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Confusion!!(修正前)
1.
全てが終わった後、私と折原さんは新宿の某高級マンションに帰って来た。
ソファーでくつろいでいる折原さんにコーヒーを差し出し、私も彼の向かい側に腰掛ける。
そして、頭の中に沢山浮かんでいる疑問の数々を全部吐き出した。


「折原さん。全部説明して下さい。
帝人君が取引していたあの女の人は誰なんですか?
セルティさんって何なんですか?
あの張間美香さんは矢霧誠二君に何をして、彼に何をされたんですか?
そしてー張間さんが整形したってどういうことなんですか」


折原さんはハァ、と溜息をついて、「質問に答えて欲しい?」と私に尋ねた。
「当たり前じゃないですか」と答えると、折原さんは私に向かって手を差し出した。


「? あ、あの……」

「報酬。
かなり重大な情報を君に教える事になるんだから、俺はそれなりの報酬を君から受け取るべきだよね?」

「なっ……ちょっと待って下さいよ! 私、仮にも貴方と一緒に暮らしてるんですよ!?」

「それとこれとは話が別だよ。君は今、『同居者の折原臨也』じゃなく、『情報屋の折原臨也』に話し掛けてるんだから。情報屋としての俺は、依頼人である君から何かしらの報酬を得るべきだ」

「そんな……」


折原さんの言っている事は正論だ。
しかし、私には殆ど財産がない。
でも。
でも、どうしても知りたい。


「……私が出来る事は何でもします。だから……お願いします。教えて下さい」


気が付けば、私は彼にそう懇願していた。

折原さんは少し気難しい顔をしていたが、


「……本当に、何でもしてくれるんだね?」


と私に聞いた。
私が頷くと、折原さんはまた溜息をついて、


「俺の話を聞いてしまったら、こっち側からもう戻れなくなるかもしれないよ。それでもいいの?」


と念を押すように尋ねた。

私が「貴方と関わってしまった時点で私の日常は終わりを告げてしまったんですから」と言うと、折原さんは少しだけ苦笑して、私に全てを話してくれた。


♂♀


帝人君が取引していた女の人は、私が封筒に名前を書いた「矢霧波江さん」だった。
波江さんは、弟の矢霧誠二君に歪んだ愛情を注いでいた。
でも、誠二君が愛していたのはセルティさんの首だったのだ。
セルティさんは、アイルランドに生息する妖精「デュラハン」なのだそうだ。
デュラハンは、切り落とした己の首を脇に抱え、俗にコシュタ・バワーと呼ばれる首無し馬に牽かれた二輪車の馬車に乗り、死期が迫る者の家へと訪れる。
うっかり戸口を開けようものならば、タライに満たされた血液を浴びせかけられるーそんな不吉の使者の代表として、バンシーと共に欧州の神話の中で語り継がれて来たらしい。
セルティさんは、20年前に自分の頭部を山中でなくしてしまった。
彼女は微かな気配を辿り、日本にやって来た。
そして、今でも自分の首を探し続けている。
副業として、運び屋を営みながらー

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あきゅろす。
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