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Confusion!!(修正前)
5.
「帝人君っ!」


私は反射的にそう口に出していた。

ー当たるっ……!

私はそう思って目を瞑っていたけれど、鈍い音は聞こえない。
恐る恐る目を開けると、セルティさんが身に纏っている黒い何かが、男の子の体を打ち据えていた。
しかし男の子はー手首を強く傷めたにも関わらず、メスを取り落とす様子がない。
それどころか、そのままの体勢で、なおも帝人君に切りかかろうとする。


「俺の愛は、この程度じゃ砕けない」


そしてナイフを強く握り締めたまま、そのまま横に大きくなぎ払う。
それを見て、セルティさんが慌てて第二撃を打ち込むけれどー


「きかない」

「おい、こいつ薬か何かキメてんのか?」


門田さんが微妙な表情になってメスを持っている男の子の方を見るけれど、彼の表情は強い眼差しのままで、苦痛には微塵も動揺していない。


「きかないっ!痛みはあるがー忘れる!俺と、セルティの、彼女の生活に痛みは必要ない!だから、今この場で受ける痛みに痛みを感じない!」

「無茶苦茶だ!」


帝人君が叫んだ。

その間、私は混乱していた。
「セルティ」とは、伝説の首無ライダーさんの事ではなかったのだろうか。
それなのに何故、あの首に傷がついてる女の子まで「セルティ」と呼ばれているのだろう。
そして、メスを持っている男の子。彼は一体何者なのだろうか。 名前は勿論知らないのだがー私には、彼の歪んだ愛情が理解出来なかった。

人は、己の愛を貫く為ならば、何でも出来てしまうのだろうか。
ほんの少し……
ほんの少しだけ……
そんなに彼に愛されている、首に傷がある少女が羨ましいと思ってしまった。

だって私はーそんなに深い愛情を注いで貰った事はなかったから。


その時ー首無ライダーの方の「セルティ」さんが、彼女が纏っている黒い物体(?)で作った鎌を振りかぶった。
その様子を見て、私達は一回り大きな円を描く様にして後ずさる。
何時の間にか、セルティさんの両峰の鎌の先端が、研ぎ澄まされたように鋭くなっていた。
そして、その鎌が振り下ろされるとー


『やめてぇぇぇええええッ!』


その絶叫に、周囲の人間の動きが止まる。

ただ二人、メスの男の子と『彼女』を除いて。


首無ライダーの「セルティ」さんが斬りつけた、メスを持っている男の子を必死で庇ったのはー

『首』の娘、自称「セルティ」さんだった。

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