Confusion!!(修正前)
2.
その時だった。
キイィッと言う音と共に、見覚えのあるワゴン車が東急ハンズの前に停車する。
「か、狩沢さん!」
「何で追われてんの!?まあいいから乗って乗って!」
ドアから顔を出した狩沢さんがそう叫び、私達はバンに乗り込もうとした。
だが、私は数歩走った所で思い切り足首を捻ってしまう。
「ッ!」
ああ、何でよりによってこんな日に踵の高いヒールなんか履いてきちゃったんだろう。
私は痛みに一瞬顔を歪めるが、足を引きずるようにして間一髪バンに乗り込んだ。
「た、たたた、助かりました!」
「いいっていいって。待ち合わせにちょっと遅れちゃって御免ねー」
帝人君のほっとしたような言葉に、狩沢さんはカラカラと笑ってみせる。
「あれ……君達、どうしてここに?」
黒沼君の言葉を聞き後ろを振り向くと、そこには先日会ったばかりの双子ちゃんが顔を覗かせていた。
「クルリちゃん、マイルちゃん!?」
「やっほー!珠音さん!」
「活(元気)……?」
「う、うん。まあ……」
私がそう答えた次の瞬間、車外から派手なクラクションが聞こえ、バンの側面に鈍い音が走る。
「くそ。もう見つかったか」
苛立たしげに渡草さんがそう言った。
この様子だと、ワゴン組とクルリちゃん達も誰かに追われていたのだろうか。
外からは変な叫び声(恐らくチンピラのものだろう)が聞こえるが、結局現状が全く把握できない事に変わりはない。
「ど、どうなってるんですか?これ、どうなってるんですか?」
帝人君が焦ったように尋ねる。
彼の問いに答えたのは、遊馬崎さんだった。
「それがっすねえ。残念なお知らせがあるんすけど、君達は不幸から逃れて新たな不幸に巻き込まれてしまったんす。残念無念。いまや俺らの周りは超能力を研究する某学園都市並のトラブル空間になってるっす。誰かの右手がこの嫌な幻想をぶち壊すのを御期待下さい……の巻!」
「何言ってるんですか!?」
「今のうちに聞いておくっすけど、知り合いにカエルに似た医者はいるっすか?それなら生存率が十割ほど跳ね上がるんすけどねえ。あ、カエル繋がりで白山名君でもいいっすよ」
流石遊馬崎さん。意味がよく解らない。
帝人君も会話を諦めたのか、門田さんに視線を向けた。
バックミラー越しに帝人君を見つめた門田さんは、少しばかり申し訳なさそうに目を逸らし…一言。
「ちょっと色々あってな……すまん」
「え……えええええッ!?」
誰も求めていなかったスリル満点で始まった池袋観光ツアー。
一歩先が全く予想できない、もしくは予想したくもない状況の中ー
私達は、前方から迫る首無し馬の嘶きを聞いた。
「……黒バイ!」
「セルティさん!?」
「……セルティさん!」
「あ、セルっち」
「セルティさんじゃねーすか」
「なんすか、何事っすか竜ヶ峰先輩!」
「ああッ!黒バイクだ!黒バイクだよクル姉!」
「驚(まさか)……」
「セルティ、さん……?」
首無しライダー…もといセルティさんは、驚いた様子ではあったけれどー速度を調節して完全にバンと併走を始めた。
そして、器用に片手で運転しながらPDAに文字を打ち込む。
『ごめん、暴走族に追われてる!逃げて!』
「……」
ごめん、セルティさん。
私は心の中で彼女に土下座する。
門田さんも、苦笑を浮かべながらセルティさんに一言告げた。
「悪いけどよお……謝るのはこっちかもしれねえぜ、黒バイクさんよぉ」
『?』
「俺らも、追われてんだ」
気が付けば、暴走集団は、五十台を超える大集団となって、台風のような勢いでこちらに追い迫ってきていた。
『絶望的か?』
「なあに、希望は一個ある」
門田さんはニヤリと笑いながら口を開いた。
「こいつらは全員よそもんで、俺らは一応ダラーズっつうチームだろ?」
「縄張り荒らされてる側として……遠慮なく殴り返せるってこった」
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