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ピースザアーバン








「なんか久しぶりだな」
「ふむ、」
「ほーんと、日常の風景だねぇ」
「飯がウマいでござるな!さすがは佐助!」
「はいはいありがと」
「むむー、んんん」
「なまえ殿、なんと…?」
「…なまえ、口の中のものは飲み込んでからしゃべれよ?」
「んむ」



数日の任務を終えて日本に戻ったなまえ。転入してから数週間、この面子での屋上ランチタイムはすっかり恒例となった。


今日のなまえの昼食は、ある人のお手製ホットドッグ。いつも味気ないコンビニのパンやおにぎりを食べているせいか、久しぶりに食べる“作ってくれた人の顔の思い浮かぶ食事”に夢中であった。



「佐助の作るお弁当はいつも凝っているな。見た目も綺麗で味もいいとは」
「うむ!佐助の飯はいつもウマい…そうだ佐助!よかったらなまえ殿にも一度振舞ってみてはどうか?」
「え、えー?」


微妙な反応を見せる佐助に、隣で元親が苦笑している。


「佐助、無理しなくていい。もちろん興味はあるが、佐助も忙しいだろう」
「いや忙しいとかじゃないんだけどサ…はは、」


(手料理振舞うって俺様の方が女の子みたいじゃん!)
(…ドンマイ佐助☆)


「なぁ、なまえは料理できんのか?」
「簡単なものなら多少は作るが…料理と呼べるほどのものは作れない」
「そのホットドッグはなまえ殿が?」
「これはた……!」
「た?」


“大佐殿”と言おうとして踏み止まったなまえ。

このお手製ホットドッグは、基地から直接学校へ送ってもらったなまえが出掛けに政宗から渡されたものだった。地中海戦隊の隊員にコーヒー豆を送ってもらった際、おまけとしておすすめのヴルストが送られてきたらしい。が、政宗の口に合わなかった。試食したなまえが気に入ったというのでホットドッグにして持たせてくれたのだ。

…と説明するわけにもいかない。


「た、た…タンザニア人の友人にもらったんだ(苦しいか…)」
「タンザニアでござるか!それはまた遠くの国に友人がおられるのだな」
「旦那、タンザニアがどこにある国か知ってんの?」
「いや、知らん」
「だと思った」
「幸村、安心しろ。俺もわかんねぇぞ」


顔を引き攣らせながら誤魔化したなまえは、意外にも食いつきがよかったことに安堵する。タンザニアはマイナーだったか?と首を傾げるが、同時に佐助なら知ってそうだと話を振ってみる。


「たしか中央アフリカの国でしょ?正式名称は『タンザニア連合共和国』、だったかな?」
「さすがだな…」
「ま、名前くらいはねー」
「すげぇ佐助!」
「すごいぞ佐助!」
「あんたらは知らなさ過ぎ!」



今回はそれほど怪しまれずに誤魔化せた、と満足したなまえ。残っていたホットドッグにかぶり付き、口いっぱいに頬張る。


政宗の口には合わなかったが、このホットドッグに入っているヴルストは中々の高級品で、滅多に食というものを楽しまない(というかぶっちゃけ食べれればなんでもいい)なまえには相当な贅沢品なのだ。



「なまえちゃん、今度の日曜ヒマ?」
「え?ああ」
「じゃあご飯食べに来る?」
「いいのか?」
「俺もー!!」
「言うと思った。時間は旦那の部活に合わせてもらうことになるけど、それでよければどーぞ」


好き嫌いないなら適当に作っちゃうけどいい?と聞く佐助にぶんぶんと首を縦に振るなまえ。元親には聞く気もないらしく、じゃあそれで決まり、と話を締める。





「そういやなまえは何でもウマそうに食うよなあ…つーか量多くねぇ?」
「ほーか?(そうか?)」
「いやあ多いでしょ、年頃の女の子が食う量じゃないって絶対。でも普段はそんなに食べないよね?筋肉はついてるっぽいけど」


佐助と元親は、制服から伸びるすらりとした足や腕を凝視している。ようやく食べ終わったなまえは、また怒られる前にと口の中のものを咀嚼して飲み込んでから答える。


「腹六分目が習慣なんだ」
「“腹八分目”とはよく聞くが、六分目とは何ゆえ?」
「理由を話すとなると、ちょっと食後には似つかわしくない話になってしまうぞ?」
「やめようなまえちゃん」
「そうか?」
「「…うっぷ」」


何を想像したのか、ぽかんとする幸村を除く二人が口を押さえる。

ちなみに腹六分目で食事をやめるのは、腹の膨れた状態では腹部に銃弾を受けたときの致死率が跳ね上がるから、という理由なのだが気分のいい話ではないとなまえは話さなかった。



「なまえの場合、あの身体能力だからなぁ。筋肉量は相当だろうが」
「筋繊維が細いんだろうね。長距離ランナー型ってやつかな?言ってみれば旦那も一緒」
「なんと!なまえ殿と一緒でござるか!」
「幸村…声が大きいぞ」
「す、すまぬぅ!」


隣で大声を出されてたじろぐなまえ。逆隣の元親側に少し寄ったところを、ちょうどいいとばかりに二の腕と肩を掴まれた。


「おーおー、確かに細く見えて案外いい筋肉が」
「どれどれ?俺様も…」


向かい側に座った佐助が、広げていた弁当を片付けて空いたスペースに足を出せと言うので右足を伸ばしてみる。


「ほんとだー、こりゃああんだけ動けるワケだ!普段なにやったらこんなにキレーに筋肉付くんだよ」




ぎくり。




(またこういう話題に…!)


素性の割れてしまいそうな話題にまたしても顔を引き攣らせていたなまえだが、そのなまえにとって天の一声とも言える叫びが屋上に、果ては学校全体に響き渡った。



「は、破廉恥であるぞぉぉ!!」












・地中海戦隊…地中海を拠点に活動しているミスリルの戦隊のひとつ。正式名称は地中海戦隊“パルホーロン”
・ヴルスト…某擬人化もので一躍有名になりましたね、ドイツのソーセージのことです


09/10/18

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