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島で捕縛した敵指揮官の受け渡しを済ませ、オリバーには報告書の作成を命じられた。地下施設の件が無ければ報告書の量も少しで済んだのに…と多少うんざりするも、事実を的確に伝えればいいだけなので古文の宿題と比べれば大分マシだ、となまえは思った。


思ってからすぐ、そういえば数学の宿題を艦に持ち込んでいたことを思い出す。


(提出期限はいつだったか。登校は明日中には無理だろうな。期限には間に合うのか?…元親と約束をしていたのが昨日の夕方で、作戦がグリニッジ標準時の…いやいや、日本時間で計算しないと。基地からセーフハウスまでは10時間で、)




「なまえ!直接セーフハウス?」


時差の計算をしている所で慶次に話しかけられ、なまえの頭の中の計算式は吹き飛んでしまった。バレない程度に溜め息を吐いて答える。


「…いや、ちょっと大佐殿と約束があって。この遅れには口を利いてくれるだろう」
「ははぁーん、約束って何?」
「コーヒーを淹れるよう頼まれた」



ありのままを伝えただけのなまえに対し、慶次の表情が崩れた。あちゃー、とでも言うように頭を抱えてぼそりと続けた。



「あいつももっとマシな約束取り付けらんねぇのかなあ」
「何か問題があるのか?」
「いいや、ないよ!」
「そういえば…継続中の任務についての話も聞きたいとおっしゃっていた」
「…あ、そう」



呆れたような慶次。整備班とのコンタクトもしなくてはならなかったが、任せていいから行ってこいと背中を押されたので遠慮なく任せて政宗を探す。











作戦中は発令所に居たのだろうから、そこを出たとしても順に足取りを追えばいいかと思ったなまえは、発令所へ向かった。予想通りそこには既に政宗の姿は無く、クルーに聞けば食堂に行ったと言われ、次は食堂を目指した。着いた食堂には主に前線に出ていた兵士たちが集まっており、空いた小腹を埋めているようだった。


(自室に戻られたのか?)


政宗の自室はなまえたち下士官の居住区域とは少し離れたところにあり、近くにあまり利用する部屋のないなまえにはなじみの無い場所にある。場所は知っているので迷うことなく向かったが、そこへ行く途中でTDD“トゥアハー・デ・ダナン”副長、片倉小十郎に会った。



「政宗様に会ってないのか?」


片倉家は代々伊達家に仕える一族で、小十郎は政宗を幼少の頃から支えている腹心の部下である。政宗が艦長となってからは副長として側に付き、政宗が正常な判断を失っていると判断したとき、先任士官三名以上の承認を得て指揮権を剥奪できる権利を持つ男だ。


なまえが政宗を探していることはわかっているらしく、まだ合流していないのかと不思議そうな顔をする小十郎。敬礼をしてその問いに答えた。


「はっ。探しているのですが…どちらに居られるかご存知ですか?」
「行き違ったか?休憩を取ると発令所を出て行かれたが…なまえを探しに行ったのだと思っていたが会えなかったようだな」
「食堂と大佐殿の自室には行ってみたのですが」
「…SRTのオフィスは?」
「いえ、行ってみます」





SRTには一応デスクワークのようなものもある。作戦後の報告書、新装備の仕様要求、作戦や戦術の提案書、必要経費の明細書など、書類が必要なものがあるからだ。そのためのオフィスに戻ると、入り口に人影。



「大佐殿!」
「Ha!やっと来たか」
「申し訳ありません」
「お前のことだ。俺を探し回った挙句、小十郎にでも言われてここに来たんだろ?」
「はっ、その通りです…」


なまえの行動パターンは既に政宗の頭の中に入ってしまっているらしい。言い当てられて下を向くなまえ。


「なまえ」
「はい」
「部屋に行くぞ」
「はっ」
「…今は任務中じゃねぇ、敬礼はやめろ」
「あ…申し訳ありません、大佐殿」
「Shit、まあいい。とにかく楽にしてくれ」


先を歩く政宗に遅れないように歩く。任務外の時間に政宗と会うと必ずと言っていいほど言われるさっきの言葉。だがなまえにとって政宗は、遙か上の地位であり、まさに雲の上の人…だった。慶次を通じて話をするようになってからはそれほどまでに遠く感じることはなくなったが、それでも上官は上官だ。馴れ合うのはよくないと自制しているのだが、政宗はそれを良く思っていないらしい。



学校はどうだと聞かれて、報告書にも書いたことをそのまま話すのも憚られたので、報告書には書くまでもないかと省略したクラスでの話などをする。上手く伝わっているのか、と不安に思いながらも話し続けるなまえに軽く相槌を打つ政宗。そうしている内に政宗の部屋である艦長室に到着した。



「豆をいろいろ仕入れておいたから、基地に着くまではゆっくりしていけ(ここなら邪魔も入らないからな)」
「いいのですか?」
「あ?何がだ?」
「いえ、大佐殿も作戦後でお疲れではないかと…あたしがいてはゆっくりお休みになれないのではないですか?」
「俺は疲れてねぇし、お前が邪魔になるなんて思ったこともねぇよ(っつーかむしろお前が目に付くとこにいねぇと気になるんだよ!)」






「(おぉ!?これは今日こそ進展ありなんじゃないかい?)」
「(いや…政宗様はああ見えて思い切れないところがあるからな。なまえもなまえで鈍いから、気付かない。すると引いてしまわれるのだ)」






「なら、いいのですが。コーヒーを淹れるくらいならいつでも出来ますので、基地に居るときとか、」
「あぁ気にすんな、今飲みたいんだよ(お前の淹れてくれた)コーヒーが!」
「?了解しました」






「(…ほらな)」
「(政宗ー!口に出さないと伝わらないぜ!?俺はアンタを応援してるっ!)」











こっそり覗かれているなまえちゃんと心の声が多い筆頭!もちろん覗いているのは慶次と小十郎です笑

09/10/06


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