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リラクゼーション効果(猿飛佐助)





気付いたら、傍にいる君は眠ってしまってる。あれー、さっきまではあたしの家にまで持ち込んだ仕事の書類?と睨めっこをし続けていると思ってたけど。













「なまえちゃーん」


え、え?なんか聞こえたかも。いや聞こえたよね確かに。聞き慣れない気の抜けた佐助さんの声が聞こえて戸を開けると、今にも死にそうな顔をした佐助さんが部屋の入り口辺りの壁にかろうじて寄りかかっている状態だった。


「さ、佐助さんどうしたの?」


へろりと笑ってるけど顔はげっそり、という音がとっても似合いそうなお疲れ具合。うわぁ、かろうじて生きてる感じだこの人。


「俺もうダメかも、いやまじで」


そう言ったっきりぱたりと倒れこんでしまった。ええーっ!?さ、佐助さんっ!って叫んで駆け寄る。怪我でもしちゃったのかな、あれ?でも血とか付いてないし錆っぽい匂いもしないし…。いつも仕事で小さかったり大きかったりする怪我を作ってきた佐助さんからはちょっとだけ錆みたいな匂いがするのだ。もちろんあたしからは言わないし、佐助さんも何も言ってくれないけど。でも今日はそれもなくて手には数本の巻物。


はっ!もしかして今日は血が出るような表面的な傷じゃなくて、毒だとかよくわかんないけどそういうもの!?慌てて抱き起こしてしまった佐助さんを抱えたまま固まるあたし。


「どどど、どうしたの佐助さん!お、お腹痛いとか毒飲んじゃったとか!?」


もしも毒とかだったら体揺すったりしちゃだめだよね、どうしよう、佐助さんが死んじゃう!って佐助さんは毒、効かないんだっけ。じゃあ、ほんとに、どうしちゃったの?


「はは、なまえちゃん不足〜。なーんて、」


いつの間にか手に持っていたはずの巻物は床に散乱。佐助さんの両手があたしの首に回っていた。子どもが甘えるみたいな、あったかいけどくすぐったい抱擁。


「びっくりした…」


ほぅ、と息を吐いて佐助さんの背に腕を回す。ほんとにほんとに、心配したって言ったらにこーっと笑ってくれる。


「あはー、ごめん」
「あたし不足くらいなら死ぬことはないよね」
「いやぁわかんないよ?」


回された腕の拘束が少しだけ緩くなって、佐助さんと目が合った。至近距離で目を合わせるって、あの、すごい恥ずかしいんですけど。俺様寂しくて死んじゃうかもーとか言ってるし!


「そ、それより佐助さん!これ、お仕事残ってるんじゃないの?」


あまーい空気が恥ずかしくて耐えられなくなって、苦し紛れに床に散らかってしまっていた巻物を指す。きっとこれを片付けてしまわないとゆっくりできないんだろうから。


「そーなんだよねぇ。嫌になるよまったく」


うげーって顔で巻物に手を伸ばした佐助さんはやっとあたしから離れた。脇に巻物を抱えて四つん這いのままずりずりと奥の部屋に移動すると、柱に寄りかかって書類を広げる。


「えと、お茶淹れるね」
「ありがとー」


わ!笑顔がか、かわいい…!じゃないじゃない、こんなこと考えてる場合じゃないのあたし!あまりにも佐助さんがにっこり綺麗に笑うから意識が変なとこ行っちゃった。


佐助さんのためにお茶を淹れて戻ると、もう字なんて見たくない…って項垂れながらも筆を走らせていた。さらさらと滑る筆の進みは順調なようだけど、相変わらずお顔はげっそり。体調はすこぶるよろしくないようです、心配。

でもなぁあたしは何も手伝えないというね、こういう時にすごく自分の無力さを呪いたくなる。


佐助さんにはたくさん助けてもらったり幸せな気分にしてもらったりするから。あたしを喜ばせるのが世界一上手いのは佐助さんだと思うんだ!それに比べてあたしはどうだ?佐助さんのためにしてあげられることなんて…ほとんど無いなぁ。お茶を淹れることくらい、なんて情けない、うぅ。



佐助さんがこんなに近くにいるのに、一人で勝手に沈みだした思考が止まらない。はぁとかふぅとか溜め息を吐いていたあたしに佐助さんからお声が掛かった。




「なまえちゃん、ひま?」
「へぁ?あ、うん、ひま!」
「こっちおいでー」



ちょいちょいと手招きされた先は、柱に寄りかかった佐助さんの目の前。すっと両足を広げた佐助さんにくいっと腕を引かれた挙句、肩に移動した手にくるりと半回転させられる。


「えぇ!?」


ぽすんと収まったあたしの体、背中には佐助さんの体温を感じる。あれ?これは?とか思っていると、佐助さんの両腕はあたしの脇腹を挟むようにして、手には巻物を握っている。



「佐助さん?読みにくくない?」
「いーのいーの、これに目を通したら終わりだから」


耳元でそう言ってくるくると書類を読み進めていく。もうちょっとで終わるんだ、よかった!これで佐助さんがゆっくりできるならがんばってほしいなぁ。って応援するしかできないからね。














「…あ、れ、佐助さん?」


耳元で微かに聞こえる、これは…寝息?あたしに凭れてるわけでもなく、頭まで柱に預けたまま寝ちゃっているみたい。後ろを向いて見える佐助さんの寝顔がね、もうかわいいったらないよ!



そういえば最近、お休みないのかな?あたしの家にやってきてはいつの間にか寝ちゃってることが多い気が…!!それってあたしに対する放置プレイ率が高いってことじゃない!?やっぱりあたしが佐助さんにいろんなものを与えられてばっかりだから?あたしじゃ佐助さんの役に立てないから、何もしてあげられないからなのかな。うー、こんなこと直接なんて怖くて聞けない…!




09/07/19

(一人じゃ闇に飲まれちまいそーで眠れないようなときも、このコが傍にいてくれるだけで安心しきってしまう自分に笑っちまうよ。俺様がこんなに絆されるなーんて、ね)


なまえちゃんは甲斐の国の城下にある長屋に住んでる普通の町娘です、たぶん←
某所で素敵(カプ)イラから妄想が膨らみましたが出来が残念で中途半端、ごめんなさい


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あきゅろす。
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