オマケ・友達
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欲しい物と言うか気になる物と言うかがあるんだけど、よくわかららなくてどうすればいいかなと相談してみた。
悟は自分に合ったものを選べば良いと言い、トメはオレに聞くなと言った。東子さんは自分もよくわからないからと謝り、サエには訊くだけ無駄なので訊いてない。
バイト仲間には何となく訊けない。バカにされるとかはないだろうけど、本当に、何となく。師匠はタイミングが悪かった。変にテンションが高い時だったから、まともな返事をもらえてない。
シキにも訊いてみようかと思い、その前に椿に会ったから話してみた。そしたら、探すのに付き合うと言ってくれた。
うわぁいと喜び、その日はオレも椿も用があるからまた後日約束をした。めずらしく椿が待ち合わせ場所と時間を指定し、向かった先にはなぜかサエもいた。
二人でベンチに並んで座っている。
しかもなぜか手を繋いで。いや。繋いではない。サエが椿の手首握ってる。何してんだろ。
サエに訊いて、まともな答えが返ってくる方が少ない。それはわかってたけど、椿まで見ればわかることしか教えてくれないとは。
言いたくないのかな。それなら仕方がないけど。具合悪いとか、どの程度の信憑性なのだろう。何か、色々と、気になる、けど。
サエの制服姿のインパクトに比べたら、ねぇ。違和感しかないんだよな。罰ゲームにしか見えない。女装的な。だって、ずっとサエのこと男だと思ってたし。初めて制服姿見たとき、どんな羞恥プレイなのかと。
まぁ、それはおいといて。
サエを見送ってから、椿と本屋に向かう。本屋って、あんまり来ないから物珍しいんだよね。すいすい進む椿についていく。目当ての学参売り場にはすぐついた。
何回か、自分で見てみたけどさっぱりわからなくて。合うものを選べば良いと言われても、どれが自分に合うのかがわからない。
「………高校の勉強がしたいんだっけ?」
「うん」
「一年辺りからで良いの?ならここら辺から始まるけど」
「……………」
渡された参考書を開いてみる。とても日本語には見えない。
「そっちは説明多いけど、こっちは問題が多いみたい。暗記ならここら辺にあるやつとかかな?数学は……」
「………椿」
「うん?」
「頭、パンクしそう」
不思議そうに首を傾げた椿が、次いで申し訳なさそうな表情になる。せっかくすすめといてもらって何だけど、でもじっくり読んでも理解できる自信がない。
「ごめん。つい…ちょっと、楽しくなっちゃって」
「ううん。オレこそごめんね。てか前も思ったけど椿って勉強好きなの?」
「好きって言うか……とりあえず科学は楽しいよ」
オレの手から参考書を受け取って、中をパラパラと捲り軽く目を通す。それから棚に戻した。
「ほら、師田先生。文化祭の時の」
「ん?うん」
「担当が科学で。結構面白いんだ」
「そうなんだ?」
「うん。………最終的に高校卒業程度として、スタートはどこら辺が良い?」
棚からこちらに視線を戻す。どこ。どこからだろうか。と言うか、今のオレの学力はどの程度なのだろう。
「ち、中……小……中……………小学校?」
「いきなり全教科は大変だよね。一科目に絞る?まずは習慣作った方が良いだろうし」
そう、言いながら椿は場所を移動し始めた。少し呆気にとられて、それから慌てて後をついていく。
「え?それだけ?」
「ん?」
「何かもう少しあるかと思った」
「………?あぁ、だってほら。サエさんの周り、色んな人がいるから」
「あ、そっか」
直接会ったことはないけど、それは知っている。クリスマス手伝いに行ったって言ってたし、多少の関わりがあるのか。なら、納得かな?あまり、椿の出入りするような場所には思えないけど、サエがいるなら平気だろうし。
あ、そうだ。
「そう言えば、椿はイチって知ってる?」
「………何で?」
首を傾げた椿が、じっと見上げてくる。
「や、ちょっと興味あって」
「サエさんは何て?」
「笑うだけで教えてくれない」
「じゃあ、オレからは何も言えないな」
あまりにもあっさりとして簡潔な答え。
「ヤエ、どの科目をやりたい?」
「え?あ、どれだろう?」
もう少しつっこんで訊いてみようとしたら、椿が足を止めて棚を見上げた。つられるようにして見れば、先程より低年齢向けのコーナーだった。
「目的があった方が頑張れると思うけど……何かある?」
「何か」
「ニュースに詳しくなりたいとか、旅行したいとか、実験したいとか……料理好きなら家庭科とか?」
家庭科。そうかそれも勉強の対象になるのか。
「あ、あれ読みたい」
「ん?」
「あれ。沙羅双樹の花の色」
「平家物語?」
「うん」
「じゃあ、国語だね。語彙とか読解なら中学レベルからでも平気なんじゃない?」
そう言って、来た道を少し戻る。
「ここら辺か」
「色々あるね」
「うん。まず覚えて理解したいならそこら辺かな?とにかく問題解いてみてわからなかったら説明、なら問題集だし」
「これは?」
何となく目についた一冊を手にしてみる。椿が横から覗き込んできた。
「……一通りのが載ってるね」
「じゃあこれにしてみようかな」
バラバラの買うより、お得な感じがするし。そう思って椿を見ると僅かに首をかしげてた。
「ダメ?」
「ううん。てか、使うのヤエだし」
「いや、そうだけどさ」
何か不安になるじゃない。
「ただちょっと、何冊か見比べてみた方が良いんじゃないかなって」
「そう?同じじゃないの?」
「少しずつ違うよ」
そんなもんなのだろうか。
とりあえず、今手にしてるのに目を通してみる。それから似たようなやつに手を伸ばしてみた。あぁ、本当だ。載ってる問題が違うからだけでなく、何か違う。
何冊が手にとってみて、中をじっくり見て、問題数は少な目だけど解説がしっかり載ってるやつを選んでみた。
「椿、これにする」
「そう」
別の参考書を読んでいた椿に報告すると、今度は首をかしげられなかった。その事になんだか安堵する。
「………目的あった方がってさっき言ってたけど、椿は何かあるの?」
「ん?………オレは単純だから」
ふっと、寂しげな笑みが浮かんだ。
「単純に、良い点とって、誉められたかっただけだよ」
「……………そっか」
「他に何か買うものある?」
「え?あ、料理本みたい。あと、ハンドクリーム」
今使ってるやつがもうすぐなくなって、いつも買ってる店はここのすぐ近く。冬場になると荒れやすくなるから、消費が早くてしかたがない。肌には気を使わなきゃならないからなおのこと。
そう言えば、椿も家事してんだよね。
「椿は?ハンドクリーム」
「………ある、よ」
うん?何か歯切れが悪いような?
「どこのメーカーの?」
なぜか椿は考えるそぶりを見せた。何だろう。教えたくないのかな?首をかしげて返事を待っていると、不意に椿は唇に人差し指を当てた。
「内緒」
ん?ん?
僅かに照れくさそうなその様子に、ますます疑問符が浮かぶ。しかもはっと気づいた様に口許から手を離して、でもなんかその手をもて余して。
な、何なんだろう。気になる。てか、内緒って。それイイ。
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