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その瞬間(猿飛佐助)





――出番はどこからともなくやってきて、その瞬間を捉えるの


そうやって得意げに言っていたなまえをふとした拍子に思い出す。きっとどこかで今もまたカメラを構えてシャッターを押す。そうして満足そうに笑ってるんだろう。





「佐助、」
「はいはーい?」

パシャ

「いきなりっ!?」
「撮るよって言ったら佐助キメ顔するじゃん」

いーっと歯を出してそう言うとカメラのフィルムをぎりぎりと巻く。なまえのカメラは今流行のデジカメなんかではなくて安っぽいインスタントカメラだ。安っぽいっていうのは見た目の判断だし、実際のコスト的にはよくわからない。容量だって増やせるし自宅でもプリントアウトできるっていうデジカメの利点とかを総合して、インスタントと比べてどちらが安いのかなんてさっぱりだ。
でもなまえは撮ってすぐ写真の出来がわからない、現像に出して出来上がってくるまでの楽しみがあることや、瞬間を捉えたら撮り直しがきかないところが逆にはいからで好きだと言う。
…“はいから”って使い方合ってんのかな、まぁいいや。


「俺様のキメ顔嫌い?」
「そうじゃないよ、ただ自然な表情が撮りたかったの」

そんなん言われたら、なんかわかんないけどちょっと照れる。けど得意のポーカーフェイスという名の笑顔を貼り付けてみる。なまえにはバレバレらしく、「そーいうのは撮られたくない人に撮られるときだけにしてね」だって。まいったねこりゃ。


どこにでも売っているカメラを見ていつだったかのやり取りを思い出した。

「はぁ。」

ため息なんてまったく俺様らしくない。





なまえに出会ってからの俺は今までの俺じゃなくなったような気がする。世界が変わった、って言ったら大袈裟かもしれないけど。そう言ってる人の気持ちがわかったんだ。
初めて「この人の見ている景色が見たい」と思えた、それがなまえだった。そういう、なんていうか、大切な気持ちを教えてもらったから。
なのに、今はもう俺の隣に居ないなんて。





「佐助、」

あのときと同じように俺を呼ぶ優しい声が聞こえる。え、えぇ?ぴしりと一瞬固まってしまった自分の体をなんとか動かして振り返る。まじかよ!聞き間違いじゃなかった!

「なまえ!?」

パシャ

「あはは変な顔ー」

やっぱり満足そうに笑うんだな。つられてにへら、と笑い返した俺はたぶんいつものポーカーフェイスを忘れた顔してるんだ。

「なまえっ…帰ってきてたの?」
「帰ってきてたっていうか、今帰ってきたんだよ」

佐助に会うまで帰ってきた気がしなくてさぁ、佐助んちに行こうとしてたとこ!とか言いながら今度は歯を見せて笑う。情けないことに、会いたいと思っていたなまえがまさか俺の前にいきなり現れるなんてこれっぽっちも思ってなくて思考が上手く働いてくれない。
なまえに会えたら捕まえて抱きしめて顔を埋めて匂いを嗅いでキスをして。
あれもこれも、もうやりたいこと全部やってやろうとか考えてたさっきまでの俺がどこかに飛んで行っちまったみたいだ。

「…そ、か」
「なぁーにそれ、他に感想は?」

感想?そんなもん、

「おかえり!んもー大好き!」




09/07/13

よくわからん話だ…たぶんなまえちゃんは留学とかしてた設定?かと。←
さっけさんは言葉遣いがかわいい。


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