Confusion!!(修正前)
8.
珠音が逃がれられない現実について考えていた頃ー
セルティ・ストゥルルソンは、「彼」と接触していた。
「やあ……君から会いに来てくれるなんて嬉しいよ」
『お前に依頼された仕事の件で、先月会ったばかりだろうが』
「まあいいじゃない、あの時は殆ど世間話もできなかったんだから。
……ところで、どう?あの矢霧製薬の事件からもうすぐ一年経つけれど……『首』は見つかったかい?」
どこか皮肉めいた笑いを浮かべて、折原臨也はセルティにお茶を出した。
『私の首のことはいいんだ。
……単刀直入に言うぞ。斬り裂き魔に心当たりは』
「三枚でいいよ」
淡々と喋る臨也に対して、セルティは『質量のある影』で創ったライダースーツから、同じく影で創った財布を取り出した。
中に入っている紙幣は本物であり、その中から一万円札を三枚取り出して臨也へと手渡した。
「それにしても……鎌だけじゃなくて、服も財布も『影』なんだねえ。強い光とか当てたら、ひょっとして影が消えて素っ裸になっちゃったりするのかな?」
『見たいのか?』
セルティの挑発的な言葉に、臨也は大仰に身体をのけぞらせて、嫌らしく笑う。
「別に?俺はどこかの闇医者や学生みたいな変態とは違って、首無しとか首だけに欲情したりはしないからさぁ」
挑発を返すような発言をした次の瞬間ー
臨也の首には、漆黒の鎌が絡み付いていた。
その絶体絶命な状況に対して、臨也は笑顔を僅かに薄め、降参だとばかりにゆっくりと両手を上にあげた。
『私はいい。次に新羅を貶めたら、ただじゃ置かない。詳しく言うとー全治三日ぐらいの怪我をさせる』
「……具体的にどうも。その冷静さから言って、ハッタリじゃなさそうだね」
『新羅は確かに変質的かもしれない。だけど、あいつが変だと言うのなら、私に対してだけ変であってくれればいい。お前達にどうこう言う権利は無い』
「愛し合ってるねえ」
なおも余裕のある臨也を見て、セルティは諦めたように鎌を解いた。
解放されただけでは飽き足らないのか、臨也は首無し女に対して、なおも皮肉の言葉を投げつける。
「もしかしたら、岸谷新羅はただの首の無い女が好きなだけかもしれない。他のデュラハンが現れて誘惑したら、案外コロっと心を奪われるかもしれないよ?」
『それは無いと思いたいけど……それならそれでいい。その時はー』
「新羅を殺して君も死ぬ?」
『いいや、近づかせないだけさ。私以外の首無し女をね。
あいつが私を好きってだけじゃなくて、今は私もあいつの事が好きだから……」
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