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授業内容のレベルはほぼ情報どおりのようだった。まさかとは思うが大佐殿…ミスリル情報部を使ったんじゃないのかと疑いたくなるほど正確な情報だ。そこまでしなければならない程の重要な任務だということか?


…これが?





「ほいプリント」
「ありがとう…?」
「…話、聞いてた?」
「これが放課後に提出するプリント?」
「そ!っていうかまだ教科書広げてんの?もう昼休みだよ」
「え」


長時間机に向かうことに慣れていないあたしは、授業終了の合図に気付かなかったらしい。佐助(結局名前を呼び捨てるよう強要された)に話し掛けられるまで思考の渦に落ちていた。

授業の内容もほとんど頭に入っていないな、これは。


「はぁ…」
「ぼーっとしちゃって。学校、久しぶりなんだっけ?」
「あぁ、もう10年弱通っていない」
「うわぁ、すごい生活だったねー」


確かに一般人とはかけ離れた生活だ。生活の基本は潜水艦内、基地では訓練に整備に会議、外では任務という名のドンパチを紛争地帯で繰り広げていたのだ。あまりにも違いすぎて何もかもが付いていかない。


「なまえちゃんの話、もっと聞かせてよ」
「外国での話か?それならそうおもしろい事は、」
「まぁまぁいーじゃん。昼飯でも食いながらさ」
「…わかった」


昼休みは晴れている限り、決まって屋上へ行くという佐助に連れられて歩き出す。クラスの女子に「佐助くーん、みょうじさん連れてっちゃうのー?」とか言われて「うん、ごめんねー。今日は俺らと一緒!」

…俺ら?へらりと笑う佐助の答えが引っ掛かる。

「あたしらもお話したかった〜!みょうじさん、明日はあたしたちと一緒しようね!」
「え!?あぁ、はい!是非!」


「佐助ー、俺ァ購買寄ってから行くわ」
「おー。先行ってるー」


彼が“俺ら”の中に含まれる人だろうか?後姿しか見えなかった…とはいえ顔を見たところで名前もわからないのだが。

がらがらとドアを開けて屋上へ向かう途中、堪えきれなくなったように笑い出す佐助。


「…何で笑う?」
「だって、俺と女子とじゃなまえちゃん態度違うんだもーん」
「そ、そんなことはない」
「あるよ、あるあるー。なんで俺様にはそんなカタいの?」
「女子は、かわいいじゃないか。あたしなんかとは全然違う人種だ。だから、なんか…」


制服のヒラヒラした短いスカートがよく似合って、銃なんて本物など見たことすらないだろう。白くて綺麗な肌に薄く色付いた頬。どれもこれも、あたしとは違う。

ほとんどを軍服で過ごして、銃を握って人も撃って。任務ですぐに顔まで汚れるし、化粧だってしたこともない。全然違うどころか正反対ではないか。


「自分“なんか”って、あんまり良くない言葉だと思うよ?それに、」
「…うん?」
「制服だって似合ってるし、かわいい普通の女の子だと思うけど」


ちょっと言葉遣い直せばなお良し!とか、いらん一言までもらった。


「そうか?」
「そうだよ」
「言葉遣いか…努力しよう」
「そうしたまえ!」
「佐助…ありがとう」
「…っ!はは、どーいたしまして」





あたしは軍人で、世界は大なり小なり紛争が絶えなくて、ミスリルはその戦火を消すために存在していて。


でも今、あたしはこうして平和な日本で普通の高校生活とやらを送り始めた。

大佐殿にどんな真意があるのかは不明。

束の間の休息ともとれるこの時間を有効に使えるかどうか、あたしの手腕に掛かっていると思えば楽しくもなってくるだろうか。



「さぁさぁ早く行くよ、旦那のお腹と背中がくっ付いちゃう!」
「はぁ?(旦那?)」











・ミスリル情報部…ミスリル内における重要部署の1つ。主に諜報活動・後方支援を行う部隊。ちなみになまえが所属しているのは作戦部の西太平洋戦隊です




09/08/18


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