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必要なものはなにかなぁとブツブツ言いながら元親さんを連れまわす女、それが今のあたしです。生活必需品…って言ってもなぁ、元親さんって歯ブラシとか知らないよねぇ。
とりあえず先に下着を買いに行って、何でもいいと言うので安いトランクスを購入。2枚で315円!?安っ…!
やべ…なんか今のあたし、所帯じみてる気がしてきた。
いやいやそんなことないぞ!あたしまだ若い!若いねーって言われるもん!お客さんとかに!
それからこざこざとした雑貨を買ったりタオルとかも買ってひと息つくと、ちょうどお昼を過ぎたころだった。結構時間はかかったけど、早起きしたおかげで思ったよりは早く帰れそうだ。
「お腹空きました?」
「ああ…」
「…あれ、大丈夫です?疲れちゃいましたか?」
「この世界は人が多いな…」
「人に酔っちゃったんですね…お店入りましょう、和食がいいかなぁ」
顔色の優れない元親さん。平日とはいえそれなりに人は多いから、こんな状況じゃ落ち着けないし具合も悪くなるよね。
このビルには和食のチェーン店が入ってたはず…とグルメフロアを目指す。幸いすぐに見つかったので、多少がやがやしてるけど早く休めた方がいいと思ってすぐに店内に入った。
「悪ィな」
「気にしないでください。慣れない環境なんだから当たり前です」
「…なまえ、」
「?なんですか?え、吐く?」
「吐かねぇよ!」
「吐かねぇですよねー…あはは!」
席に着いてしばらくすると、ぼそりと謝罪の言葉を口にした元親さん。神妙な顔で名前を呼ぶもんだからなんだろうと思ったけど、座って少しは落ち着いたみたい、よかった。
「ご飯食べられそうですか?」
「食う、腹は減ってんだ」
「あたしもです!」
もりもりとご飯を食べながら、また元親さんの話を聞く。海での生活も旅の話もやっぱりおもしろい。それでも…戦のある世界だから、という理由かもしれない、深い話は聞いてはいけないような気がした。
この世界のこの時代だって戦争はある。けどあたしの目の届かないような遠いところの話だし、実際今まで生きてきて命の危険なんて感じた事もない。遠い国では今も人が死んでるんだよ、と学校で教わっても実感なんて湧かないのだ。こればっかりはどうしようもない。
日本人は平和ボケしてるとか言われるけど、まったくもってその通りなわけで。元親さんは日本人だけど、平和ボケなんて言葉からは縁遠い存在なんだろうなぁ。
「なまえの話も聞きてぇ」
「あたしの話?」
「あぁ。あの家には一人で住んでるんだろうが、家族はいるんだろ?」
「いますけど…そんなにおもしろい話ないですよー」
「疎遠なのか?」
「うーん、まぁ。連絡は取りますし、そんなに仲が悪いわけじゃないんですけどね、最近は実家にも帰ってないなぁ」
帰省には時間とお金が掛かるわけで。帰りたくないとかじゃないけど、自然と足は遠のいている。
…あ、そうか。
「世の中便利になって、ケータイとかで連絡も簡単に取れちゃうからかな。わざわざ帰省しなくても話せちゃうから」
「そうか…寂しくねぇのか?」
「最初は寂しかったかも。あ、元親さんがウチに居てくれたら、あたし久しぶりに『ただいま』って言えますね」
(どこかぎこちない笑顔を向けるなまえを見て)
(迷惑しか掛けてない俺に、居場所を用意してくれるこいつの。なまえのためにできることを俺も探したいとか…思っちまった)
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