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Confusion!!(修正前)
1.
あの後、罪歌について調べてみると、幾つかの事が解った。


罪歌とは、かつて新宿にあった妖刀で、人を乗っ取るという伝承があること。

被害者の話からすると、正確な姿を捉えた者こそいなかったけれど、誰もが薄れゆく意識の中で『赤い眼』を見ていたこと。
……まあ、私も経験者に含めるならば、私は意識は薄れていないから例外なんだけど。

そしてー罪歌が人を斬る目的。
それは、人間を愛する為だったのだということ。

でも、私の情報網では、何故罪歌が人を愛する為に斬るのかまでは解らなかった。

……こういう時、あの人ならどうするんだろう。

いざという時、彼の事が頭に浮かんでしまうのが本当に嫌になる。
だって、一度思い出すと、凄く辛い。
何が辛いって、折原さんが単に酷い奴じゃないって事が解る思い出ばかりが頭の中に浮かんでは消えて行くのが嫌なのだ。
勿論、この間の事を忘れた訳ではない。
でもあれから時間が経って、暫く距離を置いた事で、私が失ったものは、自分にとって大きなものだったんじゃないかと思い始めている自分がいる。

それが良い事なのか、悪い事なのか。

私には、まだ解らなかった。


♂♀


私は、何処へ行く訳でもなく、池袋の雑踏の中を彷徨っていた。
本当は帰ってしまいたかったのだけれど、静雄さんと「ネットカフェまでは一緒に帰る」という約束をしてしまったので帰れずにいたのだ。
このタイミングで、静雄さんやセルティさんに会えればそれに越したことはないのだけれど、こういう時に限って2人は見当たらず、ひたすらひたすら歩き続ける事しか出来なかった。


そして私は、ある1人の少女が、警官と話しているのを見つける。


「あー、大丈夫かな。この近くなら、送っていこうか?」


警官の人が彼女に話しかけているのが聞こえた。


「あ、大丈夫ですよ。この子は私が送って行きますから」

「愛峰先輩!?」


私は彼女ー園原杏里ちゃんの隣に歩み寄ると、警官の人に向かってそう言った。
本当は私も高校生なのだが、今は全体的に黒っぽく、大人っぽい私服を身につけている。
これならきっと、私が高校生には見えないだろう。
杏里ちゃんは驚いた表情を見せたが、私はそんな彼女に小さく微笑んで見せた。

その時、警官の人が突然無表情になって、そのまま各々の片耳を手で覆った。
どうやら、無線機か何かのイヤホンを耳につけていて、何かの連絡が入ったようだ。


「……了解、急行します。
葛原さん、行きましょう」

「この人に送って貰えるなら大丈夫だな。丁度良かった。仕事が入っちまった。気をつけて帰ってくれよ、2人とも」


そして葛原さんは、そのまま若い仲間の警官さんと一緒に夜の人ごみの中に消えて行った。
直後、杏里ちゃんが私に話しかる。


「あの……愛峰先輩、どうして此処に……?」

「ああ、色々と事情が合って、知り合いの仕事が終わるまでは帰れなくって。それで街をブラブラしてたら、偶然杏里ちゃんを見つけたんだ。
杏里ちゃんは何してたの?」


尋ね返すと、杏里ちゃんはとても言いにくそうにしていたので、私は「無理に話さなくていいよ」と慌てて言った。


「すみません」

「いや、謝らなくてもいいよ。
それより、私も暇だし、杏里ちゃんの事送っていくよ」

「いいんですか?」


その問いに、私はコクリと頷いた。
杏里ちゃんはちょっとだけ笑って「ありがとうございます」と言う。

ーやっぱり、杏里ちゃんはいい子だなあ……

そう思いながら私と杏里ちゃんは歩き始めた。


ー自分達が、誰かに後をつけられているとも気付かずに。

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