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日々変化








土曜日。
週末はなまえの学校が休みなため、任務のない日はセーフハウスで自由に過ごしている。かく言う俺も、最初の頃は近隣の視察に建物・地理の把握なんかをしなきゃいけなかったけど、それも一通り終えてしまったのであまりすることが無い。



日本への滞在も数週間目に突入したけど、まだ政宗から帰還の命令が出ない。俺としてはこの地にいるのも落ち着かない気がするんだけどなあ…。なまえを一人残すのが不安って方が勝ってるからいいけど。



…そうか。



政宗もなまえが心配で俺を側に置いてんだな。いやあ、報われないなりにアイツもいろいろ考えてるってことか。














なまえが学校に行ってる間の家事は一応俺が(適当に)やってるんだけど、休みの日はなまえがやってくれる。たまに一緒に食料の買出しに行ったり、あとはセーフハウス内でもできる事務処理の仕事が基地から回ってきてそれをこなしたり。なまえは日課だからと武器の手入れもする。


そう、とにかく普通の女の子らしい生活をまったくと言っていいほどしないのだ。


そんななまえが難しい顔をしてクローゼットを開けていた。中にはもちろん制服と学校ジャージと野戦服、あとはパジャマ代わりのスウェットのみ。休日の買出しの時だってなまえは制服を着るから。




「なまえ?どうしたんだい?」
「慶次…休みの日に制服で友人の家に行くのはおかしいのか?」
「…へ?」


いきなり何を言うかと思えば…。確かになまえは普段着を一着も持ってきていない。基地には何着か持ってるのを見たことがあるけど、ここでは必要ないと思ったんだろうなあ。


「遊びに行くんだろ?」
「遊びに…というか、明日の夕食を一緒にと誘ってもらって、」
「へぇ!よかったなー!」
「それで、慶次が何か食べたいものでもあれば作っていくが」
「いいよいいよ、俺のことは気にしないでさ!」
「しかし当番だし」
「気にしなーい!」
「そうか…?ごめん」






「…それより明日の服が問題なんだろ?」
「そうだった…」


遊びに行く家の子に「まさか制服で来たりしないよねーw」と言われたらしい。これだけ聞くと女の子みたいだけど、実は男の家らしい!うわ、これ政宗に知れたら…か、考えないことにしよう。


「んじゃ、俺が何か見立ててやるよ!そうと決まれば早速買い物に行こう!」
「えぇ?」
「嫌なの?」
「いや…頼む」







なまえが「ごめん」なんて。やっぱり周りの環境の変化が影響してるんだなあ。


小さかった頃に日本を離れ、中東でゲリラ活動をしていたなまえが、教育係だった副長と日本語の勉強をしてからというもの…めっきり言葉遣いが堅苦しくなっちまったから。まぁ軍人の中の軍人!って感じの副長が先生じゃあしょうがないよなぁ。俺が出会ったときはまだ拙かった日本語で話すなまえがかわいかったのに。英語はペラペラだったし、俺らも最初は英語で会話してて、日本語で話すようになったのはチームを組むようになってからだった。


こうやって変わって、いつかこんな仕事辞めて平和な土地で、好きな男と幸せに暮らせるようになってくれれば…俺は嬉しいんだけどなあ。













「こんなのはどうだい?」
「慶次…」
「あ、こっちの方がかわいいな!」
「おい、」
「おお!これも似合う!」
「……」


同年代の子が好きそうなショップの集まるビル。手当たり次第に店に入ってはなまえに似合いそうな服を物色していると、なまえの眉間にどんどん皺が寄ってきた。あちゃー、そろそろローキックの一発くらい繰り出してきそうだな、はは;


「まぁ落ち着きなって。なまえはスタイルいいからさ、何でも似合うんじゃないかねぇ?ね、お姉さん?」


お店の人に話し掛けるとにこにこと愛想のいい笑顔のまま返事をしてくれる。


「よかったら試着されてみませんかー?」
「え、」
「いいねぇ、着てみなって!」
「はぁ…」


凄く不本意そうな顔をしたなまえが試着室のカーテンの向こうに消えてから数分、お店のお姉さんに声を掛けられて姿を見せたなまえは、本当に普通の女の子になっていた。


「似合う!それにしな、うん。俺が買ってやる、そうしよう」
「おい慶次…」
「すごく似合ってますよ!彼氏さん、優しいですねえ」


ん?すっごい笑顔なお姉さん、何か勘違いしてるよー?けどまあいいか、否定するのも面倒だし。


「お姉さん、この服に合う靴とかも見繕ってくれる?」
「はい!少々お待ちくださいね」
「……」
「そんな仏頂面しないのー、せっかくかわいいカッコしてんだからさー」
「あたしのあずかり知らないところで話を進められるのが度し難い」
「まぁまぁ。しっかしホント、似合ってるって!それに、ちゃんと動きやすいだろ?」
「それは、まぁ確かに」



お待たせしましたー、というお姉さんに連れられてレジへ向かう。そこで2パターン用意された靴の片方(走りやすそうな方)を選択したなまえがサイズを合わせている間に会計を済ませた。



「ありがとうございました!」


背中にお姉さんの声を受けながら、制服に着替えなおしたなまえと店を出る。服だけじゃなく、靴やバッグまで買い揃えたから結構な荷物になった。でかいショップの紙袋を持ってやっていると、自分で持てるからと荷物を奪い取られそうになった。



「一緒に歩いてんのになまえにだけ持たせてたら白い目で見られるの俺じゃん」
「そういうものか?」
「そういうもんだよ、さっきもお店のお姉さんにカップルだと思われただろ?」
「ああ、」
「男が荷物を持つのは普通のことだからさ、なまえも普通に甘えてればいいの!この場合、なまえが荷物を重く感じるかどうかは問題じゃないから、学校でも“持つよ”って言ってもらったら甘えるんだぜ?」
「…わかった、ありがとう」
「おう!」



(しかし、なにも買ってくれなくても…一応あたしもSRTだし、給料はそれなりにもらっているのだが)












慶次お兄さんとお買い物…行きたい←オイ


09/10/24


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