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リトルアイロニー









適当な食事と飲み物をセーフハウス近くのコンビニで調達、戻ったなまえを待ち構えていたのはダラけきった同僚だった。


「おかえり〜〜」
「…キツイ任務だったのか?」
「ぼちぼち〜〜」
「任務地は?」
「シチリア島だよ。マフィアのコミッションで重火器総動員の大規模な縄張り争いの計画が練られてるって情報で、そこにカモッラが噛んでたらしい。人型兵器まで投入した派手な作戦だってんで、開戦すりゃ島だけじゃない、イタリア全土が火の海!人質扱いの民衆の解放と兵器の沈黙が任務で、無事にこなして全員帰還!」



150年ほど前に誕生したマフィアという組織は、イタリア南部のシチリア島を本拠地とする犯罪者による秘密結社である。物資・兵器の横流しや恐喝等によって勢力を拡大している。

ミスリルが相手にするテロ組織とも繋がっており、情報部の網に今回の件がかかったらしい。



「もう動きたくねぇ!メシ!ビールゥ!」
「それだけ舌が回れば上等だな」
「えー、なまえ!ビールないの?」
「一応買おうと試みたが売ってもらえなかった。制服だったからな、わかっていた事だ」
「そんなぁ〜…今度買い溜めしとこ…」


渡したビニール袋の中身に肝心のビールが入っていないと落胆する慶次。さながら“おあずけ”を喰らった大型犬だとなまえは思う。










軽い食事を済ませてから、なまえは報告書作成のためにノートパソコンを開いた。慶次には説明したが、今回の身体測定については報告するべきだろう。主に生活面での指導をしている副長は、また余計な問題を…と青筋を浮かべる様子を想像して冷や汗が出た。


とにかく、後の対応はどうあれ指示を仰がなくてはならない。頭をそちらに切り替えて簡単な報告書を送信すると、10分ほど経ってから基地から通信が入る。



「こちら基地通信室、TDD-HQより入電」
「こちらガルム7、繋いでください」
「了解」


(慶次の話ではダナンも基地へ戻っていると思ったが…)


通常、TDD―クルーには“ダナン”と呼ばれることが多い―が基地に停泊している間、艦内からの通信はさまざまな不利益のため行われない。潜航中は通常の電波が届かないので、特殊な電波を基地経由で受信する。



「HQよりガルム7、聞こえるか?」
「肯定です、大佐殿」
「報告書は読んだぜ。さすがはうちのSRTだなぁ、なまえ」
「…恐縮です」


大佐から直々の皮肉だった。

この大佐、なまえに絡むのが大好きなのである。


「その話はまた今度だ。手短に言うぞ、そこに慶次は?」
「シャワー中です」
「…ちっ、まぁいい。明日の一二○○時に迎えをやる。ポイントD4にクラスEの装備で待機だ」
「了解」
「待機で終わらせるつもりだが…こればっかりはどうなるかわからねぇ。あとは俺の手腕でも信じてな」
「もちろんです」
「Ha、いい返事だ」



通信を切って一息つくと後ろに慶次が立っていた。聞いていたのだろう、連チャンで出動たぁ忙しいねえとぼやいている。なまえは明日の準備のために武器の手入れを始めた。











・コミッション…マフィアのボスの集会
・TDD-HQ…HQはHead Quartersの略、“トゥアハー・デ・ダナン”司令部のこと
・ガルム…TDDのSRT要員の持つコールサインの1つで、なまえたちのチームが使っている。北欧神話に出てくる狼の名前です


マフィア云々の話と通信内容は深く考えずに読んでください。笑
それっぽい言葉を使っているだけなので、雰囲気が出てればいいなぁ…と。そして大佐殿、もうわかりますよね!きちんと登場したら設定ページも更新します


09/09/08



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