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■がぶり
生徒会役員に保護されている会長の話。
双子弟視点。




「あ、会長だ〜」
「会長発見〜」

 廊下の先に見つけた会長の姿。相方と一緒にいざ突撃。

「うぉっ」
「会長おはよ〜」
「今から生徒会室?」

 体当たりする勢いで抱きついたから、苦しそうな声が聞こえた。横にいたちっちゃな先輩(書記)が嫌そうな顔してるけど、気にしない、気にしな〜い。

「一緒に行こ〜」
「んでもって遊んで〜」
「仕事しなきゃダメだろ?」

 会長がキョトンと首をかしげる。相方と視線を合わせ、笑みを深めてからもう一度見上げた。

「じゃあ、仕事終わったら遊んで〜」
「大富豪やろーよ」
「二人ともトランプ好きだなぁ。そして相変わらずそっくりだなぁ」
「ふふふー良いでしょ〜」
「双子だもんねー」
「ねー」

 楽しそうだなぁと笑う会長。

 だって楽しいもんねと、相方と声を揃える。

 アイデンティティーを模索していた頃、見た目だけならそっくりな相方が嫌で、分かりやすく違う格好をしたりしていた。

 でも会長が双子なのに似てない!せっかく双子なのに!とショックを受けた。そこではたと閃いた。

 そうかせっかくなのかと。双子などそこらへんいるものでもない。ならばそれを嫌がらずに楽しんでしまえと。相方とハイタッチしたのはその時が初めてだった。

「ちっちゃい先輩も一緒にやろ〜」
「人数多い方が楽しいし〜」
「ちっちゃい言うな!」
「え〜?だってちっちゃいじゃんねぇ?」
「会長もそう思うよねぇ?」
「小型犬みたいでかわいい」

 重々しく頷いた会長が、ちっちゃい先輩の頭を撫でる。途端にちっちゃい先輩は嬉しそうに頬を染めて口をつぐんだ。

 ふぅ〜ん。そういう態度とるんだ〜。いいけどねぇ。

「か―――」
「会長!」

 単純なちっちゃい先輩をからかおうかと口を開きかけたら、別の声が割り込んできた。それに少しだけムッとして、振り返る。

 相方がこっそり苦笑したが目に入ったけど、気づかないふり〜。それより、声の主だよ。今、大事なのは。

「あ、副会長だ〜」
「般若みたいな形相してる〜」

 ビスクドールの様だと形容されるお綺麗な顔を、これでもかと言うほどに歪ませた副会長が登場した。

 何かやけに必死な様子がウケる。

「会長!今すぐ逃げてください!」
「………は?」

 あ、やべ。怒られる。

 そう思ったのだろう会長は、すぐに回れ右して逃げようとした。でも副会長の言葉に足を止めて首をかしげる。

 普段、会長を甘やかしてる副会長が怒るのは何かをやらかした時だけ。飴と鞭の差がすごい。だから会長は怒られそうになるとすぐ逃げる。

 まぁ?僕らはしょっちゅう怒られてて、飴もらった記憶なんてないけど。

「早く!奴が……奴が来る!」
「奴?」

 訳がわからないとさらに首をかしげる会長。でも僕らはわかっちゃった。何を言ってるのか。

 相方と顔を見合わせて、ふぅと大げさにため息をつく。

「副会長、残念〜」
「もう、来ちゃったよ〜」
「よぉ、生徒会が廊下に勢揃いして何やってんだ?あ?」

 あくどい笑顔を浮かべた生徒会の天敵、その名も風紀委員長。

 さっと振り返った副会長が、背後に会長を隠して睨み付ける。まぁ、会長の方が背高いから隠しきれてないけど、言ったらかわいそうだよね。

 むしろ尻尾をピンと立たせて威嚇してるちっちゃい先輩の方が隠れちゃってるし。

「ん?そいつ、生徒会長サマか?」
「貴方には関係ありません」
「大有りだろぉがよ」

 はんっと委員長が鼻で笑った。
 気持ちはわかるけどねぇ〜。だって生徒会と風紀委員だよ。関係ないわけないじゃんね。むしろよく今まで会わずにこれたよね。

 副会長が接触しないよう手を回してたし、委員長自身が会議サボってるしね。

 トップが仕事サボるんだから風紀の方が合ってそうだけど、でもそうすると会長と遊べなくなっちゃう。やっぱ生徒会でいいや。

 で、その会長はというと。

「あいつが風紀委員長なのか?」
「会長。大丈夫。気にしなくていい」
「ごめん。意味がわからない………気にしなきゃダメじゃないか?」

 こそこそとちっちゃい先輩と話してた。好奇心のまま委員長に話しかけようとする会長を、ちっちゃい先輩は一生懸命止めようとしている。

 傍観してたらちっちゃい先輩と目が合った。

 このまま放置してても楽しそうだけど、貸しを作っとくのもいいよね〜。相方と顔を見合わせて、会長を両サイドから挟み込む。

「会長〜早く生徒会室行こ〜」
「そうそう、大富豪しよ〜」
「大富豪は仕事の後だろ?それより、あいつに挨拶しないと」

 生徒会室に強制連行〜。ついでなちっちゃい先輩の腕も引っ張って。委員長は副会長に丸投げ!

「ダメダメ〜」
「学園のツートップはきちんと正式な場で顔合わせしないと〜」
「そうなのか?」
「そうそう」
「だからここで挨拶しちゃメッ」
「う〜ん…そうだっけかなぁ…?」

 悩むのも無理はない。なんたって口からでまかせだもんね。それにしても、やけに名残惜しそうに振り返ってるのが気になるなぁ。

 目線で相方を促す。心得てる相方は小さく頷くと口を開いた。

「何〜?会長、委員長気になるの〜?」
「んー?何か次郎丸に似てて」
「次郎丸?」
「ハスキー。実家の」

 ぶっと吹き出しそうになったのをこらえる。見れば相方も顔をそらして笑いを耐えていた。

 確かにねぇ、髪色は同じだし怖い顔つきだから似てるっちゃ似てるけど。あの風紀委員長を犬扱いとは!

「会長。いくら次郎丸に似てても、委員長には近づいちゃダメだよ?」
「そうそう。野良犬だから。噛まれたら狂犬病になっちゃうよ〜」
「………噛むのか?」
「噛むよ〜」
「会長なんか、かぷっとやられちゃうよ〜」
「そっか」

 納得しちゃったよ会長。あの髪撫でたいなーとかいってるけど。

「会長〜?危ないから一人きりで近づいちゃダメだかんね」
「てか、できるだけ近づいちゃダメだよ〜?」
「ん?んー…」
「会長。返事は?」
「は〜い?」
「よろしい」

 釈然としない様子だけど、返事をしたから良しとしよう。

 何か静かだなと思ってちっちゃい先輩の方を見ると、顔を伏せて黙々とついてきていた。

「どっかしたの〜?ちっちゃい先輩」
「っ………い、いつまで、手を…」
「んー?生徒会室まで〜?」

 ばっと顔を上げたちっちゃい先輩は眉間にシワを寄せている。面白い顔〜。視界の隅に映る相方が軽く笑ってるけど、気分がいいから気にしな〜い。

 右手に会長。左手にちっちゃい先輩で両手に花?





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あきゅろす。
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