獣、衝動(猿飛佐助)
※若干破廉恥なので苦手な方はバックプリーズ!
上田の城に仕えて2年。
代々真田家に仕えるみょうじ家の次女として生まれたなまえは、病に倒れた父に代わり入城した姉の輿入れを機に上田城に来た。新入りの頃は雑用をこなすだけで精一杯。朝起きて仕事を始めると、食事さえも慌しく摂り、日が沈むまでに必死に仕事を終えて布団に入り泥のように眠る生活だった。
それも最近では落ち着き、要領良く且つ効率的に仕事が出来るようになった。おかげで今、こうして休憩時間がもらえているのだ。
「ふう、いい天気」
女中の部屋が集まる廊下の縁側、お茶を注いだ湯飲みを手に座した。夏の終わりのこの季節、裏山からは未だたくさんの虫の声が響いている。太陽も元気そうではあるが、日陰から心地よい風が吹いていてゆっくりとなまえの肌を撫でた。
手に持った湯飲みに一度口を付けたとき、小さな影が一瞬地面を走ったように見えた。何の気なしに上を向けば、屋根からこちらを覗き込むようにして見下ろす人影。日を背にして立っているその人の顔は見えない。
「なまえちゃんだ」
「その声は…佐助さま?」
「正解!はは、上向きすぎ。口開いちゃってるぜ?」
慌てて口を押さえると佐助はもう一度笑って地面に降り立った。なまえはそんな佐助に向かって軽く頭を下げる。
「お疲れ様です、おかえりなさいませ」
「うん、ただいま。なまえちゃんは休憩中だった?」
「はい、ちょっとだけお時間頂いちゃいました」
「今日は天気もいいし、縁側気持ちいいもんなぁ」
「本当に。佐助さまはまだお仕事が?」
「いんや!もう一段落着いたから、湯でも浴びて休むよ」
近くでよく見ると、佐助の忍装束は泥やら何やらで汚れている。黒ずんでいる所は…血、だろうか。
「ではお湯の仕度をしておきますね」
「あぁ、よろしく」
「出来次第、お声を掛けに参ります」
「はいよー」
いつもの返事の後に小さく風だけを残して佐助の姿が見えなくなると、なまえは立ち上がって湯殿へと向かった。
仕度を終えて佐助を呼びに部屋を目指すなまえ。障子の前に着くと、正座をして声を掛けた。
「佐助さま、」
「なまえちゃん?」
「はい。準備、整いました」
僅かな物音の後、すぅと障子が開く。忍装束は上半身だけが薄着になっており、手には汚れた上着と着替えの浴衣を持った佐助が出てくる。
「洗濯も頼める?」
「はい。では湯殿までお供いたしますね」
忍装束の上下を揃えて預かるため、なまえは佐助について湯殿へ戻ることになった。入り口の前で待とうと立ち止まると、佐助が振り返ってなまえを見る。
「あれ。頭、何かついてるよ」
「え、本当ですか?」
「んー…蜘蛛だ」
「きゃ、さ、佐助さま取ってください!」
「ちょっと目ぇ瞑っててね」
言われてぎゅうと目を閉じる。真っ暗になった視界、目の前には佐助の気配を感じる。ゆっくり頭に手が伸びてくる。
え?
