版権 天邪鬼と恥ずかしがり屋(花月) エイプリルフールから4日後、春休み最後の週末。俺はなぜか勝ち誇ったような笑みを浮かべる恋人に上から見下ろされていた。 「…悪いものでも食べた?」 「何が言いたい?」 「おかしい、真がこんなことするのおかしい!」 「フハッ、俺だってたまには甘えてぇし、甘やかしてぇと思ってんぞ」 「明日は大吹雪だ…」 高校を卒業して無事に大学に進学、悔しいけれど真とは学力の差があるから同じ大学って訳にはいかなかった。それでも比較的近いところに入学出来たし、ルームシェアっていう名の同棲をしないかと言われて今に至るわけだから何も不満はない。 高校時代にはそりゃいろいろとあった、ありすぎた。でもその過程を踏んだからこそ今の俺たちがあるってことを考えたら完全に許すことは出来ないけど、こうして付き合うことは出来る。今となっては悪童と呼ばれていたこと自体が真にとって黒歴史であり、その頃に比べたらだいぶ丸くなったとも思う。それでも急に甘やかすなんて単語が出てくるなんて誰が予想できようか、いや、できない。本音を言うとしたくない。だって悪童、成長しても俺の中では高校の印象が強いからかどうも勘ぐってしまう。この恋人なんて関係になってから、と言うかあの頃から俺に対しては危害らしい危害を加えようとはしなかったことは知ってるから安全なのだけど。 俺よりもちょっとだけ大きい手、でも同じぐらいの太さの指が俺の髪をすいていく。その手つきが優しくて自然と笑みがこぼれてしまう。それを見逃さないのが真、何笑ってんだよ、と言ってわざと強めに頭を撫でてきた。そのせいでぐしゃぐしゃになった髪は崩した本人によって直された。 さっき見下ろされている、と説明したのは文字通りで俺が真の膝の上に頭を載せている…世間一般で言う膝枕の態勢だからだ。つい先ほどまではどっちが膝枕をするかという戦いを繰り広げていたのだが…結果は真の勝利だった。俺だって真の頭撫でたかったのに…とは思ったものの、結局はこうして一緒にいることができるから問題ないのかと開き直った。それに、2人で選んだお気に入りのソファの上で休みをこうやって満喫するのは嫌いじゃない。 「もうちょっとでお昼だけど、リクエストは?」 「お前の作ったモンなら何でも」 「それ一番困るやつ…楽したいからパスタな」 「じゃあまだ時間あるからこうしてろ」 「膝痺れないわけ?」 「こんな脳みその詰まってねぇ軽い頭で痺れるかっての」 心配は杞憂だったようだ。素直に大丈夫と言わないあたりは昔から相変わらずだけど、口元が綻んでいるのは下から見上げている俺にはお見通しだ。そして真からも俺の表情が見えていることに失念していた。 突然に鼻をつままれたことに文句をつけようと口を開こうとした。が、言葉になる前に真の口の中に消えていった。そしてすぐに離れる温もり。ちょっと物足りない気がするのが顔に出ていたのか、悪どい笑みを浮かべてこちらを見てきた。 「もう1回、してやろうか?」 付き合っていれば慣れというか、耐性というか。そんな笑みを何とも思わず、むしろ逆に身体を起こして仕掛けてやった。それはさっきと同じようにただ唇が触れ合うだけのものだったけど、真は目を見開いて驚いていた。 「ご飯、作ろうか」 火照る頬を隠すようにするりと真の手から抜け出してキッチンへと足を向ける。何やら呟きが聞こえたけど俺は気にせずにパスタを茹でる準備をした。 天邪鬼と恥ずかしがり屋 (俊から…マジかよ…) (普段し慣れないことすると恥ずかしいな…) ―――――――――――― キャプ月の日!ぎりぎり間に合った、てなとこですかね…去年日月だったんで今年は花月!うん!とってもこれじゃない感!!!! [*前へ] [戻る] |