Confusion!!(修正前)
4.
彼女達の姿が完全に消えたのを確認するとー折原さんは笑い声と動きをピタリと止め、何事もなかったかのように帝人君の方に振り向いた。
私は、今までは離れた所から見ていたけれど、もう大丈夫だろうと思い、折原さんと帝人君の方に近づいた。
眼鏡の少女は、ただ怯えた目をして折原さんと帝人君の方を見つめている。
因みに私の事は眼中にないようだ。
「飽きちゃった。携帯を踏み潰す趣味はもう止めよう」
折原さんはそれだけ言うと、帝人君に対して優しい微笑みを浮かべてみせる。
「偉いねえ、苛められてる子を助けようとするなんて、現代っ子にはなかなかできない真似だ」
「え……」
それを聞いて、眼鏡の女の子が驚いたように帝人君を見るものの……ちょっと申し訳なさそうな帝人君。
まぁ、実際に助けたのは、どちらかというと折原さんだもんね。
……やり方はかなり歪んでたけど。
そんな帝人君の様子にはまるで構わず、折原さんはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「竜ヶ峰帝人君、俺が会ったのは偶然じゃあないんだ。君を探してたんだよ」
「え?」
帝人君がそう言った瞬間ー路地の奥から、コンビニエンスストアにあるゴミ箱が飛んできた。
折原さんはその素晴らしすぎる反射神経で私の右手を咄嗟に掴んだ。
「は!?えっ!?ちょっと待ー」
私がそう言い終わらない内に、折原さんの身体にゴミ箱が直撃し、私は折原さんに引っ張られて一緒に倒れた。
余りの衝撃に暫くの間動く事さえままならなかったけれど、そんな身体に鞭打って、私はゆっくりと重い腰を上げる。
痛ッ。
私は僅かに顔を顰(しか)めた。
擦り傷だらけだし痣は出来てるし……
特に折原さんに掴まれてた右手からの出血が酷い。
後で病院に連れてって貰おう……
ところで、折原さんは?
私はそう思って彼の方を見た。
黒ずくめのその男はよろよろと立ち上がりながら、ゴミ箱が飛んできた方向に目を向ける。
「し、シズちゃん」
「いーざーやーくーん」
わざと間延びさせた声に、帝人君も眼鏡の少女も私もそっちを見る。
そこに立っていたのはーサングラスをかけた若い男の人の姿だった。
バーテンダーの着るような服に蝶ネクタイを結びつけている。
かなり背が高い。でも、一見すると細身のその体型からは、とてもこの人がコンビニのゴミ箱を投げたとは思えなかった。
この人が、『シズちゃん』……?
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