触れたのは唇。柔らかい感触に思わず目を開けると、すぐ側で困ったように笑う佐助の顔で視界は埋まってしまった。頭に伸びていたはずの手はなまえの両目を覆う。
「佐助さま?」
「なーに?」
「これでは前が見えません」
「見ちゃだめ」
「なん、で」
「俺いま余裕ない顔してるから」
「んぅ、ん」
どういう意味かと尋ねようとした唇は再び合わさって、口の代わりに鼻から息が抜けてしまい、なんとも甘えた音が出る。
恥ずかしい。
顔が熱い。
一度目よりも強引な接吻に翻弄されているなまえ、その間に肩に乗せられた手はするりと動いて着物の合わせ目へと進む。衿元から肌に触れる佐助の手の感触。塞がれた目は開放されたが、開いたそこに佐助の姿はない。いつの間にかなまえの背後に回っていた体から伸びた手の片方は腹部に絡み付いていた。
やわやわと感触を楽しむかのように揉みしだかれる乳房。なまえの体はどんどん熱さを増していくばかり。次第に存在を主張し始める胸の飾りに気付いているであろう佐助は、掌で軽く押すようなもどかしい刺激を与え続けた。
「佐助、さまぁ」
これまでより色のついた声で佐助を呼ぶなまえ。その声を聞いた佐助は満足そうに答える。
「なぁに?なまえちゃん」
同時になまえの肩口に埋められていた顔を少し上げると、そこに見えた耳を軽く食み、舌を這わせる佐助。ぞわぞわと体を駆け巡る快感に、息が荒くなる。佐助は力の抜けてきたなまえを支え、湯殿に入ると戸を閉めた。
硬い長椅子に着替えである浴衣を片手で器用に敷いた佐助は、そこへとなまえの体を横たえた。既に瞳は潤み、僅かに肌蹴た胸元から色香が匂い立つ。見下ろす佐助はどこか焦っているようになまえの内股をまさぐる。
片手は一際熱を帯びる内腿へ、もう一方は胸元へ。乳房を弄る手は、先程までよりも確かな刺激をなまえに与えている。首筋から胸元、白い腹へと降りてきた佐助の舌。なまえは時折肌に触れる佐助の髪がくすぐったいのか、体を捩って逃れようとする。
「どう…されたのですか、っん」
「どうって?」
「佐助さまはっ、こんなこと、しないお方…です」
快楽の波に抗おうとするなまえは必死に問う。真田忍隊の長ともあろう人がここまで心を乱すとは何があったのかと。
「香に酔ったか狂気にあてられたか…な」
佐助は手の動きを止め、少しだけ体を離す。見下ろすとなまえの白く柔らかな肢体、見上げてくる瞳。最後の一線を越えずとも…汚れた体で触れていいものではないと残った理性が警鐘を鳴らす。
知れず、眉間に皺を寄せて苦悶の表情を見せる佐助に、なまえは居た堪れなくなる。瞳にはっきりと感情を浮かべる佐助を初めて見たのだ。
離れていた佐助の体を、頭を抱き込むように引き寄せる。露になった胸元に吐息と髪が触れて、同時に少し正気に戻る。無礼にはなっていないだろうかと不安がこみ上げてきたが佐助は何も言わずにされるがままだった。
「…このままじゃ俺様、なまえちゃんのこと穢しちゃうよ?」
「穢れるなどということはありません。私でよければ、その…お使いください」
「っ!使うって…そういう言い方はダメだ」
俺は、誰でもいいわけじゃないから。
心を抑えて感情を殺して。そうしなければならないのに、未熟な自分に嫌気が差す。忍はただの道具、心を持たない道具。そう言われて育ってきた自分は、真田へ来て教えを覆されてからも、心を殺してでも強くあろうと思っていたはずなのに。
「子孫を残す欲求は殿方の本能と聞いています。忍とてそれも本能なれば…佐助さまが私を選んでくださるのなら、なまえは嬉しいです」
なまえの目尻に溜まった涙がこめかみを伝って落ちる。佐助はそれをそっと拭ってから笑いかけた。同時に止まっていた手を動かし、背中に回して掻き抱く。
「優しくする、嫌になったら言って?」
「大丈夫ですよ、嫌になどなりません。好きになさってくださいませ」
なまえちゃんそれ殺し文句。
ぼそりと言って再び手を這わせる佐助。敏感な部分を緩く撫で、至るところに口付ける。髪を梳くようになまえの手が頭に触れると、許されている気持ちになって行為は進んだ。
「佐助さま、」
「なまえちゃん…なまえっ、」
苦しそうにお互いを呼ぶ声が、さらにお互いを高める。どちらの熱かもわからないものに侵されて呼吸はどんどん荒くなって上り詰めるのに、不思議と心は穏やかだった。
「あはー、なまえちゃんもお湯浴びないとね」
「さ、先に佐助さまが…!お疲れでしょうし、」
「一緒に入ろう、うん、そうしよう」
「でも私、まだ仕事中です!」
「じゃあこれもお仕事お仕事♪背中流してくれる?」
「は、はい!では、」
「あーいいよいいよそれ着なくて。時間もったいないし」
「でも、」
「でもは聞きませーん!」
09/09/03
なんだこいつら!笑
なまえちゃんは女中さんだけどまだ小娘なので堅すぎない口調で…って思ったらなんか不安定になってしまった↓
直接的な表現ないし、これって裏じゃないよね?←聞くな
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