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Confusion!!(修正前)
3.
「でも……私は、本気の怒りを静雄さんにぶつけることは出来ない。それが出来るのは、折原さんの前でだけなんです」


私がこの街に来てから怒りをぶつけていたのは、いつも折原さん相手だった。


「だから私は思いました。
『愛峰珠音が唯一人間らしくいられるのは、折原臨也の前でだけだ』って」


折原さんは、いつも無表情だった私を人間らしくしてくれたんだ。


「貴方と一緒にいれば、私は本来の私らしく振舞えるんじゃないか。そう思いました」


そして私は、彼に精一杯の笑顔を見せる。



「だから私は、此処に戻って来ました」



折原さんは、黙って暫く私の方を見つめてから言った。


「ねえ珠音。俺はね、今最ッ高に気分が良いんだよ。
どうしてか解る?
どんな理由があれ、最終的に君が此処に戻って来てくれたからさ。
正直、君が例えどんな決意を固めて此処に戻って来ようが、俺には関係ない。それを知る権利はあるとしても、義務は無いからね。
でも……君がそこまで考えてたとは知らなかったよ。ぶっちゃけ、返答次第では、君の昔話だけ聞いたら、珠音の事追い払おうかと思ってたんだよねえ」

「えッ……」

「でも、気が変わったよ。
大丈夫、追い払ったりなんかしないからさ。
俺の事を必要としてくれた君に敬意を表して……そうだな、珠音の欲しい情報を1つ無料で提供してあげよう」

「……本当ですか?」

「ああ。
俺は情報に関しては嘘はつかないからね」


私は深呼吸をした。


「……じゃあ、『罪歌』が誰なのか教えて下さい」

「やっぱりね。そう言うだろうと思ったよ」


折原さんは、満足げにニヤリと笑う。


「『罪歌』の正体はー園原杏里ちゃんさ」

「……え?」


私は耳を疑う。


「ただ、今まで斬り裂き魔として活動していた『罪歌』は、園原杏里では無いよ。あれは、母である園原杏里の子の『罪歌』さ」

「あの……イマイチよく解らないんですけど……」

「『罪歌』はね……愛を表現する方法として、人を斬る事を選んだのさ。肉から、血から、心からー命に至るまで……斬る瞬間だけが、人間の全てと触れ合える瞬間だからね」

「……つまり、『罪歌』は、持ち主が他人を斬れば、子供の『罪歌』を造れる、って事ですか?」

「まあ、そういう事になるかな」

「でも……そしたら、今まで斬られた人の数って、相当いるんじゃ……?」

「その通り。俺の考えだと、『罪歌』の子供達を全員集めれば、きっと『ダラーズ』や黄巾族と同じ 位の力を発揮出来ると思うよ」

「黄巾族……?」


私は首を捻る。


「そう、黄巾族。珠音は気付かなかった?最近、街で黄色い布やら帽子やらを身につけたガキどもが増えてきてるのを。
あの連中が、黄巾族だよ」

「子供が作ったチーム……?
それが、『ダラーズ』や『罪歌』と並ぶ位凄いんですか?」

「そうさ!ガキのくせして、あれだけ大量の人数を纏めてるんだよ?凄いと思わない?」


確かに、黄色の布やらを身につけた人が全て黄巾族ならば、人数的にはかなりのものだ。それを子供が仕切っているとしたら……脅威的だろう。


「……黄巾族のボスは、私の知ってる人ですか」

「ここから先は有料だよ?楽しみがなくなっちゃうからねえ」


折原さんは、人差し指を唇に添えてクスクス笑いながらそう告げた。


「……。」


黙りこくる私を見て、折原さんはニヤリと笑う。


「そんなに心配しなくても大丈夫さ。そんな事より、久々の平和を謳歌したらどうだい?」

「……そうですね。じゃあ、お言葉に甘えて、充分に平和を謳歌させて頂きます」


私は聞き出す事を諦め、そう答えた。


「それじゃあ、俺はそろそろ仕事に戻るとするよ。珠音も荷物を纏めたらおいで」


そう言って立ち上がり、折原さんは部屋を出て行こうとする。


「折原さん」


呼びかければ、彼は此方を振り返った。


「……抱き締めてくれませんか」

「……は?」

「あの……仲直りの、印として」

「……。」



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