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真夜中24時(長曾我部元親)








黙々と教科書と睨めっこしながらプリントの空欄を埋めていく。手に持ったシャーペンは私の熱が移ったのか、すっかり温くなっていた。対照的に、机に向かう私の足先はびっくりするほど冷えていた。



(うう、寒っ…)



苦手教科の試験が明日に迫っている。なるべくたくさん頭に詰め込んでおかなきゃ、と一夜漬けをしている時点でそんなにやる気があるとは言えないんだけど。


時計を見るといつのまにか真夜中と呼べる時間だった。すぐそこまで本格的な冬が迫っているこの季節、この時間になれば寒いのは当たり前だ。膝掛けを羽織ってぶるりと震える体を押さえ込む。


何か暖かいものでも飲んで休憩しよう、根を詰めたってこの寒さじゃ頭になんて入らない。







部屋を出て一階に降りる。家族はもちろん寝てしまっていて、リビングにもキッチンにもひやりとした空気が満ち始めていた。

棚からカップとココアを取り出して、粉末をスプーンで掬って入れる。こぽこぽといい具合に湧いた状態を保っている電気ポットからお湯を少し注ぐと、ココアのいい香りが広がった。次はカップを持ったまま冷蔵庫のドアを開けて、牛乳をいっぱいまで注ぐ。レンジに入れて少し待てば、チン!と薄暗い部屋に不釣合いな小気味よい音が響いて出来上がりを告げた。


くるくるとスプーンで茶色と白の液体をきれいに混ぜ合わせながら、私は部屋に戻るために階段を静かに上った。


中に入ると机の脇にあるベットの上で、私の携帯が着信を知らせるランプをチカチカと光らせて主張しながら震えている。



(こんな時間に誰だろ、)



ぱかりと開いた携帯のディスプレイ。表示された名前を見て私の頬はたぶん…緩んじゃった。



「もしもし」
『おぅ!勉強進んでるか?』
「んー…あんまり」
『俺もだから安心しろって』
「…そこ安心するとこじゃなくない?」



細かいことは気にすんな、って。相変わらず豪快ですね。


元親くんは同じクラスの隣の席。付き合ってるとかじゃ全然なくて、たまにこうやって夜中でも関係なく電話を掛けてくる、そんなただのオトモダチ。今日は試験勉強のために起きてたけど、いつもならそろそろ寝ている時間。まあ私が寝ていようが何をしていようが彼は気にしていないらしく、悪ィ寝てたか?とか(悪びれもせず)言いながら今日見たテレビのおもしろかった話とかを一方的にして、満足したら切ってしまうのだ。彼の話がおもしろくて目が冴えてきてしまった私を置いて。じゃあまた明日なーとか言って。



『明日で試験何日目だっけか?』
「えーと2日目。明後日までかあーげんなりするね。もう試験爆発しろ」
『おっかねーなあ』
「元親くんだって思ってるくせに」
『俺はそこまで思ってねぇ!』
「あれ、そうなんだ。意外意外」


笑いながらそう言ったら、何故か電話の向こうでじっと黙ってしまった元親くん。どうしたっていうんだ、爆発しろとかNGワードだった?



『なまえ、明後日の試験が終わったらよぉ、遊びに行かねえか?二人で』



…はい?


NGワードとかなんとかバカなことに脳みそを使っていた私の頭から、今の元親くんの発言でさっき覚えた公式が3つくらい吹っ飛んだ気がします、私の記憶を返せ!



「…そ、それはいったい…」
『用事が無かったらでいいんだけどよ、その…だめか?』
「二人で、行くの?」
『おぅ、二人でだ』


急に、二人で遊びに行こうだなんて…一体何がどうなってそうなったの。いつもそう思ってたけど、元親くんの思考回路は意味がわからない。というか、飛び過ぎじゃない?


開いた口が塞がらないまま、返事をしなきゃって焦って、でもどうしたらいいのかよくわかんなくて、いろいろ考えてたら元親くんの声が聞こえてきた。



『嫌ならいいぞ、なまえ。断わってくれても俺は、』
「い…やじゃないよ!行く」
『…お、おぅ!じゃあまた学校でな!勉強がんばれよ』
「う、うん、元親くんもね」



通話終了ボタンを押して握ったままの携帯を閉じる。
…行くって今言ったよな私。


なんだこれデートみたいじゃない?私と元親くんはただのクラスメイトで隣の席なだけの、オトモダチなのにね。


そんなことを考えてたらちょっとほっぺたが熱くなってきて、はっと我に返る。机の上のココアを見ると、もう湯気はすっかり収まって温くなってしまっていた。



どれだけ固まってたんだ私は。









学パロ元親。ぶっちゃけお相手は誰でも良かった気がする↓元親くんって呼び方もいいなあ。そしてなんか続きそうな二人のお話。


09/11/29


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