Confusion!!(修正前)
5.
話が落ち着いたので、私がそろそろ帰ると言うと、平和島さんが私を近場のネットカフェまで送っていってくれた。
別れ際、私が彼に「お仕事中なのに送っていって下さってありがとうございました」と伝えると、
「珠音、何かあったらすぐに言えよ。俺は別に、お前の事迷惑だなんて思ってねえんだからな」
彼はそう言って頭をポンポンと優しく叩き、去っていった。
『池袋の喧嘩人形』と恐れられているあの平和島さんが、私に気を遣って、まるで壊れ物を扱うかのように優しく優しく私の頭に触れていたのが解った。
頭に彼の温もりが少しだけじんわりと残っていて、私は無意識の内に頬が緩んでいた。
♂♀
翌日。
放課後、私は池袋の駅前をブラブラしながら考えていた。
ケータイの充電は今にも切れそうで、携帯用充電器も使い切ってしまった。
このままではケータイなしの生活をする事になる。
それに、財布の中のお金も、今日明日位までしか持たないだろう。
折原さんからは割と良い金額を貰っていたのだが、それらのお金を全てを財布に入れる訳にはいかず、新宿の某高級マンションに幾らか置いて来てしまったのだ。
出来る事なら、最低でも、ケータイの充電器とお金だけは取りに行きたい。
余裕があれば服も取りに行きたかった。
しかし、あのマンションに戻るには相当の勇気がいるし、もし折原さんと顔を合わせてしまったら洒落事にはならない。
ーどうしたものかな……
そう思っていると、30歳位の雑誌記者らしき男の人に話しかけられた。
「あの……突然すみません。
この街で喧嘩No.1は誰なのかって、そういう企画を立てて取材しておりまして……。
貴方は、池袋で【最強】なのは誰だと思いますか?」
池袋……最強??
余りにも突然の質問過ぎて、一瞬頭がオーバーヒートする。
だがすぐに冷静さを取り戻し、私は少しだけ考え込んだ。
池袋最強、か……。
「んー、そうですね……
純粋に強いのは、サイモンさん、セルティさん、平和島さんなんじゃないですか。
でも、権力で言えば…ダラーズとかも強いかもしれません。
因みにサイモンさんもセルティさんも平和島さんも、みんなダラーズに所属してますよ」
そう答えると、記者の人は目をパチクリさせて、「あの…セルティさんとは誰ですか?」と訪ねてきた。
「ああ、すみません。セルティさんは、俗に言う首無ライダーの事です」
「え……?
貴方、首無ライダーと知り合いですか?」
「えっと……その……まあ、一応。
サイモンさんとは余り関わりはありませんが、平和島さんとも知り合いと言えば知り合いです」
最も、平和島さんもセルティさんも、知り合いと言うよりかは友達に近いんだけど。
でも、余計な事を言って探られるのも嫌なので、私は端的にそう答えた。
記者の人は目を見開いている。
「あの、皆さんと、特に平和島さんとどんな関係なのか、詳しくお聞きしても宜しいですか?」
「いや、どんなって……
唯の知り合いというか、友達と言うか……。あ、でも、平和島さんは私の憧れ的存在かも……
まあ、セルティさんも憧れに近いかもしれないですけどね」
私がそう答えると、記者の男性は何やら感動した様子だった。
そして、「ありがとう!良い話が聞けました!」と言ってから、疾風の如く去っていった。
何だったんだ、あの人……
♂♀
結局、自分の荷物が恋しくて、私は新宿の某高級マンションの前まで来てしまった。
でも、そこから足が竦んで動けない。
今、折原さんと顔を合わせれば、自分は壊れてしまうかもしれないーそう思ったのだ。
10分程立ち竦んでいると、マンションの中から髪の長い女の人が出てきた。
あれはー波江さんだ。
「波江さんっ」
私は彼女の元に駆け寄って声を掛けた。
「あら、珠音じゃない。どうしたの?やっと帰ってくる気になった?」
「あ、いえ……そう言う訳では、無いんですけど……
あの……今、あの人此処にいますか?」
私が尋ねると、波江さんは溜息をついた。
「臨也は今出掛けてるわ。今なら中に入れるわよ」
わ、なんか凄くラッキー。
コレでひとまず安心だ。
「……お邪魔しても、いいですか?」
私が波江さんに恐る恐る言うと、彼女は冷めた目で私を一瞥してから、
「私の家じゃないんだから私に聞かないで自分で判断しなさい」
と言った。
ーよし。入ろう。
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