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転入生についての考察










「わーチカちゃんかわいいねそれ」


傷を洗って戻ってきた二人。腕に巻かれた、おそらくなまえちゃんのであろうピンクのハンカチに目を向ける。そしてあからさまな嘲笑を含んで元親に向けた言葉。少し不機嫌そうな顔をしただけで何も言わない元親を見ながら、なまえちゃんはごそごそと机の中からプリントを取り出しているところだった。俺の嫌味とも取れる言葉も元親の態度の理由もきっとわかってないんだろうな。


「そういや自習だったか」


忘れてたわ、と頭を掻きながら自分の席へ戻った元親を見送るとチャイムが鳴る。真面目にやるのかと思いきや、プリントを手に椅子を引きずってやってきた。


「佐助、頼んだ」
「たまには自分でやんなよー」
「…いつもこうなのか?」
「そうなんだよ、なまえちゃんからも言ってやってよ。自分でやんなきゃ意味ないっての」


む、と口を結んだなまえちゃんはしばらく考えた挙句、出てきた言葉は俺の期待を裏切るもので。


「将来の役に立たないのならできなくても構わないと思うが…どうなんだ?元親」
「いらねぇ!」
「…だそうだ」
「甘い!英語だぜ?知ってて損ないだろぉ!?」
「はっ!俺は日本語で生きてんだよ」
「二人とも落ち着け、この討論をするのも自由だがプリントを解く時間がなくなる。それに」


なまえちゃんが元親の肩を持つようなことを言うのを聞いて、むっとなったのかなんなのか。自分でもよくわからないけど苛ついてしまった。止めに入ったなまえちゃんの言葉が不自然に途切れたので顔を向けると、いつの間にか俺らはクラスメイトの注目を浴びていた。


心がすっと落ち着いていくのが手に取るようにわかって、客観的に見た自分たちの姿がおかしくて笑ってしまった。






「まーいいか。本人にやる気がなきゃいくら言っても一緒だよな」
「お、おぅ!わかんねぇときゃ佐助に聞くからいい!」


それ…俺たちいつまで一緒にいる設定?ホントに元親は。「アニキー!」なんて慕われてる割に肝心なとこ抜けてるんだよなぁ。卒業しちまえば、どうなるかなんてわかんないのにさ。やっぱ笑える。


「仲良きことは美しきかな、か?」
「そーゆー言葉はどこで覚えたのなまえちゃん」
「副長殿が…っ!な、なんでもない!」


わたわたと慌てるなまえちゃんを見てまた笑う。“副長殿”ってのは気になるけど、これはきっと彼女の弱みになる。機会が来たときにチラつかせてやろう。楽しみだなぁ。


「プ、プリントを解かないと!」
「そうだね。元親、なまえちゃんに見せてもらおうぜ」
「そりゃいい!なまえは英語で生活してきたんだろ?ならこんなもん楽勝じゃねーか、なぁ?」
「あ、はは、どうだろうか」






まだ冷や汗たらしてる!まったく、反応が一々興味をそそるねぇ。周りにいなかったタイプだ。


このかわいいけどちょっと変わってる転入生。ポテンシャルは未知数、謎も多数。飽きずに見てられそうだ!明日のお昼は女子と約束してたから、放課後までに明後日からの予約、しとくかな。












09/08/26


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