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Confusion!!(修正前)
7.
……あれ?
そう言えば、折原さんは?

キョロキョロ見回してみたけれど、折原さんはいつの間にか何処かへ行ってしまったようだった。


「チッ。あのノミ蟲野郎、次に会った時はぜってぇブッ殺す」


平和島さんは悪態をついていたが、突然私の方へ向き直り、「おい」と言った。


「? 私……ですか?」

「あぁ。
アンタ……臨也とはどういう関係なんだ?」


そう尋ねる平和島さんの低い声に、私は唯ならぬ雰囲気を感じ取る。
そして、恐る恐ると言った様子で答えを返した。


「えっと……
私は、ただの居候……ですかね。
でも私は折原さんの事は嫌いです」


私の言葉に、平和島さんは少し目を丸くしたが、次の瞬間には、真剣な表情で


「アイツとはもう関わるな」


と言った。

私は、今目の前にいる平和島さんが、さっきまで喧嘩をしていた平和島さんと同じ人だとは到底思えなくて、思わずクスリと笑ってしまった。


「あぁ?」


私の反応を見た平和島さんのこめかみに血管が浮いたが、私はそれに構う事なく彼にこう告げた。


「正直、最初に貴方を見た時は、折原さんの言う通り、『化物だ』と思いました」


私の言葉を聞いた平和島さんは哀しそうな顔つきで拳を強く握り締めていたが、私はそれを気にせずに続ける。


「だけど……貴方は人間ですよ。
それも、凄く優しい。
折原さんと比べたら、寧ろ折原さんが化物です」


そう言い終わった途端ー平和島さんは面食らったかのような顔になった。
そして彼は、煙草を吹かしながら、すこし照れたようにふっと笑った。


「お前……変わってるな。
名前、何て言うんだ?」

「珠音です。愛峰珠音」

「珠音、か……」


珠音、珠音と彼は何回も私の名前を反芻する。
その後少ししてから「よし、覚えた」と彼は小さく呟き、再び私の方を見てから話を始めた。


「悪りぃ。名前覚えるの、得意じゃなくてよ……」

「いえ。気にしないで下さい」

「おう。ありがとな。
ンな事よりお前……さっきの怪我、大丈夫なのか?」

「え?まぁ、少し痛みますけど……」


やっぱり、平和島さんは、何処かの情報屋さんと違って優しい。
人の心配をちゃんとしてくれるし。


「そうか……
じゃあ、俺の知り合いの医者の所に行くか。
元凶がノミ蟲だとは言え、怪我させちまったのは俺だからよ」


……いや、怪我をさせたのも折原さんだけどね。
私はそう思ったが、何も言わなかった。

平和島さんは私の頭をクシャクシャっと撫でて、「悪かった」と言った。


私は、平和島さんのそんな仕草に、少しだけ胸がきゅーんとした。


♂♀


そんな2人の様子を、隠れて見ている男がいた。


「へぇ……君ってそんな顔も出来るんだ……」

「ねぇ、珠音?」


彼の呟きは、池袋の喧騒の中に消えていった。

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あきゅろす。
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