Confusion!!(修正前)
4.
ふいに、女の人の1人が言った。
「あ、あの……
奈倉さんは……死ぬつもりあるんですか?」
「無いけど?」
僅かの間、個室の中には他の部屋から漏れ出す音以外何も聞こえなくなる。
その内、女の人のうち1人が堰を切った様に喚きだした。
私は別に心底どうでもいいと思っているから、奈倉さんが死のうが生きようが気にしない。
それに、何と無くこの人は死ぬつもりないんだろうなあと思っていた。
だが、騙されていたのかと改めて認識させられると、やはり少しは怒りたくもなる。
まあ、過ぎた事は水に流すとして。私は兎に角早く死にたい。
この場で自殺してもいいだろうか。
でも、さっきのナイフ、奈倉さんに取られちゃったんだよな……
1人でぼんやりこんな事を考えていたけれど、奈倉さんの異様な雰囲気に気付いて、意識を現実に戻した。
「君達は…あ、藍ちゃんは別だけどー死ぬって決めたんだからさあ。もうほら、どんな事を言われても気にする必要ないじゃん。
騙されても罵られても、少し後には全部消えるんだ。
俺にこうして騙されているのが苦痛なら、舌を噛み切ればいいよ。舌を噛み切るってのは、別に出血多量で死ぬわけじゃない。ショックで舌の残りが喉を圧迫して窒息死するんだ。そうすれば嫌なことも何もかも無くなる。
存在しなくなるんだよ。
それなのに酷いなんて、酷いなぁ」
「そんな事は解ってるわよ!でも……」
「解ってない」
笑顔のままで、奈倉さんは続ける。
「解ってないよ、全然解ってない。
君はあの世には無しかないと言った。そこがね、違うんだよ。
もう苦しまなくて済む、そういう意図で言ったのかもしれないけどー死ぬってのはー無くなるって事さ。消えるのは苦しみじゃない、存在だ」
「何も無い状態が『無』じゃないんだよ。無というのは必ずしも『有』の対立存在ではあり得ない。君の言ってる無は、何も無い事、永遠の闇。だが、そこにはその闇を知覚している自分という存在があるじゃないか。全然無じゃないよそんなの。
苦しみから解放されようとして死ぬというのならば、『苦しみから解放された事を認識する自分』が必要じゃないのかい?
君達は『自分が何も考えていない事すら認識できない』という事すら認識できない、その状態が想像できてない。ー君達2人の考えは、本質的なものは何も変わらないよ。こんな事はあの世を信じていないならば小学生でも理解して、一度は恐れ、悩んでいる事だろう?」
……奈倉さんの言っている事が的を射ているかどうかは別として、あんな長台詞をペラペラと噛まずに言える所が凄いと思い、私は純粋に感動してしまった。
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