[携帯モード] [URL送信]
フラクタルイメージ










「仮病は治った?」


朝の一言目がこれとは。



「おかげさまで全快だ。またいつかかるかわからないのが怖いところだが」
「はは、そのときはまた俺様を頼ってよ」
「…要検討、だな」
「あはー」


…この男は!




一日の始まり、朝のホームルーム前に席に着いて今更思う。あたしの周りには、こう…なんというか、扱いの難しい人間が多い。


例えば慶次。慶次は今でこそ最初の頃より付き合いやすくなったが、出会った頃は酷かった。なんでこんなヘラヘラしたやつが同じチームなのだと、表には出さずとも不満に思ったものだ。任務をこなす内に実力を認め合い、今では命も預けられるほどの信頼を置いているが。任務以外の私生活は褒められたもんじゃないし、あたしをからかうのも楽しんでいる。


例えば大佐殿。ミスリルに入って以来、こちらは一下士官で逆らえないのをいい事にいろんな悪戯をされた。訓練中に軍服の後ろ首を掴まれ、服の中に蛇を突っ込まれたり、野営中のテントの中に気配もなく現れてくすぐりまくって逃げていったり。何がしたいのかはわからないが、慶次と仲のいい大佐殿だ、同じくあたしの反応を見て楽しむと言う悪趣味なことをしているだけなのだろう。



何故かゲリラ時代も寝込みを襲われることが人一倍多かったし、あまり気にはしていないが…艦内では副長殿に鍵付きの部屋を与えられている。副長殿の話では、女性クルーの部屋はそれが普通なのだそうだ。あたしはずっとそういうケアのない生活をしていたし、クルーも信頼しているので最初は断わったのだが、鍵の無い部屋に寝泊りしていると週に何度かは気が付いたら部屋にあたし以外の人がいる、という事態が続いたために強制的に鍵付きの部屋が割り当てられた。











「なまえ、今日の放課後、何か用事あるか?」
「いや、今のところ予定は無い」


隣のクラスの幸村に届け物だと言って席を外した佐助の席、今は元親が座っている。


「じゃあウチ寄って行けよ!どうせ幸村は部活だし佐助はバイトだろ。前に借りたハンカチも返してーしな」
「元親の家…たしか美容室だったか」
「おうよ、なんなら髪でも切ってやろうか?」
「いや。自分で切れる」
「おいおいマジかよ、ずっと自分で切ってんのか?」
「知り合いに切ってもらったりもするが…美容室には小さい頃、日本に住んでいた頃に行ったきりだな」


元親の話だと、女子が自分で髪を切るのはそう無いのだという。あたしは自分を女子の括りに入れることに抵抗があるが、他人から見ればあたしはやっぱり女子だ。いつか元親に切って貰うのもいいかもしれないな。あたしがそう言うと、にかっと笑って胸を張る元親。


「任せときな!」
「ああ」












滞りなく授業が終わり、放課後になる。佐助は元親の言うとおりバイトがあるらしく、少し憂鬱そうに帰り支度をしている。それを見ながら自分の支度をしていると、ポケットの中の端末が着信を知らせて震えていた。



「はい」
『なまえ、もうガッコ終わったか?急だが作戦が入った。何分で戻れる?』


電話はセーフハウスにいた慶次からのもので、基地から指令が届いたらしい。いつものゆるい声とは違う、緊張感の含まれる声音。時間が無いのかもしれない。


「…10分で戻ろう」
『了解』



短い通話を終わらせて携帯をポケットへねじ込む。荷物を詰めたカバンを持って帰宅準備完了。学校からセーフハウスまでは徒歩なら25分、距離にして約2q。急がないと10分では戻れないな…。


「元親!」
「っ!な、どうした?」


急に大きな声を出したあたしに余程驚いたのか、元親は手に持っていた携帯を落とした。


「悪い、予定が変わった。すぐに帰らないと」
「んだぁ!?なんでだよ、」
「事情は話せない、ごめん!詫びは今度入れよう!」
「ちょ、おいなまえっ!」



今は弁解している時間も惜しい。慶次との通信を切ってからすで30秒のロス、元親には悪いが今は任務が優先される。


左腕の時計を確認。下駄箱のある一階まで階段で行くと回り道になる、しょうがない。



ガラガラ、



「おい、なまえお前まさか、」
「なまえちゃん!?」


後ろで焦ったような元親の声、引き止めるような佐助の声が響く。開けた窓のサッシに右足を掛けて、答える間もなくあたしは渡り廊下の屋根を目標にしてひらりと跳躍。トタン屋根の骨組みの部分に一度降り立ち、壊れなくてよかったと内心ほっとしたのも束の間、そのまま地面へともう一度跳躍。下駄箱を目指して走り出す。


上を見れば自分のクラスの教室の窓、二人して口を開けたままこちらを見下ろしているのが見えた。ちょうどいい!


「窓、閉めといてくれ!」




その後は脇目も振らずに走る、走る。抱えたカバンは少し邪魔だったが、何とか10分以内にセーフハウスに到着できた。さすがに荒くなった呼吸を整えて、慶次から作戦内容を聞く。


さぁ、戦争だ。














「う、嘘だろおぉ?」
「マジですげぇなアイツ…つーかもうちょっとスカートなの気にしろよ」
「ホーント!昨日といい今といい、ねぇ。…で?何か約束してたの?」
「い、いやあ…」










またしてもなまえちゃんアクション、むむむー難しいです↓
連続出動、次はドンパチしたい!
そしてアニキヘタレ説。


09/09/20


backnext

3/7ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!