Confusion!!(修正前) 5. 気が付くと、60階通りは着信音の荒波で溢れていた。 そして、着信音が収まる中、私は「私達の敵」を静かに見つめた。 数十、下手をすれば数百の人間がー先程帝人君と話していた女性達の方を見つめ続ける。 まるで、彼女達だけが周囲の空間から切り取られ、戯曲の舞台の上に押し上げられてしまったかのようなー 「何……これ……? 何なのよ……何なのよこいつらぁぁあッ!」 見つめられている女性が絶叫を上げる。 それでも、視線は留まる事を知らずー私達は彼らを見つめ続けた。 ーそれにしても、凄い。 これはーここにいる人数はー普通のカラーギャング等の集まる人数を遙かに超えているのだ。 それは、一見して、何かの集会には見えなかった。 それぞれの人間がそれぞれの服装で、何かの陣形を組んでいるわけでもなくーただ、自分達の思い思いの場所に立ち、あるいは雰囲気の似た仲間同士で組んでいるだけだ。 それは、あるいはサラリーマンでありー あるいは制服姿の女子高生でありー あるいはこれと言った特徴のない大学生でありー あるいは外国人でありー あるいは典型的なカラーギャングといった者達でありー あるいは主婦でありー あるいはー あるいはー あるいはー そういった集団が集まっているだけだ。 その時ービルの屋上から、馬のような嘶きが聞こえた。 ー何事? 私達は上を見上げた。 するとービルの屋上から、その壁面を垂直に何かが落下してきた。 そこに現れたのはー 「セルティ…さん…」 セルティさんは地上に飛び跳ねると、「敵」である女性達を挟んで、私達の反対側に着地した。 そしてー 人の眼前であるにも拘らず、彼女はなんのためらいも無く背中から何かを引き抜き、漆黒の巨大な鎌を作り上げた。 恐怖に戦(おのの)いた敵の女性の部下と思しき人がセルティさんの後ろから迫り、彼女の首筋に特殊警棒を叩き込んだ。 (セルティさん!) 私は思わず息を飲んだ。 セルティさんの首からヘルメットが弾け飛び、何も無い空間が露わになる。 ーああ、そうだ。彼女には首が無いんだったっけ。 私は胸を撫で下ろした。 周囲からは、どよめきと悲鳴が上がり、にわかに集団がパニックに包まれかけた。 でもー今のセルティさんは……気後れも躊躇いもなさそうだった。 そして、私達は聞いた。 聞こえる筈の無いセルティさんの叫び声を。 その声は、大通りを戦場の色に染め上げた。 [*前へ] [戻る] |