Confusion!!(修正前)
6.
「止めて下さい!誠二さんは、誠二さんは少し厳しくて、乱暴で、人と違うところがあるけど、私を助けてくれたんです!
私の、私と杏里を助けてくれて、でも、それで、この人はもう好きな人がいるんですッ、だから、だから殺しちゃ……だめ……で……」
彼女の声は震え出し、涙を流しながら「誠二君」と言うらしいメスを持っている彼に向かって崩れ落ちた。
「張間……美香さん?」
突如、帝人君が呟くように問う。
その質問に、首に傷がついてる女の子はガクガクと震えながら目を逸らした。
「そうなんでしょう?あなたは、矢霧君に殺された筈のー張間美香さんなんでしょう?」
「嘘だ」
その言葉を口にしたのは誠二君だった。
「なあ、嘘だろ?」
「……ごめんなさいッ!ごめんなさい、私ッ……ごめんなさい……
私……まだ死んでなかったんです!
一命は取り留めたんですけどッ……
誠二さんのお姉さんが……誠二さんに好きになって欲しいかって……ッ!私、誠二さんに殺されかけたけど、それでも誠二さんが好きで……!
そしたら、そしたら、お医者さんが来てッ……少しだけ整形と化粧をすれば……あの首と……誠二さんの愛してる首とそっくりになるって!」
張間さんが話を続ける。
「でも……そしたら、お医者さんは『君の名前はセルティだ。それが首の名前だからね』って……
だから私は誠二さんの為にセルティになろうとして……でも、波江さんはそれじゃ手ぬるいって……私じゃすぐにばれるから……手術か薬で私の情動か記憶を消し去るつて……!でも、私……誠二さんが好きだって事は忘れたくなかったから……今の思いをどうしても伝えたかったから!
だから私……研究所を逃げ出してッ!」
張間さんのこの言葉を聞いた後、セルティさんはもう張間さんにも誠二君にも興味が無くなった様で、帝人君に一礼だけしてバイクに飛び乗った。
そしてー夜の闇の中で、バイクのエンジン音が大きく嘶いた。
それはこの夜で最も激しい叫びでありーまるで、今宵の宴の終焉を告げているかのようであった。
「嘘……だ。そんな……じゃあ、俺は……俺は……」
放心している誠二君にトドメを刺すべく、悪人の影が忍び寄る。
「ま、君は本物と偽者の区別すらつけられなかったわけでー
ぶっちゃけた話をしてしまえば、あんたの『首』に対する愛はその程度って事だね。ご苦労さん」
「折原さんッ、そこまで言わなくても……!」
「どうして?だって事実だろう?」
「それは……否定しませんけど……」
折原さんの放った言葉に、誠二君の心は完全に砕かれー彼はその場に膝から崩れ落ちた。
「誠二さん!」
それを見て駆け寄る張間さん。
そして、少し遅れてそんな2人の元へ近づく少年ー帝人君。
それから、『ダラーズ』の創始者は、少し照れた様に口を開いた。
「ええと……君は偽者を見破れなかったけれど、彼女を命をかけて庇った事は、凄いと思う」
フォローするように告げると、帝人君は張間さんに向けても言葉を紡ぎだした。
「僕は、張間さんの話を聞いて誤解してましたー
確かに彼女は性格に問題があるけれど、決してストーカーじゃないです」
それに続く言葉は、まるで独り言のように。
「うん……結局は同じぐらい迷惑なんだろうけど。
ストーカーの行動原理は、結局は所有欲だと思うよ。でもー彼女は、矢霧君の為に命を張った。それは自分の身勝手な欲だけじゃできない事なんじゃないかな?
まあ、殺されかけた相手をまだ好きってのは凄いなあと思うよ。……色々な意味で」
そしてー少しだけ躊躇ってから、彼はこう言った。
「張間さんはー矢霧君と、似てるんだと思う」
うん。
そうだね。
私もそう思うよ、帝人君。
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