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アーベント











「はーい、できたよー」
「佐助の肉じゃがは絶品でござる!」
「うまそー!」
「……肉じゃが」


リビングに置かれたテーブルの上は、佐助と幸村が運んだ4人分の料理に埋め尽くされた。そのテーブルの四方を囲むように座る。なまえは、小さい頃に日本を離れてから正座で食事をしていなかったことを思い出した。



今、共に暮らす慶次も日本人だが、ミスリルの人間は揃いも揃って欧米食に慣れすぎてしまっている。大佐である政宗然り、副長である小十郎然り。基地にある食堂や“ダナン”には一応日本人シェフもいるので日本食は食べられるが、材料が現地から取り寄せられないこともあり、その味が褒められたものではないせいだろう。




「肉じゃが、食べられる?」
「ああ。しかしこんなに素晴らしい和食は初めてだ」
「素晴らしいってそんな大げさな…普通の肉じゃがですけどまあ食べてみてよ」


佐助に勧められて一番に手をつけたなまえ。

その様子を見守る3人。



「…美味い」
「そ?よかったー」
「もう俺も食べてよいか佐助ぇ!」
「俺も腹減ったぜえ…」
「はいはい、お待たせしましたねー」
「「いただきます!」」
「味がよく染みているし肉も柔らかい…」
「なまえちゃん、そんな風に分析されると食べにくいんだけど…っていうか、“美味い”じゃなくて“おいしい”!」
「…おいしい」
「よし!」



肉じゃがだけでなく、金平牛蒡にアジの唐揚げも並んでいる。これだけずらりと和食が揃っている光景をなまえは初めてみる。小さい頃の記憶では、子供だったなまえが好んで食べるのは洋食だったから。


「佐助の肉じゃがはこの肉の柔らかさがいいんだよなぁ」
「またしみじみ言うね元親」
「肉じゃがの肉といえば牛肉だと思っていたが、これは豚肉か?」
「最近豚肉に変えてみたら旦那が気に入っちゃってさ、それ以来俺は豚肉で作ってるよ」


それから佐助はたんぱく質やら繊維やらカルシウムやらのバランスが…と今日このメニューに至った経緯を説明し始めた。なまえはうむうむと頷きながら聞き入っていたが幸村も元親も慣れたもので、食事を続けながら聞き流している。




「というわけで、栄養は大事ってこと!」
「幸村は幸せ者だな」


(おいなんか言われてんぞ幸村)
(むぅ、しかしあの流れでなまえ殿の口から禁句が出ないのは奇跡的でござるな…)
(た、たしかに…!)



「で?そこの君たちはこそこそと何を言ってるのかなぁ?俺様気になるなー」
「なっ!なんでもないぞ!」
「幸村の言うとおりだぜ佐助、何でもねえよ!」
「???」
「それより!俺は食後のケーキを持ってくるでござるっ」



逃げるようにキッチンへ向かった幸村に、佐助はやれやれと溜め息をつく。そして自分は飲み物を用意するために幸村の後を追った。



「本当に何でもできるんだな、佐助は」
「まあ…万能型だよなあ文句なしに」
「…万能、か」
「ん?なまえ、どうかしたか?」
「いや…問題ない」




なまえはプロとして最前線で戦闘を行っている自分が、日常生活では何一つ敵いそうにないな…と思う。それは佐助に限ったことではなく、幸村も元親もそうだ。本当に今まで戦争しかしてこなかった自分では、所謂“普通の生活”を送ることが難しいもの。それに敢えて政宗は自分を挑戦させようとしている。そろそろその真意を尋ねてみてもいいだろうか、とぼんやり考えていた。




「わーすごい数だねえ。ありがとね二人とも」
「うむ!あれもこれも食いたくなってしまうな…!」
「おい幸村、よだれ拭け」
「好きなだけ食べてくれ」










幸村はきっと食後でも最低3コはぺろりだと思う。しかも甘いのばっかり。佐助は季節ものを選んで、元親はフルーツもりもりのやつがすきだといい。笑


09/11/23


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