男ってやつは(前田慶次)
ぎゅう、と抱きしめたらそれだけで壊れてしまいそうな華奢な彼女を抱きしめてしまったのは、頭で考えるまでもなく体が動いてしまったからであって。衝動と言うか何と言うか、理性とかそういう大事なもんもどっかに吹き飛んでしまった結果だった。
これでなまえが俺を拒否したとしても、俺的にそれは想定の範囲内であってもちろんショックを受けることは受けるけど、しょうがないと納得せざるを得ない状況。俺自身がそれを作り出してしまったのだから諦めるしかない。
「慶次っ…苦しい」
「あ、ごめん!」
苦しいと言って身じろぎしたなまえ。つられるように腕の力を少しだけ弱めると、やっと息が出来るようになった、と言ってなまえが息を吐く。その吐息は俺の胸元にふっと当たって消える。弱めた腕の力は少しだったから、俺となまえの体はまだ密着しているせいだ。
「急に、こんなことするから…びっくりして、心臓痛いんだけど」
「俺はちゃんと前に言ったよ、野獣だからって」
「あ、あれ冗談じゃなかったの…!」
「二人きりで会うのは生殺しだっても言ったろ?」
「言ってた、気がする」
「俺はずっと、なまえとこうしたいって思ってたから。そりゃあもちろんこれ以上にも進みたいトコロだけど」
「こ、こらぁ!」
ちょっとだけ自由になった腕を振り上げて俺の肩を小さく叩くなまえ。自然と顔は上を向いて、なまえのつむじを見てた俺とばっちり目が合った。
「なまえかわいい、キスしたい」
「な!」
「なぁー、だめ?」
「ダメ!ダメダメ!」
「えー」
「ダメったらダメ!」
「…そんな何回も言わなくても、」
さすがにしょげる。
でも真っ赤になったなまえを見ていたらどんどんキスしたくなってきた、俺どんだけ欲求不満なの。
背中らへんにあった腕をするすると下ろして右腕でなまえの腰を支えるようにまた引き寄せた。
「ひゃ!け、慶次…?」
「なまえ、目瞑って?」
「えぇぇー!?」
「キスしたい、目瞑ってよ」
「そ、んなことはっきり、言われて、すんなり目が瞑れるとでも…?」
「本当にイヤなら引っぱたいてでも逃げてくれよ」
きょろきょろと落ち着かずに彷徨っていたなまえの大きな黒目が俺を捉えた。相変わらず顔は真っ赤でかわいいったらない。薄っすらと涙を湛えた瞳はうるうるしててもうこの状況でそんな顔されたら俺…!!
「むぅ…」
小さく唸ってゆっくりと目を閉じたなまえ。俺の目の前にあるなまえの顔は真っ赤で、睫毛はふるふると揺れている。白い頬に影を作るそれはなまえの緊張をダイレクトに俺に伝えてくるんだ。
まずは少しだけ唇に触れてみる。予想通りの柔らかさを持ったそれ。小さく食むように合わせるとなまえが後ろに引こうとする。追いかけるように角度を変えて合わせながら腰に添えた腕と反対の腕をなまえの後頭部に添える。これで逃げられないだろ?
ゆっくりと堪能した俺が唇を離すとちゅ、っとリップ音が静かな部屋に響いた。
「ふぇ…」
「なまえ?え、」
いつの間にかなまえの両手は俺の服をしっかりと掴んでいて、その手は軽く白くなるほどに強く握られていた。屈むような態勢を取っていた俺が上体を戻すと、なまえは俺の胸元におでこをくっ付けてぐりぐりと押し付けてきた。
「なまえ?イヤだったか?」
「…ううん」
「え!?」
「イヤじゃなかった…」
「よ、よかった…」
今は下を向いてしまっているなまえの表情はわからないけど、垂れた髪の隙間から覗く耳が真っ赤だったので、まだ顔も赤いんだろう。もうあれだな、完璧な照れ隠しってやつだな!
「ごめんな、ほんとに俺…我慢できなくて」
「慶次のばか、急なんだから」
「ずっとしたいと思ってたし、そう伝えてたつもりなんだけど」
「…本気とは思わないじゃんか」
「はは、俺は嘘は言わないぜ?」
二人きりで会ってて、自分を抑える自信がなかったから。ちゃんとそう伝えてたけど。やっぱり冗談だと思ってたんだなぁ。
「な、なまえ!もう一回、」
「調子乗んな!」
「えー頼むよなまえー」
「ダメ」
「…うん、無理!」
最初と違って暴れだしたなまえを押さえながら思う存分なまえの唇を味わった俺は、最終的にそれ以上に進みたい気持ちがどんどん強くなって、結局なまえを解放できたのはだいぶ時間が経ってからだった。
ごめんなまえ!
でもなまえがかわいいのが悪い!
いちゃこら慶次…え?なってない?すみません力不足です。リハビリリハビリ、慶次の口調よくわかってないですよね私…。慶次ファンの方、拙宅にはいらっしゃってくださっているのでしょうか?もしいらっしゃいましたらごめんなさい土下座します!
10/02/28
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