によぉく見知った姿が見えた。やだ。ダーリンじゃないの。
「おぉ〜い」
「うわぁ」
うわぁて。やだ。ダーリンたら。そんなに嫌がらなくても良いじゃない。虫でも見つけたみたいにさ。
「お前何で………何でいんだよ」
「えー?何でって、お昼食べてたに決まってるじゃない。ダーリン今からお昼?」
「誰がダーリンだよ。寄るなって」
あはは。んなに毛嫌いしなくても良いのに。
「食堂、今混沌としてるけど食堂に用?」
「副会長が食堂向かって飛び出してったんだよ。会長ばっか仕事してるの知らなかったみたいで。………だから寄るなってば」
ふむふむ。やっぱりそうだったのか。納得しながら電光石火の速さでガッチリとダーリンの腕に抱きつく。誰もいないんだからいいじゃない。え?そういう問題じゃない?固いこと言いっこなしよ。
「それなら大丈夫。もうケリついたから。風紀委員長の出番はなし。だからデートでもしましょ?そうしましょ」
「やだよ。何でだよ。離れろってば」
つれないなぁ。でもそんなんで離れるわけないじゃないの。
「ダーリンお昼もう済ませた?何なら食べさせてあげようか?」
「やだってば。何なの。もー離せよ」
「えー?何って、かわいいハニーでしょ?ダーリン」
「お前……お前本当に……もーやだ」
あはは。おもしろいなぁ。ダーリンは。これだからからかうのやめらんないよ。
え?性格悪い?しょーがないよ。だってあの猫被りの友達やってんだもん。性格悪いのうつるって。
もう猫被るのやめたみたいだけど。
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