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Welcome Dream World(森+宮+月)
普段ストバスをするために立ち寄る公園の時計台の下、それがいつもの待ち合わせ場所だった。少し離れたところにあるアスレチックで遊ぶ子供たちをほほえましく見ながら、これから来るであろう2人を待っているところだ。海常の森山さんと秀徳の宮地さん、それぞれバスケ強豪校で3年生の先輩。学校も学年も違うし、ポジションも違う。それなのに、それだけど。今、待ち合わせをしているのがその2人、というこの現状。何の縁でと聞かれると…波長があっただけなのかもしれない。こういうのが運命なのかもな、その単語で秀徳にいる緑の髪の後輩が思い浮かんだ。

「おっ待たせー!」

急にそんな声と共に肩に衝撃、しかも左右どちらにも。ぼーっとしていたため、忍び寄る気配に気づけなかったようだ。振り返らずともこんなことをするのはあの人たちしかいないけれども。

「2人とも俺の身長を縮めたいんです…」

か、と最後まで俺の言葉は続かなかった。正確に言うと続けることが出来なかった。それは、振り返った先の2人が俺の知っている姿とは違っていたから。確か、いや確実に、あの2人は男子バスケットボール部に所属していたわけで。

「どうした伊月?」

「何ぽかんとしてんだよ」

性別は男で、決して女子高生ではなかったはずだ。目の前にいたのは悪ふざけした女装のレベルではなく、本物の女の子だった。だとしたら考えられる可能性はただ一つ、これは夢か。そういえば日差しは強いけど暑くはないし、何より2人の女の子を森山さんと宮地さんだと認識している。うん、絶対に夢だ。そんな自己完結を1秒に満たない速度で行い、こちらを見る2人に笑顔で大丈夫です、と返した。それにしても…夢の中で夢だって自覚するなんて初めてだな。それほどに現実ではありえないってなことなんだけどさぁ…ハッ!

「自覚を持って字ぃ書く!キタコレ!」

「あー…うん、大丈夫っぽいな」

「いつも通りキテないし大丈夫だろ」

「酷いですよ2人とも!」

この微妙に冷たい反応はやっぱりあの2人だ。いつものように書き込もうとしたけど、悔しいことにネタ帳を持ってないみたいだ。起きた時に覚えてればいいけど、と改めて向き合うと、とんでもないことに気付いてしまった。

「…女の子なのに俺より背高いとか卑怯ですよ!」

そう、そうだよ!いつもより合う目線は低いけど下を向くほどではなく、同じかほんの少し上。夢の中でぐらい自分の身長を高く感じさせてほしかったけど、そこら辺は都合よくはいかないらしい。

「知らねぇよ気にしてんだ轢くぞ」

「ごめんなさい」

「宮地はスタイル整ってるからいいじゃないか」

笑顔の圧力はとっさに謝罪するほど。後ろに般若的な何かが見えます本当にごめんなさい。男の時よりも威圧感があるのは気のせいではない、本当女の子って怖い。そんな俺たちの様子を気にする風でもなく、森山さんはじとっと宮地さんを見ているし。いえいえ、森山さんこそスタイル抜群じゃないですか。

あぁ、あれかな?元が残念という前置きがあるけどイケメンだから美人なんでしょうね。でも残念なんだろうな、むしろ残念であって欲しいな…ドルオタと男好きとか。想像したけど違和感ないなぁ…だってさ、ただの美人なんてこの2人のキャラじゃないじゃん。なぜかさっきの発言から言い争いになったようでぎゃーぎゃーと騒いでいる姿を見て思う。と言うかこれ、端から見たら泥沼に思われそうだよな…どうにかして先輩方を止めようと口を開きかけたのだけど。

「伊月もそう思わないか!?」

「お前は違うと思うよな!?」

「…へ?」

いつの間にかよくわからない論争に巻き込まれていました。え、全然聞いてなかったけど?何の話かさっぱりわからないよ、俺。でも下手に発言するともっとこじれるのは目に見えている。そこから更なる論争が繰り広げられるということはすでに経験済みだ、もう勘弁していただきたい。正面からじーっと見つめる視線は何か発言しろ、との無言の訴え。

あー…森山さんはもともと切れ長の目だったからクールビューティだなぁ…対して宮地さんはくりっと丸くて大きい目をしているから可愛いよなぁ…顔を背けて現実逃避をしながらもこの状況をどう切り抜けようかと頭はフル回転している。どちらの機嫌も損ねず、というのはかなり難しいものだというのに…原因が何かということもわからない今は、言わば最悪の状況だ。仕方ない、最終手段だ。

「えーとですね、2人とも綺麗だし可愛いしかっこいいし…俺の憧れの先輩なんでけんかはしないで欲しいで、す」

このとおり、2人のことをほめながらもけんかはしないでとお願いすること。俺のことをなんだかんだ言いつつも後輩として可愛がってくれているのを逆手にとって。さすがに言ってて恥ずかしくなり、最後は声が尻すぼみになってしまったけど…静寂。何も反応がないことに不安を覚えて恐る恐る2人の方を見る。視線がばちりと合ったのが合図だったらしい。

「いーづーきー!なんなのお前!可愛いのはお前だろ馬鹿!」

「そうだよね、伊月ってこういう子だもんね!天使だったの忘れてた」

「ちょっ…2人とも苦しっ…」

途端、がばりと俺の方に飛びつく影2つ。何とか踏ん張って、女の子に押し倒されるという不名誉な事態は免れたけど、首!腕が首にまわっててそれが地味に苦しいです!頬ずりをされ頭をぐしゃぐしゃに撫でられ挙句左右から可愛いだの何だのという言葉を最後に、俺の意識はフェードアウトした。


「…ん?」

ぱちり、という音がぴったりなくらい唐突に目が覚めた。傍らの携帯を見るとアラームが鳴る7時少し前。確か今日は…あぁ、ストバスだ。3人で遊ぶのは久しぶりだなぁと伸びを1つして布団から起き上がる。今日は何か夢を見ていたようだけど…何だったっけ?

「あ、自覚して字ぃ書く、キタコレ!」

ふと思いついたダジャレに、今日も絶好調!なんて上機嫌になりながら準備に取り掛かるのだった。



Welcome Dream World



――――――――――――


森山(♀)は綺麗系、宮地(♀)は可愛い系。急に思いついたものでした。森山さんはヒールで盛ってて高いけど、宮地さんはぺったんこなの履いてるといい。言い争いの種は貧乳と巨乳とかのベタな感じで(笑)あ、普通の友人関係ですよ。

これのにょたいづver.とか宮地さん視点で書きたい!

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