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Confusion!!(修正前)
2.
「でも……高2になってから、何処から情報が漏れたのか解らないけれど……私が殺人鬼だったということが皆にバレました。それからは、友達も周りから離れて行き……私の人生史上最悪の日々が始まりました」


周りからは『裏切り者』のレッテルを貼られた。
虐めは、小中学校の時よりもエスカレートした。
腕にカッターで『人殺し』と刻まれた。
生ゴミを無理矢理食べさせられた。
足の骨を折られた。


「……その頃からです、自殺掲示板に書き込みをするようになったのは。
そして、『ダラーズ』に入ったのも」

「……どうして、自殺願望があったのに、『ダラーズ』に入ったんだい?」


それまでずっと黙って聞いていた折原さんが、初めて口を挟む。


「賭けてたんです。
一緒に自殺してくれそうな人が現れるのが先か、ダラーズの掲示板を見て、生きる希望を少しでも見出だす事が出来るのが先か」


結局、自殺掲示板の方が先だった。


『HN:藍
死にたい』


毎日綴る、たった一言の書き込み。

どうせ今日もまともな反応は返って来ないんだろうな、と思っていた矢先。


『HN:奈倉
藍さん、一緒に逝きましょう! 』


返信が送られて来た。
暗い内容ばかりが綴られる自殺掲示板の中で、そのメッセージは余りにも異質で、不釣合いで、際立っていた。

この人なら、互いに変に干渉し合う事もなく、一緒に逝ってくれる。
そう思った。


「……それで、俺の書き込みに同意したんだね?」


折原さんが尋ねると、私は黙って頷いた。


「でも、わざわざ自殺掲示板なんか見る必要はあったのかい?誰かと一緒に死ななくても、自殺しちゃえば良かったのに」

「せめて死ぬ時位は、誰かと一緒が良かったんです。こんな人生だったんだから、せめて死に方位は自分の好きなように選びたくて」


私が答えると、彼は「なるほどね」と言って腕を組んだ。


「それで、折原さん」


私は彼の顔を真っ直ぐ見つめて言う。


「貴方にお話したい事があります」

「へえ?一体何かな?」


折原さんも私の瞳を真っ直ぐ見つめてくる。

赤い瞳はー不気味だけど、とっても澄んでいて、美しくて。
私は、逸らしたくても目を逸らせない。


「私は、貴方の事が嫌いです」


そして私は唐突に話し出す。


「でもーこの街に来て、あの時私の命を救ってくれたのは、紛れもない、貴方です」


そう、私の非日常の始まりは、この人との出会いからだったのだ。


「この街に来て、沢山の人と出会った。話した。そして、優しさに触れた。だから今の私は、あの頃とは違って、死にたいとは思ってません。寧ろ、生きたいって思ってます」


此処に来てからほんのちょっとしか経ってないけど、私はこの街が大好きなんだ。


「だから、私に生きる喜びを与えてくれたのは、折原さんなんです。
貴方の事は嫌いだとしても……折原さんには、心から感謝しています」


折原さんは、私の話を黙って聞いている。


「それに……今回貴方と距離を作ってから、思いました。『私は貴方がいないとこの街では生きていけないんだ』って」


やっぱり、独りは淋しい。

今まで孤独だった分、人と一緒に過ごす事の喜びは誰よりも解っているつもりだ。


「前にも言いましたがーきっと私は、今までも、そしてこれからも、貴方に依存して生きていく事になると思います」


私と折原さんは、見えない鎖で結ばれているから。


「折原さん。貴方は、私がこの街に来てから、本気で微笑んだのって、何回だか知ってますか」


いきなり尋ねてみれば、折原さんは困惑の表情を浮かべる。
私はそんな彼に微笑みながら答えた。


「2回。……いえ、今をカウントすると、3回です。
1回目は、『ダラーズ』の集会の後、貴方と話した時。覚えてます?私が貴方の前で初めて笑った時です。
2回目は……ほんの2日前、静雄さんに『お前は俺達に必要なんだ』って言われた時です。こんな事、今まで言われた事なかったから、本当に嬉しかったんです」


そう、よくよく考えてみると、私が心の底から微笑んだのは、折原さんの前と静雄さんの前でだけなんだ。

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あきゅろす。
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